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10/12

Sランク

その後、俺はかんづめと一緒に食堂で飯を食っていた。柳も誘ったが、用事があると断られてしまった。

食堂は広く、ざっと50人は収容できそうだ。片側の壁に注文する場所があり、ほかのスペースには、テーブルと椅子がぎっしり並んでいる。生徒たちは、皆お気に入りの料理を口に運んでいた。

そう言えば、かんづめはどれくらいのバッジを手に入れたのだろうか。試験中はかんづめを見なかったしな……

「二郎はバッジをいくつ手に入れたんだ?」

かんづめは反応を示さない。

「おい!二郎!聞いてるのか!?」

「あ、二郎って俺か。忘れてたわ。ごめん。バッジは5つぐらい集めたよ。硬質化してタックルしたら、みんなすぐ降参してくれたよ」

「絶対骨折れてるだろそれ…食らった人たちは大丈夫なのか?」

「あ、たしかにその人たち教室に居なかったかも」

俺は開いた口が塞がらなかった。

俺達が食事を済ませ、食堂を出ようと席を立つと、突然、周りが騒がしくなった。皆、食堂の入り口を見ながらヒソヒソ話している。

耳をすませて会話を拾うと、

「Sクラスの方がなぜこんなところに……」

「誰かが気に食わぬことでもしたんじゃないか……」

などと聞こえてきた。

どうやらSクラスの生徒がわざわざこの食堂に来たらしい。少し接触してみたい気もするが、わざわざ用があってここに来ているのだろう。その用事を邪魔してまで接触する必要はない。

そう思い、食堂の外に出ようとしたところ…

「すみません。そこの2人、少し時間よろしいですか?」

と声をかけられた。

振り返ると、そこには柔らかな笑みを浮かべた男子生徒が立っていた。前髪が眼鏡にかかるように垂れている。だが、何より目を引いたのは、胸ポケットに付いているSの形をしたバッチ。こいつがSランクだ。

さっきまで賑わっていた食堂が、しんと静まり返った。まさか、Sランクの用事が俺達だったとはな。

俺は眼鏡の男に言う。

「Sクラスの方が、俺達に何の用ですか?」

「ここで話すのもなんですので、場所を変えましょう。ついてきてください」

そう言って、眼鏡の男は歩き出した。

かんづめが小声で相談してくる。

「これどうする?行く?」

「断ったら何されるか分からない。ここは従おう」

かんづめは小さく頷いた。

眼鏡の男は、しっかりとした足取りで廊下を進んでいく。道中、生徒たちが彼に気付くやいなや道を空け、次々と頭を下げる。

かんづめは

「なんか王様の近衛兵になったみたいだよ」

と言って、複雑な表情をしていた。

その声が彼に聞こえていたようで、

「そんなに偉くないですよ。それに、たとえ頭を下げるのが遅れたからといって、殴ったりなんてしませんよ」

と、苦笑していた。

数分ほど歩いて、俺達は校舎の端の教室に着いた。

「ここです」

眼鏡の男が扉を開ける。そこには4つの机が向かい合うように並べてあった。少しホコリが舞っている。

「チッ…相方は遅刻ですか…まぁいいです。二人とも、どうぞ座ってください」

「ご親切にどうも」

俺達は椅子に座る。

眼鏡の男は向かいの席に座る。

彼が椅子に腰を落とすと同時に、彼の笑みが消えた。

空気が重くなる。さっきまで柔らかな笑顔をしていたとは思えない、別人のようだ。

「すみません。まだ相方が来てないようなので、先に自己紹介をしましょう。私の名前は海斗といいます。よろしくお願いします」

海斗は、カンペを読むような無機質な声で話す。

「俺は太郎で、こいつは二郎。よろしく」

「二郎です!よろしくね!」

沈黙が場を包み、気まずい雰囲気が流れる。そんな空気に耐えきれず、かんづめが話を振る。

「なんか、この学校って、変な感じしません?」

「……そうですね。重々しい空気があります」

「白い塀のせいか?」

「……それもあるかもしれません。私は1年間ここにいるのですが、あの塀は今も慣れません」

それを聞いて、かんづめが慌てて口調を硬くする。

「先輩じゃないですか!これは失礼しました!」

「……ここは年齢関係ない場所です」

「いえ!俺がそうしたいので大丈夫です!」

いつの間にか、かんづめと海斗の会話にすり替わってた。こいつこんなにコミュ力高かったのかよ……確かにすぐ誰とでも仲良くなりそうではあるよな。俺はかんづめを少し見直した。



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