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炎の神2



 内部戦争が起きていた魔物を倒し終え、わたしたちは一度、宿屋に来ていた。



 時間の進みは早く、魔物を倒していただけで、もう夜に差し掛かっていた。



 「ふぁぁぁ〜もう寝ようかなぁ、わたし」



 「えええっ、エリナ、まだ夕食食べてないよ?」



 「なんか疲れちゃった〜でも、ご飯食べたいっ」



 「エリナはいつも寝てるだろ」



 マリトがさも当たり前のように言うと、エリナは頬を膨らませた。美人はそんな顔さえ、画になるから羨ましい。



 「はぁっ!?そんなことないし!何言っちゃってんの!?ありえないわぁ!マリトだって___」



 マリトとエリナの戦いに巻き込まれないようにわたしは、そろそろとその場を離れる。



 そういえば、今日、助けてくれたお礼をアリアに言いたいなぁ。



 そう思い、周りを見渡してみると、アリアが見当たらない。



 「ねぇ、アリア知ってる?」



 戦いをしているところを邪魔して、巻き込まれたくはないが、聞いてみる。



 「知らないわ。さっき、どこか行くのは見たんだけど」



 「知らない。でも、外に行くとかなんとか言ってたよ」



 「そっか、ありがとう」



 わたしがお礼を伝えると、マリトは少し、得意げな表情になる。



 「やっぱり、エリナはずっと寝てるから、人の話聞いてないんだろ」



 「違うし!アリアが言ってたこと、そのまま言ってただけだし!」



 また、喧嘩を始める二人に、わたしは苦笑いを浮かべることしかできない。



 いつも、喧嘩してるよな......なんて。でも、あの二人は喧嘩しても結局、仲良くしているから、きっと、”喧嘩するほど仲が良い”ってやつだと思う。



 わたしは、アリアを探しに行こう。



 ■■■



 「アリアー?」



 わたしは屋上の扉を開け、アリアの名前を呼ぶ。



 「っ......ルリカ?」



 暗闇の中、目を凝らすと、アリアが座り込んでいるのが見つかった。



 「あ、アリア!急に来て、ごめんね。さっきのお礼を言いたくてっ」



 「あ、ああ。全然大丈夫だ。きっと、勇者様のことでも考えてたんだろ?」



 「えっ、まあそうではあるんだけど。さっきは本当にごめんなさい。わたしの不注意で___」



 わたしがそう言いかけて、何気なく視線を下に落とすと、ある事実に気づいて、思わずアリアの顔を見てしまった。



 「えっ!ねぇ、それ、腫れてるのってもしかして、わたしのせい......?」



 足首が腫れていたのだ。きっと、わたしを助けるときにひねってしまったに違いない。



 「いや、お前のせいではない。だけど、助けたときに少しひねってしまった」



 「そ、それ、わたしのせいだよっ。今、救急箱持ってくるからっ、待ってて!」



 「え?あ、ルリカ!」



 アリアが呼び止める声も無視して、わたしは一目散に駆け出した。



 ■■■



 「ご、ごめんね......ほんとに、ごめんね......」



 わたしは手当てしながら、なぜか涙が出てきてしまった。ここで泣くなんて絶対に意味がわからない。



 泣くべきではない。そう思いつつも、涙は止まってくれない。



 「ごめんなさいっ......」



 「えっ......いや、ルリカ、泣かないでくれ」



 なぜか、珍しく焦った様子のアリアがわたしの頬に手を添えて、涙を掬い取る。



 「ううっ......うっ......ふ、ううっ.....」



 「ルリカ。泣き止め。別に怒ってないから」



 「っ......ほんと?」



 「ああ。本当だ」



 わたしは、泣き止もうと試みるものの、やはり、涙は止まってくれそうになくて。



 「ご、ごめん、涙が止まらなくて......」



 「......じゃあ、少しだけ、こうしててもいいか?」



 その言葉とともに、アリアに抱き寄せられる。



 なんで、アリアはこんなに優しいのだろう。もしかしたら、わたしはルリアが死んだときと同じ過ちを繰り返すところだったかもしれないのに。



 「あり、あ......」



 「なんだ?」



 「......ありがとう」



 アリアがわたしが罪の意識を感じないようにしてくれてるのがわかったから。



 その優しさにごめんなさい、はだめな気がした。むしろ、感謝しなければならない。



 わたしの言葉に、アリアはさらに、ぎゅっと力をこめて、抱きしめてきた。



 「......ああ。この優しさはルリカ限定だけど」



 「ん?ごめん、聞き取れなかった」



 最後のほうは、声が小さすぎて、なにも聞こえなかった。聞き返すと、アリアは口の端を持ち上げる。



 「いや、なんでもない」



 「ええ〜、絶対なにか言ったよね!?隠されると気になる〜」



 「まだ、教えられないかな」



 「え〜?じゃあ、いつ教えてくれるの?」



 隠されたことに少し不満になりながら聞くと、アリアは満点の星が光る空を見上げた。



 わたしも反射的に見上げ、星の美しさに見惚れていると、アリアは口を開いた。



 「いつか、俺らが___ルリカが魔王を倒したら、かな」



 「ふうん。じゃあ、わたし、アリアの話を聞くために魔王を絶対倒す!」



 「俺の話だけで?あははっ、まあ、いいけど」



 満点の星空の下、わたしの言葉に、アリアは何度も楽しそうに、嬉しそうに、だけどちょっと切なそうに、笑った。



 ___珍しいアリアの笑いに、思わず釘付けになってしまったとは、言えない。

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