☆99話 忙しない挨拶、赤髪美人のインストラクター達、ストレッチのお手本
※2023/10/16文末に美鼓心菜のイラストを追加しました!
※イラストが苦手な方はスルーで!
土曜日、峰子さんのお父さんが経営するジム、プラチナジムにやって来た。
ただ、現地集合の1時間前は流石に早過ぎた。
「それにしても……立派な建物だな……」
4階建のビル丸々がジムで、プールにサウナ、食事処も完備だそう。
外観を眺めるのもそこそこに、中で待ってる筈の峰子さんと、先に合流するのもありだ。
「積木くんリーダーうにー」
「あ、美鼓さん。おはようございます」
「来んの早くない」
「クラスリーダーが遅れたらアレなんで」
「さっすがー」
ツンツンと肩を突いて来る美鼓さん。
流石と言わんばかりに私服でもかなりアーティスティックだ。
キャップ姿に色彩鮮やかなオーバーシャツ。
左右色も長さも異なるタイツ。
ごちゃ混ぜのペンキを被った様なスポーツバック。
暖色系統が散りばめられた独創的な長髪も、一本束に纏めて背中に流してる。
「あ! 2人ともおはよう! 早いね!」
「鈴木さん、おはようございます」
「うにー今日もダイナミックな揺れ具合じゃん」
「もうー……揺れたくないのにー! 大きいのって本当にヤダー!」
声を大にコンプレックスを切実に口にした鈴木さんは、確かに揺れが凄い。
峰子さん級とまではいかずとも、上位級に君臨してるのは間違いない。
ボーダーに白パンのシンプルコーデ。
デコだしスカイブルーのセミロングヘアーも平常運転だ。
「おはよう」
「馬蝶林さん、おは……あ、あの、今日は私服でも良かったんですよ?」
「学生である以上、外出時は制服が適切よ」
「風紀員の鏡だね!」
「てか、着替えは持って来てる?」
「えぇ、この通りバッグの中……妹の体育バッグだわ、これ」
明らかに2サイズ小さい体操服は、流石に着れないなと思ってる矢先。
僅かばかりの可能性を信じ、シャツのボタンを外し着替えようとしてた。
鈴木さんが全力で止めたお陰で、公衆の面前でのゲリラお着替えは回避。
「れ、レンタルウェアもあるそうですから、大丈夫ですよ」
「そうね、今回はお言葉に甘えるとして、次からは気を付けるわ」
何事もなくボタンを閉め直す馬蝶林さん。
ライムミントのストレートロングがお団子状態で、やる気は充分伝わってる。
忙しない挨拶の中、ジムの出入り口からインストラクターコーデの峰子さんが姿を見せた。
「お、卓球チームが1番乗りか」
「おはようございます峰子さん」
「おはよ!」
「おはよう」
「うにー義刃さん」
「峰子でいいぞ」
「じゃ、峰っ子さんで」
やっぱり生天目さんと似た者同士なだけあって、呼び方センスが似てる美鼓さんだった。
♢♢♢♢
着替え終え、団体用スペースに来るも、美鼓さん達の姿はまだ無かった。
待ち時間の有効活用で、先に準備運動を済ませれば、フォロー側の峰子さんの手伝いにもなるだろうから、善は急げだ。
準備運動がてらジム内を見渡すも、団体用なのもあって設備が充実だ。
ランニングマシンやエアロバイクを始め、数十種ものトレーニング器具。
そして赤髪ショートのスレンダー美人インストラクターが目の前で屈んでる。
「って、しゅーちゃん?!」
「えへへ……びっくりした?」
どうやら峰子さんから話を聞き、インストラクターとして来てくれたそうだ。
インストラクターコーデだから尚分かる、引き締まったスレンダー体型は、まさにモデル顔負けだ。
そのまま僕の準備体操をサポートするしゅーちゃんは、これでもかと言わんばかりに密着。
詰み体質で不本意ながら人一倍、異性の身体に触れてしまう機会が多い。
いつになっても平常心を保つのが難しいと、柔らかい感触に意識を持っていかれながら実感してる。
「お、東海の会長さんだ」
「本当だ! こんにちは!」
