表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/23

アイテムの持ち込み、鑑定騒動

教皇アイネア(水の神アイネア)。


城塞都市ルーケルセリュアにおける最高権力者。その正体は、天界八柱神の一人、水の神アイネアが、彼女に仕える巫女を介して地界に体現している姿である。約一万数千年前に行われた第五次天魔大戦の折、天界の側も、魔界の側も、地界に対して直接的に影響を与えるすべを数多く失い、その一つとして直接、神として君臨する術を失ったこともあげられた。故にアイネアの場合、献身的に仕える巫女の中から有能なものを選び、地界に影響を与える憑代よりしろとしている。アイネアは「水」の力を司っており、故に作物を成長させる神としても崇められてきた。ルーケルセリュア大聖堂は、ルーケルセリュアを横切るラクリム川が引き込まれるような形で建てられており、彼女が「水」の力を用いやすいようになっている。なお、人の体を介しての力の行使となるために、以前ほどは強力に事を行えなくなっている。

余談ではあるが、天界八柱神とは、

水、アイネア。

火、ソルガム。

土、ミニトブ。

風、フリスフ。

魔、ルグスラ。

聖、セフレナ。

闇、ログザード。

光、エルザード。

以上である。


フェニエル「ふむ、少しはここの神々について分かるわけだな」


ルミル 「少しだけですけれどね~」


セレイラ 「が、頑張って覚えていきましょう」


フェニエル「だな……。クロスならこういうのはお手のものなんだろうがなぁ……」


ルミル 「まだまだ、設定は増えていきますよ~。ま、まずは本編をどうぞ~」

朝、都市に朝日が差し込もうと白みだした頃。ルミルの店の屋上では、フェニエルが聖剣ラグロウゼスを鞘から抜いて稽古をしていた。先日、ルミルから貰って、その強力な威圧には耐えれたとはいえ、まだ、自在に使いこなしているわけではなかったからである。


「ふん!……。うむ、昨日よりは良くなったか……。最低でも、一般の魔法武器並みには扱えねばな……」


剣を自在に操りつつ、フェニエルが言う。傍で見ているセレイラは、十分すぎるほど、剣を使いこなしているように思うのだが、フェニエルは、納得ができていないのか、様々な型を繰り返していた。


