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旅立ちの天変地異



 わたしたちが国を出たのは、夜遅くの皆が寝静まったころだった。



 なぜ、その時間にしたのかというと、国の人々に気づかれないようにするためだった。



 見送られると、魔王と四体の魔神たちが気づいて、警戒するかも知れない。そう思ったのだ。



 「ルリカー!用意できた?」



 「うん。できたよ!エリナも大丈夫?」



 「ええ。もちろん」



 エリナの顔に緊張はない。でも、いつもよりも、無理をしているような笑顔に感じた。



 もしかしたら、わたしたちのために、緊張を感じさせないようにしているのかもしれない。



 「エリナ、大丈夫?」



 「え?なにが?」



 「......ううん、なんでもない」



 思わず聞いてしまったが、本人の気持ちを揺るがすようなことを言ってはいけないと思い直し、やめる。



 「行くぞ、ルリカ、エリナ」



 アリアの声がしたほうを見れば、アリアが馬車に乗って、手を振っていた。



 四体の魔神のうち、一体がいる場所までは、馬車で連れて行ってもらうことにしたのだ。



 「行こっか、エリナ」



 もしかしたら、長い旅かもしれない。何年も何年もかかるかもしれない。



 きっと、死の淵に立たされることも幾度となくあるだろう。



 だけど。わたしは、絶対にルリアのできなかったことを成し遂げる。



 ______罪と引き換えに。



 わたしたちは、馬車に向かって走り出した。



 ■■■



 馬車に乗り込み、数時間。国の境界線のところまでやってきたわたしたち。



 「ひえ〜かなり、遠くまで来たわね」



 「そうだね......もう、国を出るのか」



 「もう少しで魔神の一人に会えるな」



 「絶対倒す」



 アリアとマリトの余裕を羨ましく思いながら、わたしも頬を叩いて、気合を入れる。



 「最初の魔神の特徴は___きゃあっ!?」



 エリナが何かを言いかけた瞬間、馬車が大きく揺れた。



 あまりの強い揺れに、わたしは椅子から転げ落ちてしまった。



 「な、なにっ!?なにが起きているの?」



 「連日の魔王による天変地異かなっ?まさか、ここで起こってしまうなんて......っ」



 「いつもより、大きい地震だ」



 「ルリカ!」



 アリアがなぜか、わたしの声を呼んで、床に倒れていたところを助けてくれた。そして、わたしをぎゅっと抱きしめた。



 「えっ!?どうしたの?」



 「......ルリカ、地震怖いだろ?」



 「っ......!!」



 アリアは覚えてくれていたんだ。わたしが地震苦手だということ。



 わたしとアリアは幼馴染で、いつも一緒にいた。だからこそ、秘密を打ち明けることもいっぱいあって、小さい頃に地震が苦手だということを話したことがある。



 でも、それを覚えていてくれたなんて。



 正直にいうと、本当に震えが止まらなくて、ずっと怖くて仕方なかった。



 だから、アリアが触れてくれるだけで、一人じゃないんだって思えて、少し、怖い気持ちが軽くなった気がした。



 「ほら、これ、被ってろ」



 アリアはわたしを抱きしめたまま、自分のマントを被せてくれた。



 アリアの優しい、甘い匂いがわたしの鼻をくすぐる。どきどき、する......。



 結局、その日は地震が続き、国を出ることはできなかったのだけれど。ずっと、アリアの匂いに包まれて、わたしはそんなことを気にしている余裕はなかった。



 でも、わたしはまだ気づかなかった。こちらを複雑な表情で見ている人と、楽しそうに見ている人がいることに___。

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