第一話:異世界で歌ってみた
あなたは異世界×音楽(歌)という作品に触れた事はありますか?
初めまして、こじめんと申します。
私自身も異世界転生シリーズが昔から好きで良く漫画やアニメで目を通してきたのですが、中々このジャンルに出会う事はありませんでした。
なので、そんな物が無いのなら自分で作れば良い!と思い、本作品を企画して書き始めました。
また本作品は実話と妄想を掛け合わせた内容となっております。
と言うのも、自分が過去に経験した音楽と好きな異世界転生物を掛け合わせたら自分唯一の面白い話が書ける!そんな事を思い、作らせて頂きました。
私自身も含め、新たなジャンルの異世界物語へどっぷり浸かっていってください。
「悪く無いんだけどね〜」
この言葉を何回聞いただろう。
今年で27歳の俺、大鳥翔太はオーディション会場でいかにも偉いであろう事務所のプロデューサーらしき人に言われた一言。
っと言うか何している人なの?とまず聞きたくたるだろう。
だから少し俺のプロフィールを教えとく。
俺は一流アーティストを日々夢見て活動しているまだ卵のシンガーソングライターだ!って言うと響きは良いのだが、要は売れないミュージシャンだ。
小さい頃から人とコミュニケーションを取るのが苦手だったのだが、学生時代に友人とカラオケに行った時、「歌が上手い」と言われた事が嬉しくてもっと上手くなりたい!って感じたのが確かきっかけだったと思う。
そこからはバンド組んだり、ソロに転向したりしてライブ活動やCD作ったりして音楽で食っていくために色々やってきた。
また活動の一環として、オーディションに参加してグランプリを取る事で即メジャーデビューの1発逆転を狙っていた。
今日もそのオーディションの1つだ!って誰に言ってんだってのはよそう。
時を戻すが、その際に言われた「悪くない」についてだが、一見良さそうな評価にも見えるが、蓋を開いてみると他にもそんな奴ら沢山いるって意味にもなる。
要はダメだって事だ。
今日も自己評価の時点で良くないオーディションを終えて帰宅して速攻、冷蔵庫を開き缶ビールを開けて自己反省会をする。
ここ数年のルーティンになり始めてるのが正直怖い。
動画に出したらとてもではないが再生数なんてとても伸び無さそう。
「音楽やり続けて芽が出ず早10年、そろそろ潮時かもなぁ」
自然と勝手に呟いていた。
27歳にもなると、同年の知人友人達は結婚して家庭を築いていたり、仕事で役職なんかついたりする人も少なくなかった。
そんな中俺は売れないミュージシャン…
考えたくなくてもふと考えてしまう。
そんなことを思いふけって晩酌をしていると、いつの間にか酒が切れていたので、おぼつかない足を抱え近くのコンビニまで歩いていく。
深夜の夜道は人気が無くて好きだ。
…なんて陰キャで厨二な発想をしてコンビニ手前のT字路の曲がり角を曲がろうとした時だった。
突然曲がり角側から大型のトラックが飛び出してこっちに勢いがかって向かってきた。
俺は避けようと必死に頭を回転させるが、その時にはもう既に目の前がトラックで視界が遮られていた。
そして今までの俺の生い立ちが、いわゆる走馬灯として頭の中に流れ始めて次の瞬間、意識が途絶えた。
ああ、俺はトラックに轢かれたのか。
まさかロックスターと同い年で死ぬ事になるなんてなぁ。
ただ俺は彼らと違って何事も成さずに逝ってしまうだろうが。
ああ、悔しい。
もしかしたらこの先、希望は薄かったかもしれないが、何かのきっかけでSNSとかでバズったりして、人気が出る時が来るかもしれなかったのに。
なんて真っ暗な視界と言うべきなのか、朦朧とした意識の中、死ぬ直前の思考回路が巡っていた時、一筋の光みたいなのもが現れ始めた。
多分夢の中の世界みたいなものなのだろう。
最後の力を振り絞りその光に手を翳してみると、光はどんどん近づいていき、とても目なんか開けてられないくらい眩しく一瞬目を閉じた。
瞬きをしながらゆっくり目を開いてみると、あたりは何もかもが眩く、まるで暖色ライトの様な光に包まれていた。
いつの間にか痛みも引いていた。
感覚がもう無くなってたのかもしれないが。
「魂の彷徨いし者よ」
