不吉な予兆
「最近、作物の値段が上がってねぇか?」
「そうよねぇ。高くて嫌になっちゃう。しかも、災害も多発しているし、魔物の動きも活発になっているって言うじゃない」
そんな会話が聞こえたのは、勇者ルリアの死から、さらに二週間経ったときだった。
作物が高くなり、災害が多発、魔物の動きが活発に___。
どれも、魔王が本格的に動き出したときの予兆に当てはまっている。
そろそろ、魔王が侵略を始める用意をしているのかもしれない。だとしたら、相当大変なことになる。
勇者がいない今、魔王を倒す術はない。そのため、大規模な戦争になる可能性が高いのだ。
こういうとき、ルリアは必ず被害情報を詳しく聞き出す。
わたしも、せめて、少しでも役に立てるようなことがしたい。そう思うと、話を聞かないわけにはいかなかった。
「あの。最近の出来事について、少し、お話をうかがってもいいですか」
「えっ.....?」
四十代後半に見える女性は急に話しかけられて驚いたのか、戸惑った声を出す。
「え、えっと。わたしたちの知っていることで良ければですけれど」
「全然大丈夫です。知っている範囲で詳細にお願いします」
わたしが頼むと、女性は少し、話すのを躊躇してから、重苦しい声で話し始めた。
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えっと、まずどこから話そうかしら。そうねぇ、一ヶ月前のことから話します。
わたしたちはここの街の出身ではなく、もっともっと、小さい田舎の村の出身で。
最近、この街に引っ越してきたのです。もとの村はとてものどかで、食事がおいしい場所でしたわ。
まぁ、その話は置いておくとして。
”異変”を感じたのは一ヶ月前のことです。
最初は些細なものでした。作物の値段が高騰していたのです。
ですが、高騰といえるほどの値上がりではありませんでした。
どのくらい?ええっと......野菜が金貨5枚から7枚に上がったのだったかしら。
そうなんです。本当に些細で、小さい値上がりだったんです。
最初は、「少し上がったかも」ぐらいにしか思っていなくて、普通に過ごしていたのですが......。
また、変化を感じたのはそこから二週間ほど、経ったときのことです。
魔物の動きが活発になり始めたのです。この期間だけで魔物によってお亡くなりになられてしまった方々の話を、何人も聞きました。
そのためか、長は、魔物を倒せるスキルがある者以外は、森に出かけてはいけないというお触れを出しました。
なぜ、魔物の動きが活発になったのだろうと、さすがにそのときは不安に感じました。主人とも、何かあったのかもしれないと話をしました。
そして、最後に変化を感じたのは、またさらに一週間ほど経ったときでした。
軽い地震が起こるようになったんです。それも、何度も。
みな、恐怖に震えているのがわかりました。今まで、地震なんて、起こったことがなかったんですもの。
地震が起きたりしたせいか、今度は天気も荒れ狂い始めました。
雨が極端に降らなかったり、逆に嵐が来たり。
そんな天気ではもちろん、作物なんて育つわけがありません。そのため、作物は庶民じゃ手が届かないほどに高くなりました。
ええ、ええ。今度は金貨15枚ぐらいになってしまったんです。
わたしが話せるのはこのくらいですけれど。お役に立てれば幸いです。




