学校潜入
俺は芙美に問いかける。
「新しい任務ってどういう内容なんだ?」
「シーケンス学校というところに潜入してほしいの。シーケンス学校は能力者を育てることを名目として運営している、超武闘派高校よ。だけど、生徒が失踪する事件があったらしいのよ。杞憂かもしれないけど、危険なことを企んでいる可能性があるから念のため調べてほしいとのことよ」
「了解。しかし、なぜ俺達なんだ?潜入が得意な構成員がいるだろう」
かんづめを見る。
こいつはまだ新人だ。初任務にしては、かなり危険な任務ではないだろうか。
「それはそうなんだけど、構成員がみんな出払っちゃってるのよ。うちが人手不足なのは知ってるでしょ?それに、かんづめくんは戦闘能力が高いし、汎用性が高い能力を持っているわ。簡単に死にはしないわよ。安心していいわ」
「…あんたがそこまで言うなんて珍しいな」
「それぐらい強いってことよ。あとは教育係としていろいろ教えてくれればいいから」
「了解」
「あ、それと、あなた達の学園での名前は佐藤太郎と佐藤二郎ね」
「ありきたり過ぎないか?」
「私がつけたわけじゃないわ。文句は上に言うことね。あ!それと、DTAの人も潜入しているから、仲良くするのよ」
「おい!そのDTAの人って誰だ!?特徴は!?」
━━ツーツー
電話が切れた。
くそっ。結局DTAの人って誰なんだよ…まぁ、あっちから接触してこなければこちらから何かする必要はないだろう。
かんづめを見る。
こいつが新しいバディーか……
「おい。かんづめ、聞いた通りだ。学校に潜入するぞ」
「え?そんな話してたの?唐揚げに夢中で全然気づかなかった!」
呆れた。夢中になってくれるのはうれしいがな…
「夢中になりすぎだろ…とにかく学校に潜入することになった。詳細は、食事を済ませてから話す」
「そうだね!」
そうして、俺達は残り少ない唐揚げを口に運ぶのだった。
俺達は指定された制服を身につけ、シーケンス学校の正門にいた。制服は紺色の上着の中にシャツとネクタイを着込む、かなりオーソドックスな制服である。しかしほかの学校の制服と違い、かなり動きやすく丈夫だ。戦うことを前提として作られているようだ。校舎は3階建てで、その周りを鉄の塀がぐるりと囲っている。正直、見た目からしても相当怪しい……
かんづめが、ぼそっと呟く。
「ここがシーケンス学校か…なんか監獄みたい」
「確かに、いかにも何かありそうだ。もうすぐ入学式が始まる。いくぞ」
「了解!」
俺達は正門をくぐり、入学式の会場である体育館に向かった。
廊下には人影がなく、物々しい雰囲気が漂っている。
体育館に入ると、すでに他の新入生が集まっていた。数は30人ほどいた。体育館は一階と二階が吹き抜けで、上から下がよく見えるようになっている。正面にステージがあり、演説台がある。俺達は目立たぬよう、急いで席に着く。
しばらくすると、高級そうなシャツを着た男がステージの上に現れた。
男は演説台に立ち、咳払いをしてから話し始める。
「新入生の諸君、ようこそシーケンス学校へ。私は校長のアサギだ。これからよろしく。ここは個々の異能を育成するための学校だ。私は、人は窮地に陥ってこそ成長すると思っている。よって、卒業するまでに様々な試練を用意した。それを乗り越えられるかは君たち次第だ。ここは、簡単に卒業できるほど甘くないぞ。精々、頑張ってくれたまえ」
普通の学校の校長とは思えない威圧感に、その場が凍りつく。この人が只者ではないことはその佇まいが物語っていた。
校長の話が終わると、俺達は教室に案内された。中はきれいに整頓されていて、黒板にオリエンテーションと書いてある。どうやらここで学校の説明をするらしい。指定された席について待っていると、隣の席の女子生徒が目についた。彼女は制服の上着の代わりに緑のカーディガンを羽織っていて、かなり目立っている。髪はお世辞にも整っているとは言えず、アホ毛が立っている。彼女をジロジロ見ていたせいか、彼女と目が合ってしまった。彼女は俺を見て一瞬固まったものの、すぐにおっとりした口調で挨拶してきた。
「こんにちわ〜」
「こんにちは」
「私は柳桔梗っていうんだ〜これからよろしくね〜」
「俺は佐藤太郎。こちらこそよろしく」
「あはっ。太郎って…ありきたりすぎ〜」
「よく言われる。うちの家系は代々長男に太郎と名付ける家系なんだ」
「へ〜」
全く、なんでこんな名前にしたのか。逆に目立つんじゃないかこれ…
そんな事を考えていると、教師と思われる男が教室に入ってきた。男は、安っぽいシャツと青いネクタイを身に着け、品定めをするように生徒たちを観察している。その時の男の目は、氷のように冷たかった。