心地良い響きの美しい声が囁いた。
この声の持ち主は何処から聞こえたのが探してみると、「こちらよ」と後ろからまた綺麗な声が続いたので振り返ってみる。
すると世にも見たことのない、他に表現する言い回しが俺には無いのが残念だが、光り輝いた今までに見たことが無い絶世の美女を目の当たりにした。
アイドルとか女優を女性のトップとするのなら、そのもう一段階上のランクなのだろう。
そしてモデル顔負けの抜群のプロポーション、普通に惚れない訳が無い。
多分、空いた口が塞がらない状態であろう俺を見て、その美女は何故か申し訳無さそうにこちらを見つめ、思いがけない第一声が放たれた。
「すまない!其方は本来、まだ死ぬべき人間では無かったのだがこちらの不手際によってこちらの世界へ招いてしまった!」といきなり頭を下げてきた。
「はい?」っと咄嗟に漏れてしまった俺だったが、すぐにさっきのトラックに轢かれたことで俺は死んだのかと納得する。
そしてこの展開、アニメでも見たことのある様な光景から俺は推測し、「えっと、貴方は神様なのでしょうか?」と質問すると、
「あ、ああ。そう私は慈愛の女神、ヴィーナスだ!自己紹介が忘れていた。と言うか、普段なら絶対に死した者でも謁見出来ぬ最高神よ」
とさっきまでの取り乱した様子から、いかにも私が女神です!と言わんばかりの自信に満ち溢れた持ち様でこちらを見つめ直す。
自分で最高神って言うか?あとめちゃくちゃ態度変わったな!
なんて考えていたらヴィーナスが続ける。
「繰り返しになるが、こちらの不手際によって其方は死者となった為、この度この謁見の場を作った」
「なるほど」と俺は頷く。
そして「じゃあここは天国なのでしょうか?」と話を続けると、ヴィーナスは「ちょっと違うな」と返答する。
「と言いますと?」と問うと、ヴィーナスは誇らしげに語ってくる。
「ここは死した者が来る黄泉の世界、この場でお主ら魂がこの後どの様に過ごして行くか判決される場所である」
となると、もしかしてこの展開はまさか!
と考えていたら、「そのまさかだ」とヴィーナスが心を読んだかの様に答える。
いやきっと読まれてる。
陰口言ってたことも聞かれてたか?と焦る俺に対してヴィーナスは怒ることもせず、その綺麗な容姿のまま淡々と続ける。
「お詫びと言っては何だが、第二の人生を其方には歩んで貰いたいと思っておる。其方が元々生きていた世界に蘇生させてしまうとややこしくなるからな、別世界でも良いか?」
とヴィーナス問いを投げて来たので、勿論YES!と俺が答えると、「そうか」とヴィーナスが笑顔を向ける。
めちゃくちゃ可愛いなおい!一世一代の告白しようかなマジで。
異世界でもあんなヒロインみたいな子いるかな?なんて思っていると、
「ではこれから其方にはスキルの世界、グランバザルへ転生を施す!覚悟は良いか?」とヴィーナスがさっきの笑顔がまるで嘘の様な出会った時の真剣な表情で尋ねる。
俺は「勿論です!宜しくお願いします!」と言うと、ヴィーナスが魔法?的なもので俺の足元に術式が出現した。
次の瞬間辺りが更に真っ白になったので、俺は「あれ、肝心のスキルは?」と焦っていると、
もう真っ白で何も見えないがヴィーナスの綺麗な声が「それは既にこちらで用意しといた。すまぬが異世界に着いたら確認してくれ。私も忙しいのでな」と聞こえた。
「そのスキルが醍醐味なのに!今教えてくれないの⁉︎」と尋ねたが、虚しく声は既に届いていなかった模様。
その後すぐに眠気に襲われて意識が無くなった。
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目を覚ますと、さっきまでの一色の景観ではなく、そこは今まで俺がゲームやアニメ等で見てきた景色そのもので、辺りは緑の草原に覆われ、空は雲一つない快晴だった。
よく目を凝らすと遠方には、日本には絶対ないまるでシン○レラ城の上位互換みたいなのが佇んでいるので、確実に俺が今まで生きてきた国では無い事だけは分かった。
「ここが女神の言ってたスキルの世界、グランバザルか!」とワクワクが止まらない気持ちでいっぱいだ。