「あ、あの……フェニエル様……」

「ん?どうした、セレイラ」


セレイラは我慢しきれずに、まだ途中のフェニエルに声をかける。フェニエルは動作を止めてセレイラの元へ行く。


「あの……私には、じ……十分すぎるほどに、剣を扱われているように、み……見えるのですが……何が納得できなくて、このように、し……修行をされているのですか?」

「ああ……そうだな。セレイラ、お前は精霊として約何年経ったかな?」

「え?……あ……えっと……約百三十年くらいです」

「だよな。ルミルのお節介もあって、こうやって私と一緒に居る」

「は……はい……」

「でだ。この聖剣は、少なくとも千五百年は経過しているらしいのだ」

「はい」

「セレイラのように、力の強いものには精霊が宿ると言われている。このラグロウゼスは、半端な強さではないことは、手にした私が良くわかっている」

「……あ!」

「そう、気がついたようだな。そこだよ、私はまだ、ラグロウゼスに宿っているはずの精霊に出会っていないのだ。ま、ルミルの事だからなにかがあるのかもしれないのだがね」

「な、なるほど……それで、頑張っておられたのですね」

「ま、それもあるし、どうも、ルミルも、それを期待している節があるようでね……」

「??」

「要するに、私に「何か」をさせたいのだが、その為には、私が更に強い方が良い、ということなのさ」

「はぁ……で、では、私も頑張ります!」


フェニエルの話から、セレイラも決意を固めるように宣言する。フェニエルは微笑んだ。


「ああ……期待しているよ。一緒に頑張ろう!」

「はい!」


こうして再び、朝の修行の風景へと戻っていった。




ルミルの店は、開店時の一時的な賑わいも落ち着いて、客も疎らとなっていた。


「漸く落ち着いてきましたね~」


店の受付をしつつシャネが言った。


「ま、開店時のようなことはなくなったな。後は、突発的なことさえなければいいのだけれどな」


ルフィは思い出すかのように語る。それに和するように、エセラが言葉を重ねた。


「ルミル様の事ですからぁ、又、色々「お節介」をしちゃうんじゃないですかぁ?」

「だよな」

「あらあら」


エセラの言葉に二人は肯定するように答えるのであった。

暫くしてから奥からルミルが出てきた。


「ん~。新しく展示する子は、なにがいいかしらね~」

「あれ?まだ決まっていなかったのか、マスター」

「あ、ルフィちゃん。そ~なのよ~。ゴルワスはちょっと堅物だし……セフィルナは、少々変わり者だし~」

「自分を無視して言えるのは特権だな」

「あら~、フェニエル、修行の方はもういいの~?」

「今日のところはね。ま、少しずつ強くしていくさ」

「うんうん。「何か」がそれまでに起こらないといいわね~」

「不吉な言い方をするな」

「うふふ~♪」


ルミル達がそんな感じで話をしている処に、店に一人の男が入ってきた。


「あ、いらっしゃいませ~。魔法の鍛冶屋ルミル・ミーリアへようこそ~。ご用件があるのであれば伺いますよ~。展示品をご覧になりたいのであればごゆっくりどうぞ~」


シャネがいつも通りの紹介の言葉を述べる。男は、そのままシャネの居るカウンターへ近づいていき、手にしていた布の塊をカウンターの上に置いた。


「申し訳ないが、これの鑑定を頼みたいでござる」


男性は旅人の服装をしていた。その衣服は、この周辺のものではなく、南方エリム地方の民族衣装だった。


「ルミル様~。これ、ちょっと面倒そうですよ~」


物をみていたシャネがルミルを呼びそう言った。ルミルは、カウンターへ向かう。


「ん~……どれどれ~?あ~……ルフィ、他のお客さんは一旦外へお願いして~。エセラ、入り口の看板を準備中にしてくださいね~。シャネ、他のが終わったら「位相転移」をお願いね~」


ルミルは品物を「みて」判断し、三人に指示を出す、三人は返事をして素早く行動し始めた。


「どうしたのだ?」

「さ……さあ?何でしょうか……」


状況が理解できていないフェニエルとセレイラは、その場に立ち尽くしていた。それを見てルミルが声を掛ける。


「あ~。フェニエル、セレイラ、これから鑑定を始めるから、そこの人の護衛をお願いできるかな~?」


ルミルは鑑定を依頼した人物を護るようにフェニエルに頼んだ。


「良くは解らないが、わかった、引き受けよう」

「あ……はい!」


フェニエルとセレイラは急いで男性の元へと向かう。その間に、ルフィ、エセラは仕事を終え、シャネが準備を始めようとしていた。


「皆さん~。いいでしょうか~?「位相転移」を行いますので~、慣れていない方、経験の無い方は、特に注意してくださいね~」


シャネが、そう注意を促す。


「何だ?「位相転移」とは?」


フェニエルが良く解らずに疑問を述べた。その答えは意外なところからもたらされた。


「位相転移とは、空間に対して作用させる高位魔術の一つでござる。同相空間を別次元に展開し、対象者を一時的にその空間内に送り込むのでござる。非常に外部に影響を与えないという特性があり、結界より強固なので強力な魔法研究などで使われることがあるのでござるよ」


そう、客である男性が答えたのである。シャネが驚きつつ言う。


「あらあら、魔術もたしなんでおられるのですか~?正しくその通りなのです。転移時に体調を崩す方も居られるので注意してくださいね~」

「いや、拙者は魔術は全くダメでござる。ただ、学問は好きなので学んでいたのでござるよ」


シャネの身体が少し明るく輝いた。


「位相転移、入ります」


シャネの言葉と共に、今まで見えていた店の風景は消え、周囲には何も見えない空間が現れた。


「ほう……これは凄いな」

「な……何もないです……」


フェニエルとセレイラは周囲を見回しつつ感想を述べた。


「さて~、これから、開封して鑑定するので各自注意してくださいね~。どうやら、この子自体はいい子なんだけれど厄介なものを引っ付けているみたいなので~」


ルミルの声に、全員に緊張が走る。ルミルは全員を見回してから、布にくるまれたものを布から解き始めた。


「刀……?」


物を見てフェニエルがそう言う。そう、剣とは性質の異なる武器、刀であった。しかし、その刀には、数多くの札のようなものが貼り付けられてあった。ルミルが一枚の札を剥がす。

