08 兄上の恋愛相談8
少しの間、アーシアさんとふたりで話をしたあと兄上が帰ってきた。
「それで、この街の名物とは一体何なのでしょうか?」
帰ってきた兄上にアーシアさんは当然と言えば当然の質問をした。そんなアーシアに
「それは夜まで楽しみに待っていてください。きっと感動すると思いますから。」
そう少しキザに兄上はアーシアさんに答えた。
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そんなこんなであっという間に日が暮れて、私たちはこの街の名物を見るために城に戻り、4階にあるベランダに出た。
その間、アーシアさんはなんで城に戻ってきたのでしょう?と不思議な顔をしていたが、同時にワクワクしながら着いてきているようだった。その気持ちを分かってかかなり上機嫌に
「さぁ、ここからこの街の名物を見れます。」
と、兄上は空に指を指した。
そうすると”ヒュ〜”と言う音とともに光が空にあがり、上で大きな光の花が出来た。少し間を置いて”バン”という音も空に広がっていった。
アーシアさんは初めて見る花火に驚きつつも感動を顔に浮かべていた。そんなアーシアさんに兄上は花火の説明をした。
「これは花火と言って音と目で楽しむこの街の名物なんです。この街の人達は行事などの嬉しいことがある時にはこうやって花火をあげ、大切な人と見るんです。」
そう、誇らしげに説明する兄上にアーシアさんは
「目が見えるようになってから素晴らしいものを色々見てきましたが、今目の前に広がっている景色は格別に感動を覚えます。」
と、キラキラした表情で答えた。
「でも、今日は何かの行事があったのでしょか。」
「何かの行事があった訳では無いですが、その答えはアーシアと私が初めてデートをした記念ってのは嫌ですか?」
「い、いえむしろ私には勿体なさすぎてなんというか……」
「そんなことは無いです。アーシアさんに喜んで欲しかっのはそうですが、アーシアと一緒にみたいと私が思ったか職人の人に頼んであげてもらったのです。」
そんな恥ずかしいセリフを言い合いふたりはその後の続く花火を見上げて自然と手を繋いでいた。
(兄上ってこんなにキザな人でしたっけ……)
私はちょっと複雑になりつつも微笑ましいふたりに心を暖かくしていた。