正直死んでしまった事に後悔は無いか?と問われると嘘になるけど、小さな頃から憧れでもあったオープンワールドを生で体感出来るのはやっぱり一味二味どころではない。
「さて、あのせっかちな女神から用意しといたと言われるスキルだが、どうやって確認するんだ?メニューとか言えば表示されんのかな?」
そう思った事をつい口に出してしまい、辺りに誰もいないことに安堵して「メニュー」と叫んでみる。
すると、呆気なくメニュー画面の様なものが目の前に突然として現れた。
こんなシーン、アニメでも良く観たことはあるが、実際に自分が受ける側となると驚きもする。後、大声で叫ぶのちょっと気恥ずかしい。
そんなことを思いつつ、メニュー画面から自分のプロフィールを確認していくと、モ○ハンの初期設定の様に全裸状態の俺が映し出され、その周りに詳細が記されていた。
「姿形は転生前と同じなのかよ!」
そうツッコミを入れながら周りの情報に目を通していく。
「何々、大鳥翔太27歳男性っと…基本情報はあんま変わんないんだな。なんか転生って言うからてっきり人生やり直すものかと」と思った事を口に出して、
「ジョブは…まだ決まって無いのか。」と続ける。
「ん?装備とかの表示もあるぞ。ますますゲームっぽさに強みが増したな。どれどれ、装備はテ○リスのTシャツにハワイ風の短パンっておい!これ普段から着てた根巻きじゃねーか!」
独りツッコミを放ってすぐ様メニュー画面から自分の身なりを確認すると、死ぬ直前まで来ていた慣れ親しんだ服装が身に纏われていた。
これを装備と評している画面に一瞬イラつきはしたが、前世から持ってこれた貴重なものと考えれば良いかと思い直した。
「そうだ!肝心なスキルを確認しないと」と再びプロフィールに目線を戻すと、固有スキル【マイク】と言うものが1つと翻訳、アイテムボックスと鑑定とこれまた定番のスキルがつけられていた。
下三つは必要不可欠な便利スキルなのは分かるが、この【マイク】ってのが気になるし、俺が無類の歌好きみたいに女神から思われてることに腹が立つ。
もっと勇者みたいな双剣!とか、いかにも転生者ですよ!みたいなスキルがどうせなら良かった。
そんなことを思いながら固有スキル【マイク】と叫んでみると、手元に金ピカに光り輝くマイクが手元に出現した。
「本当にマイクだよ!これでどうこの世界で渡り合って行けばいんだよ!」
嘆いても誰も助けてはくれないので、マイクの設計を詳細に確認していくも、スイッチON OFFのあるカラオケとかに置いてあるやつとなんら変わらない。
後、金のマイクはなんか成金感が増しててなんか嫌だなと思った。
試しに使ってみるかと思いマイクをONに切り替え、声出ししてみても普通に音が発生する唯のマイクだ。
すると突然、草原に潜んでいたのか、俺が元いた世界では絶対見たことの無い、しかしアニメでは幾度も見たスライムが数体、俺の目の前に現れた。
青く透明でまんまるのお椀型クッションの様な佇まいでいる。
何事かと思い後退りするが、すかさず当のモンスターを鑑定する。
【スライム】
レベル1
HP 5
MP 5
〔装備〕無し
固有スキル【消化吸収】
いかにもスライムなステータスだなーと感心している俺の気持ちなどつゆ知らず、スライム達はさらに距離を詰めくる。
「やっぱり冒険のチュートリアル的な存在なのね。いや感心してる場合じゃない!戦わないと!」
俺は更に後退しながらアイテムボックスを開き、藁にも縋る思いで中身を見るが、そりゃそうだ。
何も入っている訳が無い。
次に辺りを見渡し、武器になりそうな物は無いかと探していると、近くに木の枝があったのでつかさず手にして鑑定する。
【その辺の木の枝】
レア度 1
叩くとすぐ折れる
その辺を見渡せばどこでも見つかる
「舐めてんのか!色々情報が雑過ぎだし、最早バカにしてんだろ!」
怒りの勢いで一体のスライムに投げつけるが、傷つくどころか体内に取り込んでみるみる消化されてくところを見てゾッとした。
これがこいつの固有スキル【消化吸収】、リアルで見るとなかなかグロいのな。
これもアニメ知識だったが、スライムは雑食で色んな物を溶かして養分にするらしい。
もしその能力が俺にも通ずるのなら…
