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謎の先輩

アラームが鳴った後、俺は屋上で中庭を眺めていた。そこではクラスメイト同士がバッチを奪い合う乱闘が繰り広げられている。かんづめを探すが見当たらない。

あいつは校舎内にいるのだろうか…

俺はバッチを奪いに行かず、ここで待つことにした。

余計な戦闘をして目立ちたくはないからな。

それからかなり時間が経った頃、下から階段を登る音が聞こえてきた。

来たか……

屋上のドアが開き、男が現れる。

同じ制服を着ているものの、胸元を空けていて、随分と雰囲気が違う。そいつの胸を見ると、そこには3つのバッチが光っていた。

男が口を開く。

「みんなが下で必死こいて戦ってる中、屋上で高みの見物ってか。いいご身分だなぁ。ま、そういう奴が居るから俺がのし上がれるんだがなw」

なんだ?こいつは?いきなり現れて好き放題言いやがって。今すぐその口を黙らせてやりたい。

「こっちの事情も知らずにペラペラと、五月蝿い奴だな」

「おいおい。事情つったって、勝てる自信がないからここでいもってるだけだろ?雑魚が」

「じゃあその雑魚にしか勝てないお前は何なんだ?お前も雑魚なんだろ?」

「だまれ!」

男は拳に炎を纏い、襲いかかってくる。

しかし、隙だらけだ。恐らく能力に頼りすぎているのだろう。こんな奴、能力を使うまでもない。

俺は飛んできた男の拳を避ける。しかし、炎が服に燃え広がってしまった。くそっ!炎のせいで感覚が掴みにくい!急いで制服の上着を脱ぎ、男に投げつける。上着で視界が塞がった男にパンチをお見舞いする。 

「ぐっ!」

男はよろけた。近接が不利だと悟ったのか、男は距離を取り、野球ボールを投げるように、炎を飛ばしてくる。

俺は炎を避けつつ、屋上の入口の消化器を手に取り、炎を消しながら距離を詰める。男の眼前まで迫り、足を払う。

「へっ?」

━━バタン!

男は反撃されることが頭になかったのか、腑抜けた声を出し、勢いよく地面に叩きつけられる。

男がバランスを崩した隙を狙って、鳩尾を思い切り蹴りつけた。

「うぐぅ!」

男がうずくまる。

俺は男の髪を掴み、持ち上げ睨みつける。

「今すぐバッチを置いてこの場から消えろ」

男はすぐさまバッチを置いて、フラフラとした足取りで逃げていった。

はぁ…あの野郎、制服燃やしやがって…

俺は見るも無残な姿になった制服をよそ目にバッチを拾った。これでバッチは4つ。これでどれくらいのクラスに行けるのだろうか…

暫くして、再びアラームが鳴った。

俺はそのまま屋上を後にした。

教室に戻ると、生徒が6人ほど消えていて、残った生徒はほとんどが窓をのぞいている。もちろんかんづめもだ。つられて窓をのぞくと、倒れている生徒たちが目に映った。皆、バッチを持っていない。おそらくほかの生徒に叩きのめされたのだろう。


氷室が低い声で言う。

「落ちこぼれに構ってないで席につけ。お前たちは勝ったんだから敗者のことより自分のことを心配しろ」

流石実力主義の学校。弱者は見捨てろってか。

周りは戸惑いながらも席に着くと、氷室は満足そうに頷いて続けた。

「お前らはこれから授業がある。準備は必要ないからそのままにしていろ。俺は中庭で倒れてる奴らを拾いに行く」

そう言って、氷室は欠伸をしながら教室を去っていった。

暫くして、新しい教師がやって来た。昨日会った分身の男だ。しわだらけのシャツを着ていて、目の下にはクマがたっぷり出来ている。残業でもしたのだろうか…

男はしゃがれた声で話し始めた。

「今から…えーっと、異能の性質についての授業を行う。お前たちは自分の武器を深く知る必要があるからな。まず、異能はとあるエネルギーを消費することで発動させることができる。そのエネルギーが何なのかはしらん。誰か知ってたら教えてくれ。そして、能力を使い続けると、いつかはエネルギーが枯渇してしまう。そしたら暫くは能力は使えない。まぁ一晩寝れば治るから問題ないが、無理をしすぎるのも注意だ。俺みたいになるぞ。ふぁ〜。ねみぃ…次は異能の成長についてだ。頻繁に能力を使っていると、エネルギーが枯渇しにくく、そして能力が強力になる。強くなりたいなら地道に努力するしかないってことだな」

なるほど、能力のエネルギーについては知っていたが、成長については初耳だ。ここではかなり能力の研究が盛んなようだ。

俺が思考を巡らせていると、男が伸びをしながら言った。

「よし。これでオレが教えることは終わりだな。俺は寝るから、起こさない程度ならご自由に」

そう言って男はサッと今言ったことを黒板に書き、空いている椅子に座って居眠りをし始めた。……まだ授業中だと言うのに、とんでもない教師だな。

その後、俺はかんづめと一緒に食堂で飯を食っていた。柳も誘ったが、用事があると断られてしまった。

食堂はかなり広く、ざっと100人は収容できそうだ。片側の壁に注文する場所があり、ほかのスペースに沢山の椅子が並んでいる。

そう言えば、かんづめはどれくらいのバッチを手に入れたのだろうか。やはり4つくらいは軽く持ってそうだな…気になったので、俺はかんづめに問いかけることにした。

「二朗はバッチをいくつ手に入れたんだ?」

かんづめは昼食を食べる手を止めて答える。

「5つぐらい集めたよ。硬質化してタックルしたら皆降参してくれたよ」

「絶対骨折れてるだろそれ…食らった人たちは大丈夫なのか?」

「あ、たしかにその人たち教室に居なかったかも…」

俺は開いた口が塞がらなかった。そこまで強いとは、うれしい誤算だ。

食事を済ませて食堂を出ようと席を立ったとき、周りが何やら騒がしくなっていた。皆、食堂の入り口を見ながらヒソヒソ声で話している。

耳をすませると、

「Sクラスの方がなぜこんなところに…」

「誰かが気に食わぬことでもしたんじゃないか…」

などと聞こえてきた。

どうやらSクラスの生徒がわざわざこの食堂に来たらしい。どうせ新入生の俺達に用はないだろう。

そう思いかんづめと食堂の外に出ようとしたところ…

「すみません。そこの2人、少し時間よろしいですか?」

と声をかけられた。

振り返ると、そこには男子生徒が1人立っていた。

彼は眼鏡をかけていて、それを被るようにして黒髪がかかっている。その髪の隙間から見える目は、真っ直ぐ俺達の方を見つめていて、考えを見透かされているように感じた。そして、彼の胸には、Sの形をしたバッチが付いていた。

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