06 兄上の恋愛相談6
兄上の部屋の前に着くとアーシアさんがひとつ深呼吸をした後ドアをノックし「ライアン様少しいいですか。」と呼んだ。中からは
「ア、アーシア…ど、どうかしたか。」
かなりテンパった声で兄上が答えた。
そして、兄上は走ってドアの前に来て慌ただしくドアを開けた。
「どうぞ、な…なかへ」
そこにはかなり緊張した趣の兄上が立っていた。
(いつものクールさは一体……)
「す、みません。急に、その……」
アーシアさんも何故か歯切れが悪く会話している。
2人ともかなり緊張しているらしい。
それを見かねた私は
「アーシアさんが初めは兄上を目にしたいと言って尋ねてきたんです。それよりもデートプランちゃんと考えましたか兄上!」
と、会話を思い切り進めた。やっと会話が進むと思った私だったが今度は兄上が「アーシアの声が…」と
驚いた。
(はぁ……)
心の中でため息をついて兄上に私がハムスターに変身していることを話した。兄上は「な、なるほどね。」と取り繕おうとしていたがアーシアさんの頭の上にハムスターが乗って時点で察して欲しいものである。
そして今度はアーシアさんが「デートというのは…」と聞いてきたのでそれもまた説明した。
2人が全てを理解したところで
「じゃぁ、黒魔術使いますよ。2人とも覚悟できましたか?」
と聞いた。それに対して2人とも真剣な様子で頷いた。
「では、行きますよ。感覚共有」
そう呟き、黒魔術を発動させた。次第にアーシアさんと私の目の感覚が繋がっていき、アーシアさんの目に光が灯っていった。
アーシアさんは初めて目が見えたことへの緊張と喜び、そして驚きによりぽかんとした顔になっていたが次第に頭で理解するに至り、アーシアさんは涙を流した。
「ア…アーシア、大丈夫かい?」
兄上は優しい声で聞いた。
「えぇ、大丈夫です。なんと言いますか、想像していた通りの世界と想像以上に美しい世界が広がっていて………すみません、うまく言葉が出てこなくて…」
上手く言葉に出来ないと思っているようだが、アーシアさんの表情と声色を聞き、驚きもあるがそれ以上に嬉しさがあるということが十分理解できた。
アーシアさんはまず兄上をじっくりと見つめた後、周りを見渡し感動を味わっていた。
(こんなにも喜んでくれるのならば黒魔術を勉強したかいがあったというものです。)
私は黒魔術でアーシアさんの役に立てたことを喜び、兄上はアーシアさんの喜んでいる姿をいつも以上の優しい顔で見守っていた。
しばらく経ってアーシアさんも、段々と目が見えることに慣れているようだった。