すると、薄気味悪い声が響き渡り、影のようなものが出てきた。それは、ルミルに近づこうとするが、ルミルに触れる前に溶けるように消えていった。


「あ……あの……今のは……?」


セレイラが尋ねる。それに、珍しくエセラが答えた。


「負の感情を溜め込んだりすることで、招き寄せることのある悪霊の一種ですぅ。精霊と違って己の欲望を満たすことしか考えない、わがままな霊のことですぅ」

「これは沢山ありますね~。一体、一体の相手は面倒ですし~。フェニエル~」

「ん?何だ?」

「そちらに悪霊共を誘導しますから~聖剣ラグロウゼスで無に帰してあげてくださいね~」

「何?!ちょっと……」


フェニエルは抗議しようとしたが、ルミルはお構い無しに札を剥がし始めた。


『おおおおぉぉぉぉ……』


数多くの「声」が響き、悪霊達が出てくる。ルミルの「誘導」により、それらは一直線にフェニエルの方へとやって来た!


「くっ……仕方がない。やってやるさ!」


フェニエルは聖剣ラグロウゼスを鞘から抜く。いつもよりも光輝くそれは力強くフェニエルに力を貸していた。


「さあ、来い!全て帰るがいい!」


フェニエルはそう叫びをあげ襲いかかる悪霊どもに剣を振るう。

暫しの戦いの後、全ての悪霊は無へと帰していた。


「ふぅ……いきなりとはな……」

「あの……お疲れさまです。フェニエル様」


戦闘が終わり肩を落とすフェニエルに、セレイラは労いの言葉を述べた。フェニエルはそれに笑みで返す。


「流石でござるな。街中で聞いた噂通りでござった」


男性が感嘆しつつそう述べた。そして続ける。


「あ、そう言えば、自己紹介がまだでござったな。拙者はエリム地方の一国、暁の国の武士もののふで、あずまつかさと申す。以後、お見知りおきを」


そして良は自らの儀礼に沿った礼をする。


「あらあら、ご丁寧にどうも~。ルミル様、掃除が終わったのでしたら店に戻りますね~」

「あ、お願いシャネちゃん」


シャネはそう言いながら、位相転移を解除し始める。ルミルは丁寧に刀を調べていた。

暫くして、全員は店に戻っていた。

ルミルが暫く調べていた刀から、少しずつ光の霧のようなものが現れ始めた。


「お、漸くお目覚めのようですね~」


わかっているかのようにルミルが述べる。それは形を作っていき、日本人形のような美しい女の子の姿になった。


「ふい~。久々のシャバじゃなぁ。おや?ここはどこかの?」

「ここは、あたしの店なんですよ~。初めまして~、あたしはルミル・ミーリアといいます~。よろしくお願いしますね~」

「おお!そうなのか。儂は宝刀夢斬ほうとうゆめきりに宿る精霊であきらと言うのじゃ。よろしくの~。処で、儂は二百年余り刀の中で身動きができなんだが、春家の者は息災かの?」


