1.世界は美しさに溢れてる
光と闇の世界。
大陸のほぼ中央に位置するラオストール王国は、大陸の中でも歴史の長い由緒ある大国だ。
遥か昔から、人を襲い、喰らう魔族の脅威にさらされてきた国々は、ラオストール王国と四方に位置する四大国を中心によく纏まってきた。
ラオストール王国の王族は、主神ラオストアの子孫と言われ、大陸の四方にある四大国はその分家のような位置付けだった。
現在では、同等の関係を築き、魔族に対抗する手段の共同開発等に取り組んでいる。
彼等を特徴づけるのは、その容姿だ。
ラオストール王国と四大国の王族は、色味の違いはあれど金髪に碧眼。
光の神とも呼ばれる主神ラオストアと同じ色彩を持つとされている。
どれほど他の血が入ろうとも、その色彩が崩れることはなく、ラオストアの神秘とも言われていた。
それに対し、あまり人にいい感情を持たれないのが、闇の神オルディアだ。
創世二神の片割れたる彼女――オルディア神だが、この御柱が司るのは夜と闇。
夜の加護を願う時は、オルディア神に祈る為、敬遠されることはない。
しかし、魔族が闇に属すると考えられている為、あまり好まれてはいない。
人によっては、魔族の存在は、オルディア神による試練だと言う者もいる。
真相は定かではないが、闇を駆け、人には無い魔の力を持つ魔族とオルディア神を繋げる者は少なくはない。
魔族の姿は、一様ではない。
獣に近い姿や、形の定まらないもの、山のように巨大なものなど、様々だ。
しかし、共通するのは、人を喰らう、ということ。
人の血肉を求めて、里を襲う魔族は多くはないが、少なくも無い。
国の中でも魔族が出没しやすい場所に、対魔族の警備隊が配置される程度だ。
それでも魔族に対抗するには数が少ないと常々言われる。
しかし、魔族は強靭な肉体と人の持たぬ魔力を持つ。
そのため、人の身で対抗できる人間は限られているのであった。
そして、魔族にはその長たる魔王がいる。
歴史上、その姿を見た者は少なく、伝承で残されていることも限りなく無いに等しい。
ただ、見た者は一様に同じことを言う。
闇の具現、と。
一説にはオルディア神こそ魔王だとする者もいるほどに、闇の気配が濃いそうだ。
ラオストール王国と四大国はそんな魔族に対抗できる人材の育成に余念がない。
そのため、多くの人は国を信頼し、多くの安心と少しの不安を持ちながら、日々を暮らす。
魔族の脅威にさらされつつ、一見穏やかな世界は今日も朝と夜を繰り返す。
世界は止まることなく回るのだ。




