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流れて行った星屑の1つ。

 ある日の朝。


「そういえば、『あの人の命日』って、今日だっけ?」


 学校に向かいながら、俊也は奏恵に聞く。


「そうよ」


 奏恵は前を見ながら答える。


「じゃあ、今日は『あそこ』に寄って帰るぞー」


「「はーい」」


 奏恵と美帆は返事をする。


「……とは言うものの、全然話が見えて来ないんですけど……」


 と美帆は言い、加えて、


「そもそも、『あの人の命日』って、『あの人』って誰ですか? それに、『あそこ』ってどこですか?」


 美帆が2人に聞くと、


「……そっか。美帆は知らないんだっけ」


 奏恵は腕を組んで関心した。


「じゃあ、話すよ」


 ―――――


 1年前。


 ―――


 2人がLight killersをサイトに掲載し始めた頃、ある一通の依頼書が(Web上で)届いた。


 ―――


 Light killers様


 私はある株式会社の社長です。

 ある日、とある1人の社員が自殺しました。

 その社員が自殺してしまった原因は私にあると思います。

 私は、その責任を負い、死ぬことを決意しました。


 殺してください。


 ○○県□□市50代男性


 ―――


 これを読んで、「とても責任を感じているんだね」と奏恵は言った。


「『後追い自殺』ってヤツか……」


 俊也はポツリと呟き、


(俺が1番嫌いな死に方だ)


 そう彼は思った。


 そして、メールで日時と場所を送った。


 ―――


 翌日。


 この日は、休日だった。


 しかし、この日には、予定があった。


 家族3人で(たまたまチケットが当たった)クラシックコンサートを聞きに行く予定だ。


 ―――


 3人は席につき、開演を待った。


 待っている間、俊也は妙に固まった50代くらいの男性を見かけた。


(あの人か……?)


 と思い、監視し始めた。


 ―――


 開演。


 曲はモーツァルトの「ホルン協奏曲第1番」。


 そのホルンの柔らかな音色が響き渡る。


 ―――


 第1楽章終了後、1人だけ号泣しながら拍手を送る人がいた。


 先ほどの男性だ。


 その他の人々はその男性を嘲笑った。(もちろん、俊也は笑わなかった)


 男性は空気を読んだのか、そのまま走って退場してしまった。


 その光景を見た俊也は、その男性の後を追いかけ、退場した。


 ―――


 第2楽章演奏中。


 俊也は男性を探した。


 ロビーを探し、2階へ向かった。


(……いた……)


 彼が男性を見つけたのは、2階のソファーである。


 男性はコップの中の飲み物を口に運んだ。


「ここは飲食禁止ですよ」


 俊也は男性に話し掛けた。


「あぁ、すまないねぇ」


 男性はコップを捨てた。


 もちろん、嘘である。


「ところで、何で君はここにいるんだ? わざわざ追い掛けなくてもよかったのに……」


「…………」


「俺をバカにしにきたのか?」


「……いや。心配だったんです。……あなたが」


「…………? 俺が……?」


「はい」


 男性は戸惑った表情で俊也をみる。


 しばらくして、男性はニッコリとした笑顔で、「君は優しいな」と言い、続けて、「俺の話を聞いてくれないか?」と目線は俊也の足元にし、少々苦笑気味に言った。


 ―――


 男性は話した。


 自分の事情を全て、今日会ったばかりの若者(俊也)に話した。


 若者はそれを真剣な表情で聞いていた。


 ―――


 男性の話は終わり、「そんなことがあったんですか……」と俊也は関心し、続けて、「でも、俺はそんなにあなた自身を責めなくてもいいと思いますよ」


「どうしてだい?」


「……さぁ。でも、人生って、気楽に生きれば意外と上手くいくものですよ」


 俊也はニッコリ笑うと、


「若い君には言われたくない言葉だね」


 言い返され、お互いに笑いあった。


 その時、ちょうどコンサートが終わり、2人は人ごみに紛れて消えた。


 ―――


 その夜。


 指定場所で。


 1人の男が夜空を見上げていた。


 彼らはLight killersとなって、そこに現れた。


 その男は、気配を感じたのか、そのままの体勢でこう言った。


「私を……殺してください……」


 そう言われると、


「殺す前に1つ問う。……あんたのやるべきことは、もう無いのか?」


 振り向くと、後ろには2人組がいた。


 ……Light killersだ。


「……有る。私が罪を償うことだ」


 そう男性は言うと、男(俊也)は怒り狂ったのか、「そうじゃない!! あんたが生きてやるべきことだ!!」と大声で叫んだ。


 続けて、


「あんたは残された人々の気持ちが分かるのか!? 家族とか社員とか……、沢山!! それに……」


 一旦、男は口籠もったが、その口は開き、


「それに、自殺して亡くなった社員のためにも、その社員の分まで生きるっていうのもあるだろ。……それが、残された人々の義務ってモンだろ」


 男は小声で言うと、もう1人の女(奏恵)が、


「ここにナイフがある。死にたいなら、自分で刺せ」


 とだけ言い、女はナイフの取手を男性に向けながら、男性の決断を待つ。


「俺は…………ね……なっっっ……!」


 彼は号泣した。


「あと、もう1つ言っておく。人は1人1人に価値がある。その価値を、簡単に踏み躙ろうとするな」


 男はそれだけいい、2人組は立ち去った。


 ―――――


 現在。


 学校の校舎内で。


「へぇ〜。そんなことがあったんですかぁ〜」


 美帆は関心し、そして、3人は学校の昇降口で別れた。


 ―――


 放課後。


 3人は『あそこ』に向かった。


「そう言えば、『あそこ』って、どこですか?」


 美帆は聞く。


「朝の話で、察しできなかった? ……お墓よ。自殺された社員の」


 奏恵が応える。


「……あっ、そっか。そうですよね。……アハハ……。何で察しできなかったんだろう」


 美帆は低くなった声で悔やむ。


 そうして歩いていると、「着くぞ」という俊也の声が聞こえたので、2人は真剣な表情になった。


 ―――


 お墓に着き、奏恵と美帆は花を添えると、「早いですね」という男性の声が聞こえた。


 俊也がその声に反応して振り向くと、その男性がいたので、「あぁ、どうも」と挨拶をした。


「誰ですか?」と美帆は小声で奏恵に話し掛けると、「朝の話の依頼人」と、コソコソと答える奏惠であった。


 ―――


「すまないねぇ、去年から」


「いえいえ、大丈夫ですよ。こちらも勝手に来ているので」


「……そう言えば、そちらの女の子は……、友達かい?」


 美帆のことだろう。


「あっ、紹介します。高野美帆です」


 俊也は言い、美帆は頭を下げた。


「君は女子に好かれやすいのかな?」


 男性に聞かれると、俊也は顔を赤らめて、


「そっ……、そんなわけないじゃないですか!!」


 ―――


 長いので、以下略。


 ―――


 という会話を済ませ、4人は笑い合い、そして、別れた。


 ―――


「そう言えば、あの人の事情、どういう事情か知らないんだけど、もうそろそろ、教えてくれない?」


 奏恵は俊也に話し掛ける。


「プライバシーの侵害だ。教える訳ねーだろ」


 彼はそう吐き捨て、素っ気無く質問を流す俊也だった。


桜です。


えー、次話から5話に1度、2人の過去について迫って行きたいと思います。


乞うご期待ください!!




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