表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

冬に待つ

作者: 山羊ノ宮

私は駅の改札口で白い息を吐いていた。

「遅いなぁ、まだかなぁ」

電車が停車する度に、彼がいないかと目を皿のようにしてみるが、まだ彼の姿は見えない。

もうかれこれ二時間は待っている。

我ながらよくやるなと思いながらも、また手に息を吐き温める。

彼に会えると思うと嬉しくて、ついおしゃれして丈の短いスカートをはいてきたのだが、それが間違いだった。

腰が冷えて、痛い。

しかも上からコートを着るので、スカートが隠れて見えない。

失敗したなぁっと思いながらも、もし彼に『今日は冷えるから、ちょっと何処かによってこうか?』と誘われでもしたら・・・

きゃ~、きゃ~、何処に連れていくの?

まだ心の準備が!!!

いや、本当はできているけど・・・やさしくしてね♡

うん、やっぱり見えなくてもおしゃれは大切だよね。

「あっ、彼だ」

私が馬鹿な妄想をしていると、彼が電車から降りてきた。

このところ残業続きなのだろうか。

疲れた表情をしている。

重い足取りで一歩、また一歩と私の方へ近づいてくる。

どうしよう、気付いてくれるかなぁ?

私の胸は期待と不安でいっぱいになって、張り裂けそうだった。

彼は改札機にカードをかざし、こちらへ来る。

うわぁ、気付いちゃったか、胸のドキドキが止まんないよぉ。

そして、彼は何食わぬ顔で私の前を通り過ぎ、家へと向かった。

私は彼の後ろ姿に胸をなでおろす。

「よかった~」

そして、安堵の息を吐く。

彼に気付かれなかったのは残念だけれど、今の関係が崩れてしまうんじゃないかという不安はぬぐい去られた。

ストーカー歴三年。

明日もまた私は待ち続ける。

いつか彼が私に恋に落ちるその瞬間を。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] えぇー!?(半笑いで) 何だかいじらしい乙女心……。(犯罪です) 不思議なもので、彼が彼女に気付いてくれる日が楽しみでなりません。幸せになっちゃえよ!! みたいな。 ショートショートなら…
[一言] うまいですねえ、この感じ。 途中で「あれあれ?」と思っていたら、まさかの「ストーカー」(笑) 面白かったっす。
[良い点] なぜだか微笑ましい。 [一言] 山羊の宮さん、冬に待つ、作品読ませてもらいました。 ふっと微笑んで頬づえなど・・・ その頬づえが外れしてしまいそうな落とし方・・・ でも、なんかほんのり温っ…
2010/02/04 09:06 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