92話 負け戦詰み、魅力の一言じゃ足りない、パーフェクト身体魅力、主人公クイズ
身体魅力の1人目に、対面状態で跨り座りされてる。
時貞さんの誘導アシストされる前に、1番安牌な腕に触れないと。
対面状態なら両手を広げ、前へ閉じていけば、最初に触れるのが腕になる。
脳内シミュレーション通りに動き、腕に触れるだろう範囲に踏み込んだ僕は、確かに触れた。
触れ心地が病み付きになりそうな、温かで柔らかい感触を。
これは明らかに腕の感触じゃない。
詰み経験で幾度となく触れた、胸埋めと同じ感触だ。
いくら対面状態でも、胸に触れるなんておかしい。
何か重要な見落としがある。
数秒にも満たない静止の末、ハッと気付いた。
そもそもの話、相手が動かないルールは無いと。
更には僕がどんな動きをするのか、相手に丸分かり。
つまり、どこに触れさせるのも相手の思うがまま。
知りたくなかった事実に、せめて胸以外に触れないのが、敗北者なりの足掻きになる。
とは言え、限りなく生肌に近い感触に、嫌な汗が伝ってる。
スタート前の状況は全員が私服。
夏らしいラフさこそあるも、過度な露出は誰もしていなかった。
恐らく身体魅力なだけあって、必要最低限の着衣物しか身に纏ってない可能性が大いに高い。
もしそうだとしても、この運命からは逃れられないんだ。
ひたすらに胸に触れ続け、体感時間にして1時間。
ポンポンと肩を2度叩かれ、1人目が終了。
水分補給のクールタイムを挟み、2人目も跨り座りして来た。
2人目、張り、弾力、柔さのバランスが抜群な黄金肌、胸の重量が凄まじい。
3人目、引き締まり適度に柔らかい肌、軽く動かすだけでピクンと反応。
4人目、ぷりんと弾ける弾力肌、触れる度くねくね動き落ち着きがなかった。
5人目、ひんやりとスベスベ肌、かなりの細身で程良い肉付き。
6人目、指に吸い付く潤い柔肌、触れる時間が経過する度にしっとり度が増し。
7人目、張り艶が病み付きになる肌、滑らかな触れ心地は一番。
7人分の直感な感想を答え、時貞さんの声が耳元から聞こえた。
「お疲れ様です、マイマスター。アイマスクを取ってもいいそうですよ」
「ほっ……」
視界開放で真っ先に映ったのは、肌艶が増し紅潮する7人美女の姿だった。
既に着替えたのか私服姿で安心した。
「それではマイマスター。新鮮な感触を忘れぬ内に、順位を」
「あ、あの! 順位付けの件ですけど、1・2・3位までじゃダメですか?」
「洋がそうしたいなら構わないが、一応理由を聞いてもいいか?」
「み、皆さんは魅力的な異性で、個性的で、ひとつとして同じ人間がいません。そ、それでも身体を張ってくれ、僕基準の判断を求められてるのなら、せめて上位3人を告げるのが僕に出来る事だと判断したからです」
「なるほどね。洋くんはいつでも優しいね」
「あれだけ頑張ってくれましたし、そもそも魅力の一言じゃ足りませんから」
4種目の魅力じゃ決して足りない、言葉でもきっと足りない、それぐらい一人一人が特別だ。
ただ、時貞さんを除いた全員がもじもじと、熱い視線を向けて、順位発表が言い辛くなった。
「皆さん、そろそろ進めたいのですが」
真面な時貞さんの声で、慌てて平常心を取り戻す僕ら。
時貞さんが冷静に進行してくれるだけで、大助かりだ。
皆に見守られ緊張を隠し切れないまま、順位発表をした。
「えーっと……い、1位から順に、2人目、5人目、7人目です」
「って事は……1位オリヴィアさん、2位暗堂さん、3位水無月さんになりますね」
「ナンバーワン! 緊急参戦でしたが嬉しいです!」
「2位……う、嬉しい……」
「ふむ。自信はあったが3位も悪くないな」
