09 兄上の恋愛相談9
花火をあっという間に終わりふたりは余韻に浸っていた。
「そろそろ部屋に戻ります。魔術は解除されてしまいますが今はふたりっきりの方がいいでしょう。あとは頑張ってくださいね、兄上。」
そう言って私はアーシアさんから降りて全ての魔術を解除し、久しぶりに人の姿へと戻った。
部屋に戻ろうとする私に
「リズさん、本当にありがとうございました。こんなに感動を得られたのはいつぶりでしょうか……また後日お礼を言わせてください。」
と、アーシアさんが感謝を伝えてきた。兄上も私にお礼を言い、そんなふたりを後に私は部屋に戻った
……………
訳ではなくもの陰に隠れて聴力を上げる魔術を使い、自分にかけた。
(ふたりの会話を盗み聞きするのは心痛いですが、今回の魔法の代価ということで許してください。)
そう、ひとりで思いつつ盗み聞きを開始した。
「アーシア、少しいいですか。」
兄上は震えた声で言った。アーシアさんもちょっとだけ裏返った声で返事をした。
(ふたりっきりなった途端にこれですか………)
私はさっきまでのふたりの距離感を思い出して少し複雑な顔をしていたが、そんな私の気持ちをいい意味で裏切るように兄上はアーシアに告白を始めた。
「私とアーシアは政治的な意味もあって親に勧められた婚約ではありましたが、それでも私は本当にアーシアに心を引かれて今では全てが愛おしいと思うほどになっています。婚約を申し込んだ後で今更かもしれないけど、私と結婚してくれますか。」
その言葉を聞きアーシアさんは、
「私はライオス様の事を本当に心優しく、素敵な方だと思っていました。しかし、あなたの姿を見た事のない私はあなたのすべてを愛しているのか、もしかしたらあなたのことを全てを愛してくれる人がいるのでは無いかそう思っていました。でも……今はあなたのすべてを愛してると言えます。こんな私で良ければ私と共に人生を歩んでください。」
と泣みだを流しながら兄上に言葉を返した。
さすがにこれ以上は良心が痛むので私は魔術をとき、自分の部屋に戻った……
(きっとふたりは上手くいっていることでしょう。)
そう部屋で思いながら眠りについた。
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後日、兄上とアーシアさんが私の部屋に尋ねてきた。私にお礼を言いに来たのだった。そして、ふたりは正式に結婚式をあげる日程なども決めて順調に仲を進めてるようだ。ふたりの結婚式に間に合うように私はメガネ型の黒魔術を編み込んだ疑似視覚装置を開発している。ふたりの恋の物語に恋愛が出来ない私が少しは役に立てたのはなんとも言えない感動を覚えた。
(恋愛ができない私でもこんな気持ちが得られるのはとても嬉しいことだ………)