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ホホエミの粥

天狼星の町において、

読者はうすうす感づいているかもしれないが、

実は食べるものはほとんどない。

住民が食に頓着しないこともあるし、

食べるという文化自体が、そもそもないのかもしれない。

ただ、住民は電波を浴び、そして、少しだけ粥を食べる。

粥は、ホホエミおばあさんの作っている特製の粥だ。

天狼星の町であまり流通していない、食べ物の材料というものを、

ホホエミは、ガラクタに教わって作っている。

水と、植物の種。

それを鍋でことこと煮込んでとろとろにしたもの。

そこに、ホホエミの祈りをひとつ。

こうして、天狼星の町で、ほぼ唯一の食べ物は作られている。


電気街中心は、ホホエミの粥に関しては、

制約も何も設けていないし、

電気の配給の制限すらない。

ホホエミは、みんなと同じようにとお願いしたが、

中心のほうが、こればかりは折れなかった。

唯一の食べ物。それは命そのものである。

命を取り締まる法を、中心は持っていない。

そんな言い分だった。

ホホエミは困ったが、みんなのためと、一生懸命粥を作る。

それで恩返しをしようと決めた。


電気が鍋を温め、

ホホエミは今日も粥を作る。

粥を必要とするのは、疲れたり、お腹がすいたり、

そういう、人であることを忘れていない人たちなんだと、

ホホエミはそう思う。

だから、ホホエミは鍋に祈りをささげる。

植物の種に祈りをささげる。

水に祈りをささげる。

すべてのホホエミの祈りは、人である住人のため。

人を超えた存在とかでなく、人のためにホホエミは祈る。


ホホエミの粥はみんなのために。

ホホエミは、天狼星の町の一角で、唯一の食べ物を作っている。

人が人であるために。

命を正しくつなげるために。

人は電波のみで生きているのではない。

世界はとても複雑かもしれない。

ホホエミが思う以上に、天狼星の町は複雑なんだろう。

でも、ホホエミは思う。

人が人であるためには、そんなに複雑なものは要らないのかもしれない、と。

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