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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ゴキブリウイルス

作者: ヒロモト

「チャバネィ!?チャバネーーーイ!」


今日。私の親友のチャバネィが死んだ。最近蔓延する謎のウイルス『G』によって。

オシダマサノリの部屋は汚くて食べ物がそこら中に転がっている我々ゴキブリにとってユートピアだと思っていたのに。


「マサノリ!あんたいい加減働きなさいよ!」


「るっせえ!ババア!」


「せめてゴキブリだらけの部屋を掃除しな!このニートが!」


「うるさいうるさいうるさい!」


マサノリは我々にとってエンジェルだが、その母のノリコはデビルだ。

スリッパを巧みに操り我々を叩き殺す。

何度同士が内蔵をぶちまける姿を見たことか。


「ローチ。巣籠もりの時が来たぞ」


コック村長が『外出禁止令』を宣言した。

これにより我々100匹のゴキブリ達は巣から出られなくなった。


外出禁止令から半年。冬が来た。

ゴキブリ達は体を寄せあって暖を取る。だが食事をしていないので寒い。

Gウイルスの感染者は減ってきていたが、皆の不満は増えた。

狭い巣に2800匹のゴキブリがひとかたまりになっているので無理はない。

子供達の中には外の世界を知らない世代も出てきた。


「……ウヴェェ」


「感染者だぁぁ!」


外出禁止令を破り外に出たゴキブリが帰ってくるなり仰向けに倒れた。

Gウイルスは以前よりも進化している。


「……霧」


そう言い残し彼は死んだ。


「我が名はネオ」


外の世界からやって来た彼は『ウイルスの効かないゴキブリ』を名乗り村に多くの食料をもたらした。

彼のおかげでゴキブリ達は1万匹を越えようとしていた。

早急に巣の拡大が必要だ。地上に出なくては。


「今は地上にノリコはいない。地上には『ノア』と呼ばれるウイルスの無い世界がある。そこへ行こう!」


ネオの指示に従い選ばれた精鋭の我々はビニール袋の中に入り地上に出た。

前衛部隊は前進し、後衛部隊は袋の口を閉じる。

外の世界は霧に包まれていた。


「ここは霧が薄い。皆!ノアまで後少しだ!」


素晴らしい香りがする。我慢出来ずに全員袋から出て『ノア』に向かう。

ノアは素晴らしい場所だった。たくさんの食べ物。

快適な暖かさ……。


「うっ!?」


「お目覚めかい?」


「ネオ!?」


体が動かない。苦しい。熱い。何だ?仲間たちがぎゅうぎゅう詰めになっているのか?


「覚えているか?」


ネオの正体は『ワモン』かつては仲間だった男。

俺たちは昨年の冬。以前いた巣で彼の家族を食った。食料不足だったんだ。仕方ない。


「俺は多くの地獄を見てウイルスの効かない『ネオ』となった」


おのれ。ワモン。無念だが俺が死んでも万を越える仲間たちが……。


「うわっ!すごいな!ゴキブリフォイフォイ。気持ちわりぃ!」


マサノリか!?何故だ!お前は俺たちの味方じゃ……。


「母ちゃんを楽させないとなぁ」


「ハッハッハッ」


ワモンは本棚の隙間に隠れて俺たちを見ていた。


「いいか?」


Gウイルスの正体はノリコの作った『ホウ酸団子』。

霧の正体はヴァルサーン。ノアはゴキブリフォイフォイ。

マサノリは『新生活』の為に部屋を綺麗にする事に決めた。

病気で倒れたノリコの為に……。


「そろそろ『ギョウシャ』が来る。終わりの始まりだ……全滅だよ。お前らは」


「おのれ!アモォォォォオン!!」


フォイフォイごとゴミ箱に棄てられ足で踏まれ潰された。


春が来た。


「行ってきます」


「いってらっしゃい!」


ノリコがマサノリを見送る。今日は彼の初出勤だ。


「あの子ももう安心ね。あら!ゴキブリ!」


ノリコはスリッパでゴキブリを叩いて殺した。


それはこの部屋最後のゴキブリ。ワモンだった。







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