『呪われた姫君と光の騎士』
「5.姫君と王太子」で出てきたお伽話になります。合わせてお読み下さると、5話の兄妹の会話が理解しやすいと思います。
『昔々ある小さな国にお姫様が一人いました。
お姫様は恋をしていました。
お姫様が恋をしていたのは、お姫様の騎士でした。
その騎士もお姫様のことが好きでした。
しかし、お姫様の父である王様は二人の結婚を認めませんでした。
なぜなら、その騎士は他国から流れてきた人で、身分が低かったからです。
お姫様は大好きな騎士と結婚できないことを嘆いて、毎晩部屋のテラスで月明かりの下泣いていました。
その頃騎士は、王様の命令で他国へ行っていました。
そんなある満月の日。
お姫様のもとにしゃべる魔族が現れて言いました。
「お姫様、あなたは私の花嫁となるのです。半月後の新月の夜にお迎えにあがります」
そう言って、魔族は消えました。
それは呪いとなり、お姫様を魔族に縛り付けました。
呪いをかけた魔族を倒さなければ、お姫様は魔族の花嫁になってしまいます。
それを聞いた王様はさぁ大変。
娘を魔族にやるものか、と慌てて国中に魔族を倒すようにお触れを出しました。
国中の腕に覚えのある者がしゃべる魔族討伐に向かいます。
しかし、誰ひとりしゃべる魔族を倒すことができません。
魔族の言った新月まであと3日となった時、他国へ行っていたお姫様の騎士が帰ってきました。
騎士は状況を聞いて、自分がいない間になんてことが起こっていたのか、と驚きました。
お姫様はこのままでは呪いの通り、魔族の花嫁になってしまいます。
そこで騎士は王様に、自分が魔族を倒したら、お姫様と結婚させてほしい、と言いました。
王様も魔族に娘をやるくらいなら、と承諾しました。
そして、迎えた新月の晩。
魔族がお姫様の前に現れました。
「さぁお姫様。私の花嫁になるのです」
「そうはさせない!お姫様は私の花嫁となるんだ!!」
魔族に剣を突き付けて、騎士は高らかに言いました。
魔族は笑います。
「今までの人はだれも私を倒すことができませんでした。あなたに何ができるのですか?」
「魔族を倒すことができる」
騎士は不敵に笑って返します。
「やれるものなら!」魔族が叫んで、騎士に襲い掛かります。
騎士は剣を構えると、魔族に向かって言葉と共に振り下ろしました。
「お前は滅する!」
騎士の剣と言葉が魔族を切り裂き、魔族は砂となって消えました。
何が起こったかわからなかったお姫様も王様も騎士を見つめます。
二人に騎士は微笑みます。
新月の下でも光る金の髪を揺らしながら。
「私は光の神の血を持つ者です。私の言葉は魔族にとっては弱点の光。だから倒すことができたのです」
王様達はぽかんと騎士の話を聞いた後、慌ててひざまずきました。
騎士は流浪の者ではなく、中心の国の王様だったのです。
王様は騎士に感謝し、約束通りお姫様を花嫁にと送り出しました。
その後二人は幸せに暮らしました。』




