1、それは、一風変わった登校最中から始まった。
ある日の朝。
奏恵は俊也がいないので、ウズウズしていた。
この日は珍しく俊也は風邪で学校を休んだのだ。
「アイツ、大丈夫かな? 死んでないかな?」
「奏恵さん、俊也さんが休むことって、そんなに珍しいのですか?」
美帆は奏恵に聞く。
「珍しい……ていうか、俊也は今までの人生で一度しか風邪をひいたことがないんだよ!」
と思わず叫んで、またウズウズし始めた。
―――
校門に着く少し前。
「あの……、下村奏恵さんですか?」
知らない男性に急に話し掛けられて少し驚く奏恵。
「そうですけど……」と答えると、
「あの……、お……じゃなくて、私、こういうものなのですが……」
と不意に言葉が途切れ、ポケットから何かを探し始めた。
何分か経ってやっと何かを見つけた男性は、奏恵にそれを見せびらかした。
「けっ……、警察!?」
「はい、そうです。お話があるので、よろしいでしょうか? 川部俊也くんは……、今はいないようですね。あっ、安心してください。学校には連絡したので」
そう言われ、奏恵は、「先に行ってて。……大丈夫。すぐ戻るから」と美帆に一言笑顔で言って、若い刑事と共に行ってしまった。
―――
刑務所。
「いやー、こんな物騒なところで、悪いね」
年配の刑事がハッハと頭をかきながら笑い、2人は個室に入った。
「……それで? 話と言うのは何ですか?」
「君と川部俊也くんの生まれた頃の真実について……だよ。覚悟を決めて聞きなさい」
―――
帰るとき。
雨が降っていた。
しかし、彼女は持っていた傘も刺さずに、泣いていた。
この小説では初めてのストーリー物です。
前にも書きましたが、5話に1度に投稿します。
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