3.お茶会
そのあとに、優しく笑みを浮かべながら、ティファと呼んでくれるのが何よりも愛しい。
「今回はどんな魔族を倒したの?」
ティファナは手ずからお茶を注いでやりながら、ディヴィディアに尋ねる。
王女の同席に着いたディヴィディアは、任務外であることもあり、先程とは打って変わって、随分と寛いだ格好をしていた。
「ありがとう。
今回は小鬼だった。あいつら一匹ずつは弱いくせに数だけは多いから、厄介なんだよ」
ディヴィディアは、茶の礼を述べてから、ティファナの質問に答える。
格好と同じく主君に対するには随分と砕けた態度だが、二人にとってはこれが普通だった。
先程のように外で、どこに人の目があるかわからないような場所では、きちんと主従の態度を弁える――といっても周りからすれば十分主従を越えた親しさを持っている――が、今はティファナの自室。
侍女は気にくわないらしいが、もう長年のことで注意するのにも飽きてしまったらしい。
「ホント魔族ってイヤねぇ。どうして人間を襲うのかしら」
「やつらの食料は人間だからな」
ディヴィディアはティファナの子供っぽい言い方に諭すように告げる。
しかし、ティファナはその態度が気に食わなかったのか、唇を突き出して拗ねた表情をする。
「そんなこと知ってるわ。でも魔族が出る度ディヴィが駆り出されるじゃない。一緒にいる時間が減っちゃうわ」
ディヴィディアは本来、ティファナ直属の近衛隊隊長である。
しかし、魔族を倒すことができる貴重な存在でもあるため、警備隊に手の負えない魔族が出没する度に駆り出されることが多いのだ。
今回は単体であれば、少し武器を持ったことがある人間なら倒せる相手だった。
だが小鬼と呼ばれる額に角を持つ魔族は通常、10体程度で群れて行動する。
その通常であれば、警備隊で太刀打ち可能なのだが、今回はその倍以上の数で群れて、街を襲った為、警備隊では手に負えず、援助の要請がきたのだった。
「悪いな」
少し哀しそうに笑むディヴィディアにティファナは慌てて首を横に振る。
それに合わせてティファナの金糸のような髪が揺れる。
「ディヴィのせいじゃないわ!ごめんなさい。わがままを言って」
「いや、本当は俺もティファの傍にずっといたいんだが」
「本当!?それだけで嬉しいわ。ずっと……一生傍にいてね、ディヴィディア」
ティファナが碧の瞳を輝かせながら言う言葉にディヴィディアは頷いた。