いやその先は想像しないでおこう。
「やっぱ武器になりそうなのは…」
と手元のマイクを鑑定し、絶句する。
固有スキル【マイク】
レア度 測定不能
声出しする事で周辺の魔物を呼び寄せる
歌い方を変えることで様々な効果が⁉︎
「まじかよ。なにが悲しくてモンスター相手に歌わなくちゃいけないんだよ!」と本音を訴える。
ただ攻撃方法は分かった。
幸い周りに人はいないから恥もないから、思い切り歌い尽くしてやる!そう決心して前世で自分が世に出してきた曲を歌ってみる。
「きっと〜 きっと〜 何も変わらない〜」
と試しにゆったりした曲のサビを歌い出してみると、スライム軍勢の動きが止まった。
「これは…!俺が歌ったから止まったんだよな」
そう言いながら停止状態のスライムを鑑定すると、【魅了】と記載されている。
もしかしてだけど俺の歌にモンスターが聴き入っている状態なのか?と言うかそんな状態や素振り、前の世界では全然無かったのに!と少し落胆する。
心なしかスライム達が喜んでいる様に左右に揺れてる。
「とりあえず牽制はできてるけど、こっから攻撃どうすんだ?」と悩みながら続きを歌い始めるが、特に変わらず現状維持だ。
多分歌い方を変えないとこのままの状態が永遠と続くだけなんだろうな。
「ならこれはどうだ!」と違う曲を歌い始める。
「君が見ている〜 景色に僕はただ〜」とハイトーンを繰り出してみた。
するとさっきまで【魅了】されていたスライム達が悪寒みたいに小刻みに震え出した。
状態を確認すると、さっきとは真逆の【不快】と表示されている。
それを見て俺もちょっと不快だった。
歌って不快に思われてる感じがなんか嫌だ。
下手なのかな?って思わされる。
「モスキート音みたいな感覚なのかな。てゆうか、これも攻撃じゃねーし!」
さっきから足止めはできつつも、肝心となる決め手の攻撃が決まらない。
でもなんとなく歌っている声の質感で想像される効果が目に見えている。
「だったらこれならいけるはず!」と前2曲とはかけ離れた1曲と言うか、全身全霊の雄叫びをあげた。
「ヴォーーーーーッ」っとドスの効いた濁声を浴びせた。
そう、デスボイスというかシャウトだ。
過去にたまたま誘われたメタル系バンドが活かせたことに今初めて感謝してる。
あの時は全く出せずに苦悩してたからなんか報われた感じだ。
すると重低音が効いたのか目の前のスライム達が内部がボコボコ沸騰した感じに膨らんで、弾け飛んだ。
「これなら攻撃出来ると思ったんだよなー」とスカッとした気分になった。
まあ少し可哀想だったなとも同時に思ったけど。
その直後、急に吐き気や頭痛に苛まれた。
何が起こったのかわからず、すかさず自分のステータスを確認すると、HPの下にMPがに削られていることに気づいた。
「なるほどな。さっきのは魔法みたいなものでマジックポイントが消費されたのか。」
捨て台詞みたいにそれだけ言い残し、目の前が真っ暗になり、その場で倒れた。
【ステータス】
大鳥翔太
男性
27歳
レベル1→2
HP 10→20
MP 10→20
〔装備〕
兜:無し
腕:無し
鎧:テ○リスのTシャツ
脚:ハワイ風の短パン
靴:クロックス
固有スキル【マイク】
・ボイス
→相手を魅了状態にする
・ハイトーンボイス
→相手を不快状態にする
・デスボイス
→相手の体内を徐々に破壊する
ご拝読頂きました皆様、本当にありがとうございます。
異世界×音楽(歌)との掛け合わせまたまだ始まったばかりですが、いかがだったでしょうか?
そもそも私自身も小説を書く事自体は本作品が初めてであり、それ以前は働きながらミュージシャンをやっていたので、実は本作品の主人公のモデルは自分自身に当てているのです。
この作品が何処まで書けるかは僕自身にも未だ見えないのが実態なのですが、話のゴールは頭に据えているので、そこまでの道のりをできる限り皆様に楽しんで頂ける様に描いて行けたら!と思います。
かなりのローペースでの更新になるかもしれませんが、これからどうぞよろしくお願いします。
※本文に出てきた歌詞表現は過去に音楽活動で私自身が作詞した物であり、著作した物ではありません。