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謎の青年


いきなり現れた青年は半袖のシャツと、Gパンを着ている。髪はぼさぼさで、腕には0の形をしたタトゥーがあった。

「こらこら、弱いものいじめはいけないぜ」 

そう言って、青年は敵に突っ込む。

 仮面の男も影を出してナイフで応戦する。

━━ガキン!

青年の体が硬く、敵のナイフが弾かれる。

男は替えのナイフを出そうとした。

次の瞬間、青年の身体が変化した。ムチのようにしなり、敵を薙ぎ払う。さっきまで硬かったはずだが…

敵が吹き飛ばされ、壁にぶつかる。その衝撃で周りの影が消える。

「予想外の敵が入ったが任務は達成した。オレは帰る」

敵はそう呟き、沙織の亡骸を掴み闇に紛れ姿を消した。止めようとしたが、足が動かなかった。

あまりに一瞬の出来事に、俺は暫く言葉を発することができなかった。


 「ふう。大丈夫だったかい?隣の人は残念だったけど、君が無事でよかった」

 「残念だったとは何だ?お前なら死体を取り返せただろうに、なぜほうっておいた!?」

俺は地面を思いきり叩いた。

「それは…ごめん、一瞬すぎて反応出来なかった…」

くそっ!冷静になれ俺!こいつを責めても何も変わらない!しかし、この青年は誰なのだろう。上司が増援を送ってくれたのだろうか……考えていても仕方ない。俺は青年に尋ねることにした。

 「何者だ」

 「通りすがりの……えっと、逃亡者?」

逃亡者?だとすると何処かの組織から逃げて来たのだろうか……

思考を巡らせていると、青年が話しかけてきた。

「こんな時に悪いんだけど、少し頼み事をしてもいいかな?」

「……なんだ」

俺がそう返すと、青年は俺の肩を掴んできた。

 「居候させてくれ! 頼む! まじで!」

 「……は?」

一瞬思考が止まった。

 「今、どこにも身寄りがねぇんだ! 恩を受けたと思ってさぁ!」

いきなり現れて居候させてくれだと?しかもこんな時に?こんな得体のしれない人間を家にあげるのは気乗りしない。そう、今までの俺なら考えていただろう。しかし、今は違う。まだ俺は人間だと思いたかった。とにかく人肌に触れたかった。こんな空気の読めないやつでも、話し相手になるだけマシだ。それに、こいつは命の恩人だ。本当に身寄りがないなら放置しても後味が悪い。…ちっ!こうなったらヤケだ!どうにでもなれ!

 「仕方ないな。一晩は泊めてやる。しかし今後どうするかは事情を聴いてから決める」

 「やったぁ!恩人だな!」


 笑顔でぴょんぴょん跳ねる彼とは対照に、俺はこれからの行動を考えていた。取り敢えず、これから長い付き合いになるかもしれない。まずは自己紹介だな。

「俺は玲哉。お前の名前は?」

「あ、えっと…かんづめ!かんづめだ!」

「ふざけているのか?」

「いや、俺はいつでも真剣だよ。臨時の名前みたいなもんだと思ってくれ。」

「とにかく帰るぞ…かんづめ」

「はーい!」

歩き出す彼の背中は、動きの軽快さとは裏腹に、何かを背負っているように見えた。


翌日。カーテンの隙間から朝日が差し込むリビングで、俺達は簡単な朝食をとっていた。


「昨日の動き。あれは明らかに普通じゃなかった。お前何者だ?」

かんづめの肩に目を向ける。そこには0のタトゥーがあった。どこかで見た気がするが…気のせいか。 かんづめが、朝食のトーストを口に詰め込みながら答える。

「俺はただのかんづめだよ〜」

「真面目に答えろ。ふざけていると追い出すぞ」

「ちょっ!それは困るって!わかった!言うから!」

かんづめは食事をやめ、咳払いをした。

「実は…俺、記憶喪失なんだ」

「嘘つけ。記憶喪失なら自分の能力や使い方を知らないはずだ」

「それは…なぜか覚えていたんだよ…気づいたら知らない街にいて、彷徨っていたところに玲哉がいたんだ…信じてよ…」

かんづめはうつむく。彼の手には、大粒の汗が滲んていた。こいつが嘘をついてると思えないが、少し動きが不自然だ。それに俺の勝手で組織が潰れる事も望まない。それこそ本物の死神だ。敵の工作員だとしたら一大事。念のためにあれを使うか。

俺は能力を発動し、指輪を作った。

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