オリヴィアさんが1位だなんて、選んだ僕自身も何故か驚いてる。
「えぇー先程の準備段階での身体情報によりますと、身長体重、スリーサイズ、股下諸々においてもオリヴィアさんがほぼほぼ1位を独占してますね」
「触れても良し、見ても良し、まさにパーフェクト身体魅力だな」
「お陰で目標が出来たね。もっと自分磨きしないと」
「ありゃりゃ~ちょびっと悔しいけど、皆良い身体だから文句無しだよね! それに洋の好みも分かった事だし、いい経験になったね!」
「くぅ……悩殺テクニックさえ使えたら、勝てた筈だよん……もっと精進しないと」
順位付け皆の前向きな反応に、ホッとする自分がいた。
♢♢♢♢
「第2種目の頭脳魅力は名前の通り、頭を使ったものになる」
「そ、そのままですね」
「まぁな。まずは学力だ。ただし年齢にバラ付きがある為、高校1年の前期末テストの結果で順位付けする」
「なるほ……あれ? 僕必要あります?」
「勿論必要だよ」
今ここで学力テストをするならまだしも、過去の学力だ。
結果を見るだけなら、時間は掛からない。
「では、サクッと結果を見てみましょう。どん!」
畳の上に並べられるテストの結果は、一目瞭然で順位が決まった。
「1位オリヴィアさん、2位水無月さん、3位北坂さんと暗堂さんですね」
「2連覇です!」
「ぬ。まさか負けるとは思わなかった」
「自信あったのにぃいい! ぬぎぎぎぎ!」
「オリヴィアさんは難関名門高校を主席で合格し、3年間トップを維持し、名誉生徒にも選ばれたそうです」
「女優もしながら一生懸命頑張りました!」
両立出来るだけで凄いのに、3年間も維持するオリヴィアさんは別格だ。
「ぬぬぬ……流石に相手が悪かったよ……」
「皆凄いね! 私はせいぜい学年上位に食い込むのが限界だったもん!」
「私も頑張って宇津音ーねと同じぐらいだね」
あっという間に学力順位が終わって早々、皆が集まってごにょごにょし始めた。
「一体何を?」
「少々話し合いタイムだそうです」
「話し合い?」
このまま頭脳魅力を進めれば、オリヴィアさん無双になる。
それの相談なのかもしれない。
数分後、話が纏まったのか、手早くセッティングされたテーブルに移動させられた。
「次は頭脳指数テスト、つまりIQテストだったが、話し合いの結果、洋君クイズに変更した」
「ぼ、僕クイズですか?」
「そうです! 積木さんが自身に関する出題全10問を、私達が答えるものです! ふんふん!」
恐らく僕関連のアドバンテージなら、オリヴィアさんに勝てると踏んだに違いない。
だからと言って、出題を簡単なものにはしない。
「で、では1問目。僕が最近ハマってる漫画はなんでしょう」
流行りの連載ものを思い浮かべてるのなら、思う壺だ。
実際ハマってるのは、最近アニメ化が発表された数年前に完結済みのコメディーアクション漫画『山本エブリデイ』だ。
「意外にコアなパンチパンチレボリューションかな?」
「違います」
「ここはあえての王道中の王道、トラゴンボールか?」
「はずれです」
「洋って少年漫画好きだもんね! 無難だけど今流行りのレッドホールドとか読んでるでしょ!」
「ブブー」
コア、王道、流行り。
数え切れない漫画の中から1つ当てるのは、難易度が高かったかもしれない。
「んー……はっ! はい!」
「どうぞオリヴィアさん」
「今度アニメ化する山本エブリデイですか?」
「せ、正解です」
「やりました! 私もアニメ化発表から読んでるんです! 今度語り合いましょう!」
先取点のオリヴィアさんに、皆の顔色も焦りを見せ、集中が物凄く上がってる気がした。




