姉の実力
姉さんが踏み込み、俺との距離が一瞬にして0になる。━━━速い!
反射的に体を鉄にする。
が、直後"ドゴッ"
鈍い音と共に腹部に強い衝撃。
「ぐふっ!」
あまりの痛みに膝をつく。
おかしい。体を鉄にしたはずなのに、生身になってる?
笑みを浮かべながら姉さんが言う。
「ふふ、不思議でしょう。私は触れた相手の能力を解除できる。どんなに硬くなろうと私には無意味よ!」
「…手加減とかないんですか?」
「あら?してないとでも思ったの?だったら今ごろあなた死んでるわ」
まじかよ。
再び姉さんが踏み込む。
まずい!攻撃が来る!避けなければ…
俺は体を水にした。体が形を保てなくなり、視界が揺れる。
いけるか!?
体が崩れ落ち、拳が当たる寸前で避けることに成功する。
「よく避けたわね。でも、避けてばかりでは倒せないわよ!」
そりゃそうだ。攻撃しないと…でも、攻撃はすべて無効化される。どうすれば…
悩んでいるうちに、次の攻撃が飛んでくる。
「上からの攻撃はどう避けるのかしら!?」
姉さんが飛び上がり、天井を蹴って加速する。
しまった!これじゃあ水でも避けられない!
━━ドゴォ!
咄嗟にガードしたが、あまりの怪力に腕が悲鳴をあげる。
「あぁっ!づっ!」
少し遅れて激痛が走る。
「この攻撃を受けても骨折しないなんて、あなただいぶ頑丈なのね。ま、次で終わりにするわ。精々あがきなさい!」
このままでは本当にまずい!
考えろ…この場を切り抜ける方法…
はっ!
━━━どうせ能力が解除されるなら、自分から解除してしまえばいいのでは?
姉さんの周りの床を水にする。足場が崩れ、姉さんの構えが崩れる。
今!水を床材に戻す。
姉さんは下半身が床に飲み込まれた。
━━決まった。
「はぁ…はぁ…これで動けないでしょう。勝負ありですね」
「考えたわね。埋めるなんて。でも、私を見くびらないことね」
そう言って姉さんは拳を振り上げる。筋肉が盛り上がり、衝撃とともに床がひび割れる。姉さんは割れた床をどかし、埋まった状態から脱出した。
まずい!ほんとに殺される!
「ふぅ…試験終わり。あなたに実力があることはわかった。これ以上戦う必要はないわ。合格よ」
姉さんは構えを解き、後ろの椅子に腰掛ける。
「よ…良かった…」
思わずその場に座り込んだ。
「それじゃあ、新人くん。うちの組織は誰かとバディーを組む必要があるんだけど、誰がいいとかある?」
「じゃあ玲哉と一緒がいいです!」
「あの子とバディーを組むのなら、危険な任務が多くなるけど、それでも大丈夫?」
「大丈夫です!」
「分かったわ。そう手配する。私の名前は芙美よ。よろしくね新人くん」
「よろしくお願いします!芙美さん!」
姉さんがポケットから携帯を取り出す。
「はい。これあなたの携帯。任務とかはそれ経由で伝わるからなくさないでね」
「分かりました!」
携帯かぁ。記憶喪失史上初めてのハイテク機器!
ワクワクするなぁ!
その後、軽い挨拶を交わして、俺は面接の部屋を出た。
自然と足取りが軽くなる。
建物の出口で玲哉が待っていた。
「おつかれ。どうだった?」
満面の笑みで答える。
「受かったよ!」
「そうか。良かったな。中から轟音が聞こえて、面接官が台パンしたのかと思ったぞ」
「あはは…お騒がせしました…」
「全くだ。帰って飯にしようか」
「そうだね!早くご飯食べたい!」
そうして、
俺達は帰路へ着くのであった。
家に帰り、俺達は夕食を食べていた。机には山盛りの唐揚げが並び、香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
「かんづめ、面接合格おめでとう。お祝いとして、唐揚げをつくった。今日は好きなだけ食うといい」
「ありがと玲哉!では早速…」
かんづめが箸を置き、目を丸くする。
「うっま!?何この唐揚げ!ありえないくらい美味しいんだけど!」
「当たり前だ。この唐揚げは俺特製のタレを使っている。そこらの店の唐揚げとは違うぞ」
「玲哉の料理は世界にも通用するよ!」
そう言って、かんづめは唐揚げを口にかき込む。
それにしても、人に料理を振る舞うなんていつぶりだろうか… 昔は、家族に自分の料理を振る舞っていたな…皆の喜ぶ顔を見るのが好きだったな。
こんな仕事に就いていなければ、俺は料理人になっていたかもしれない…
携帯が鳴る。
出ると、芙美からだった。
「もしもし玲哉、次の任務よ。今回のバディーはかんづめくんよ」
任務か。危険な任務でなければいいが、一体どんな任務なのだろうか……