瞳が問い尋ねたのに対して良が進み出て答える。


「初めてお目にかかる、瞳殿。拙者、春家の者にてとき殿から七代後になり申す良と言うものでござる。以後、お見知りおきを」


そうして良は瞳に丁寧にお辞儀をする。瞳は少し考えた後、笑顔で答えて言う。


「おお!迅の子孫か。息災で何よりじゃ。悪霊どものお陰で身動きが今までとれなかった故、お前達には迷惑をかけたな」

「いえ、拙者は何事もござらん。それに、瞳殿にまとわりついていた悪霊どもを片付けてくださったのは、そこに居られるルミル殿達でござる」

「そうか、そうか、それはすまなかったの~。ルミル殿、儂で出来ることであれば何でも致すので遠慮無く言ってくれ」

「拙者も、微力ながらお手伝い致し申す」


瞳と良の言葉にルミルは少し考えてから、微笑みながら答えた。


「ん~、そ~ですね~。今は特にお願いしたいこともないので~。またの機会にお願いしますね~」

「そうでござるか……とりあえず拙者は、この街に暫し逗留しようかと考えているのでござるが……瞳殿、宜しいか?」

「儂はいっこうに構わぬよ。むしろ、今は、ここを離れたくないのう。久々の異国じゃて楽しまねばな」

「と、言うことでござるので、ルミル殿、我らは暫しこの街に逗留致すゆえ、何かあるときは遠慮無くお呼び立て下され」

「それはありがとうなのです~。いざというときはお願いしますね~」


ルミルは微笑みつつ謝意を述べた。良と瞳の二人は、暁の国の礼式で丁寧な礼をし店を後にした。




「なんとも……瞳殿位の精霊だと一体何年生きているのだ?」


フェニエルが漸く頭の中を落ち着かせて、ルミルに疑問をぶつけた。


「ん~?正確には調べていないから、概算になっちゃうけれど~。二、三千年くらいでしょうね~。武器自体はそんなに強力じゃないけれど、瞳ちゃんは結構強いわよ~」

「ま、強くなければ、あれだけ沢山の悪霊どもがとりついていて無事なわけがないよな」

「そ~いうことですね~」

「なるほどな……では、これは彼らを越えるほどになるということか……」


フェニエルが聖剣ラグロウゼスを手にしてそう言った。ルミルはくすりと笑いながら言う。


「まあ、そうだけれど~。瞳ちゃんとは反対に、ラグロウゼスは剣の方が強力すぎて、精霊はまだ若いのよ~」

「何?!しかし、一応千五百年前の作品なのだろう?」

「作品としてはね~。でも、すぐに魔剣と戦って、完全体ではなくなっているから~。精霊としてはまだ幼いのですよ~」

「ああ……今、出てくることが出来ないように、力を強める機会がないということか……」

「そうですね~。一種の冬眠状態と言うべきかな~。だから~、本体に戻ったときに、フェニエルが使いこなせることを期待しているのですよ~」

「そ、そうか……私は、伝説の勇者とも言われたレオニアフェルオスのようになれるとは自惚れないが、出来る限りのことはさせてもらおう」


フェニエルは決意を込めるように言う。が、ルミルは、指を立てて左右に振りながら答えて言う。


「いやいやいや、ラグロウゼスを漸く使えただけの勇者程度では困りますね~。フェニエルには使いこなすだけの能力があるのですよ」

「ヒュ~♪ずいぶん買われているじゃないか、フェニエル」

「いいなぁ、フェニエル様はぁ」

「あらあら♪」

「す、素晴らしいです、フェニエル様。私も頑張ります!」


皆に誉められ、又、祝福されて、フェニエルは顔を赤くした。


「あ、いや……ち、ちょっともう少し修行をしてくるぞ!」


そう言い、その場から逃げ去るように店の奥へとフェニエルは向かった。


「あ、フェニエル様。私もお供します!」


フェニエルを追いかけて、セレイラが走っていく。


「ま~、これで少しは頑張ってくれますかね~」

「ん?もしかして、何かあるのか?マスター」

「今はまだなんとも~。ただ、この街でも次第に騒動は増えていくと思いますよ~。アイネアも心配していましたし~」

「もう少し協力者が居ると、あたし達が出なくていいから楽ですけれどねぇ」

「そ~ですね~、近日中にクロスグレヴドはお店に来るでしょうが~。あと、二人くらいは欲しいですね~」


何やら、意味深な会話をするルミル達であった。




「何か」が近づきつつあるのか?それとも?

それを知ることができるのは、今ではなかった……

エセラ 「さて、修行するんでしたよねぇ」


フェニエル「ほえ?しているぞ?」


ルミル 「あ~……フェニエル頑張れ……」


フェニエル「へ?一体何を?」


ルフィ 「今度は俺たちも参加だ!」


フェニエル「ちょ?!な、ルフィ、なぜ服を着ていない?!」


シャネ 「あらあら、私も居ますわよ~」


セレイラ 「おっきいです……」


エセラ 「セレイラ、あたし達も負けられないわ!」


セレイラ 「あ、はい!」


フェニエル「ま、まてまて~!!ルミル!みんなを止めろ~!」


ルミル 「楽しいからあたしは観てますね~」


女性陣 「さ~、フェニエル様~」


フェニエル「わ、私の貞操はもつのか……」


……いいのだか、悪いのだか……( ̄▽ ̄;)

次回は「街中での出会い」をお送りする予定です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