「何故にインストラクターの格好なのかしら……もしや、とても似ている別人?」
美鼓さん達にあれやこれや詮索される前に、僕らが幼馴染であると簡潔に説明。
花嫁話は抜きで。
3人も混ざって準備運動を再開してると、峰子さんと一緒にもう1人インストラクターがやって来た。
「義刃蘭華です。姉様の右腕として全力でサポートします」
「という事だ。遠慮なく頼ってくれ」
「貴方は確か、西女の義刃蘭華さんよね。苗字も背格好も雰囲気も、峰子さんに似てるなんて不思議ね」
「姉様とは双子ですので」
「ほわー! 最強の双子って事だね!」
「ほへー」
「ふ、双子だとは想像出来ませんでした」
今にも膝から崩れ落ちそうな馬蝶林さんは、ちょっとだけ抜けてる真面目さんだと、僕らはそう思った。
♢♢♢♢
一足早い準備運動後、続々とクラスメイトが集い、集合時間前には全員が集まった。
元々僕を含めてクラスに男子が5人しかいない中、唯一この場にいる同性が僕と青柳君だけ。
普段の高校生活とは違う、男女比環境の詰み場を、青柳君と無事に乗り切らないと。
「では、卓球チーム以外は蘭華と秋子に従って、準備運動を始めてくれ」
「承りましたわ姉様」
「終わり次第合流する」
「あぁ。頼んだぞ2人とも」
クラスリーダーの存在感が薄くなる程、峰子さんの指揮力は流石としか言いようがない。
一旦しゅーちゃん達と離れ、峰子さんと移動して来たのは、ランニングマシンとエアロバイクのある場所だった。
「まず30分間、有酸素運動で体を温めつつ、基礎体力を付ける」
「えっと、どっちでもいいのかな?」
「好きな方でいいぞ」
「やっぴーランニング一択」
「私はバイクがいいわね」
「揺れの心配ないバイクで!」
「洋はどうする?」
ランニングマシンなら、愛実さんと一緒にジョギングする時の練習にもなるから、答えは決まってる。
「ランニングマシンにします」
「分かった。丁度2対2なのも都合が良い」
基礎体力付けなら、会話を交わせる運動強度が適切だそうだ。
どんな事でも、無理に酷使して嫌になるより、自分が出来る範囲で継続するのが大事だ。
それぞれ使い方を教わり、30分のタイマーがスタートした。
「へっほへっほ。進まないって変な感じ」
「ですね。まだまだ外は暑いですし、快適な室内の方が続けられそうですね」
「ホント、ジムはインドア派の味方。モニターで動画も見放題だし、分からなかったら聞けるし、最強過ぎるじゃん」
「まぁ、外は外なりの良さはありますけどね」
それから僕と美鼓さんは、最近どんな動画を見てるか、夏休み何をしてたかと、何気ない会話を交えた。
うっすらと汗を掻いて来た頃合い、美鼓さんがあの話題を振って来た。
「そういえば壱良木パイセンと同盟だっけ。あれ、どうなってんの?」
「今のところ怪しい動きはないですね。情報提供してくれてますし、随時情報も更新されてるので、中々纏めるのが大変ですけど」
「お疲れ山ーあ。ワタシもとっておきの情報入手方法思い付いちゃった」
「へ?」
急に何を言い出したかと思えば、きょろきょろ見渡し峰子さんを手招いてた。
「ねぇ峰っ子さん」
「どうした心菜」
「あんさ? 自分達でもストレッチ出来るように、ストレッチ動画を残して共有したいんだけど、お手本になってくんない?」
「勿論構わないが、心菜が撮ってくれるのか?」
「んや、積木くんリーダーが」
「え」
「分かった。バイクが終わり次第撮ろう」
間抜けなリアクションの僕を一目見て、ポッと頬を染めた峰子さんが離れていった。
「ちょ、ちょっと美鼓さん? 動画撮影と情報入手と何が関係あるんですか?」
「まぁまぁまぁ、今に分かるから。へへ」
僕の肩をぽんぽんして微笑みかける美鼓さん。
峰子さんのストレッチ動画で、どんなとっておきの情報が入手できるのか、全く見当がつかない。




