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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
14章 夏休み最終週
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91話 ブロンド美女とキャラ被り、不可避詰み、触れる21分間の身体魅力

 4種目魅力の準備から早数分。

 オリヴィアさんのお手製アイマスクを着けられ、道場の端で待機中だ。

 聞き取れる限り、準備に手間取ってる感じだ。

 いつ始まるか分からない以上、心構えだけは整えて待機中だ。


「これは何事だよん、洋チン」

「あ、ひーちゃん。実は僕にもサッパリで……」

「そうなのねん?」


 ひーちゃんが来たなら、時間は約束の8時だ。

 

「ところでアイマスク放置プレイなのかい?」

「プレイではないけど、外しちゃダメらしいんだ」

「ほほーん……誰も寄り付いてない今なら、好き放題という訳ねん」

「その代わり宇津姉呼んじゃうけど」

「や、やめとくよん」


 流石のひーちゃんも天敵の根城じゃ、迂闊に手出しできないご様子。

 潔く諦めて隣に座り、身体を軽く預け、肩に頭を乗せて来た。


「そういえば、入れ替わりっ子の皆が来るの知らなかったの?」

「そうねん。まったく……連絡の一つでもして欲しかったよん」


 あくまでも今日は、入れ替わりっ子の4人が決めた事なんだ。

 ひーちゃん達の助力無しで、真っ向から向き合わないと意味がないんだと、4人の気持ちを聞けた今なら分かる。


 それでも関係の深い仲には変わらないから、連絡はしても良かった気がする。


「お! 向日葵! 来てたなら声掛けてよ! 今お茶とか用意するから待ってて! あ、オリヴィアと話し合いするんだっけ? だったら2人分必要だね!」

「お、お構いなく」

「いいのいいの! 気にしないで! ドンとお姉さんに任せて頂戴! 洋ももうちょっと待っててね! 皆、中途半端のままやりたくないから時間掛かっててさ!」

「う、うん」

「その分ご期待に沿える筈だから、それまでお楽しみにね! よーし! もういっちょ一肌脱いじゃうぞー!おー!」


 聴覚だけで宇津姉がどんな顔をしてたのか、どんな動きをしてたのか、手に取るように分かる。


「ねぇ洋チン。オリヴィアさんって、そこで手伝ってるブロンド美女さんなのかよん?」

「そうだけど……やっぱり直接オファーに緊張してる?」

「そっちは平気だよん。ただ……本物を目の当たりして、かなりキャラ被りしてるなーって、つくづく実感しながら嫌な汗が伝ってるのよん」


 2人が隣に並べば、ブロンド美人姉妹として通じると思う。

 ただ当の本人がキャラ被りだと実感してるなら、話は別だ。

 気の利いた言葉を言えるか分からないけど、僕にしか言えない言葉を伝えておきたい。


「上手く言えないかもだけど、境遇とか色んなものは違っても、似てたら気にはなるよね」

「そうだねん。ハーフだから外国人、みたいに一括りになるのは仕方がないけど、キャラ被りは優劣で比べちゃうんだよん」

「オリヴィアさんは若手女優で有名人だから、余計にかもね」

「うん……だから自分が劣化版に見えるんだよん。洋チンもそう思うでしょ?」

「ううん。優劣にしてもキャラ被りにしても、どんな相手だろうと、僕が一緒にいたいのはひーちゃんだから、そうは思わないよ」

「洋チン……」


 比べたくなくても比べてしまう。

 誰しもが経験する事だ。

 割り切って納得するだけで、納得したい訳じゃない。


 それでもその人に寄り添いたい気持ちがあれば、僕は偽善的に思われても構わない。


「なんかあやふやで曖昧な言葉でごめんね」

「そ、そんな事ないよ。誰でもない洋チンの言葉だから、こうして心がホッと安心出来たんだよ? だから、ありがとうだよ洋チン♪」


 嬉しそうにギュッと腕を絡ませ、身体を密着させてきた。

 僕の言葉が正しいか正しくないかは、正直分からない。

 きっと自分のエゴでしかないけど、それでも言わない後悔だけはしたくなかったんだ。


「やっぱり洋チンを好きで良かった♪」

「い、いつもの口調忘れてるけど、いいの?」

「今はイイの♪」


 少なくても今のひーちゃんの声色を聞けば、間違ってなかったって思える。


 ♢♢♢♢


 待ちに待つこと更に数十分。

 準備がようやく整い、道場の中央で椅子に座らされた。

 アイマスクでどうなってるか分からないけど、緊張で空気が張り詰めてるのは分かる。


「長らくお待たせしたね。洋くんも心の準備は出来てる?」

「い、一応は」

「なら安心だ。私達の決意表明をしっかりと受け止めてくれ、洋」

「が、頑張ります」


 ポンと肩に触れた千佳さんと峰子さんも、だ緊張してるのか、手が若干強張った感じがした。

 緊張してるのが僕だけじゃないと分かり、緊張が少し解れた気がする。


「えー第一種目の身体魅力は、アイマスク着用のまま執り行います」

「あ、はい」

「そして聴覚も音を流したイヤホンで封じる」

「み、耳もですか?」


 詰み体質の経験的にも、今回ばかりは不可避詰みだって言ってる。


「肝心の内容だが、各々3分間、洋君に身体を触れて貰い、誰が良かったか順位付けして貰うものだ」

「ふ、触れるんですか?!」

「総意の上だから心配無用だぞ、洋」

「む、むしろ今までの分を含めたら……ふ、触れて貰いたいもん……」


 触れられないなんて言えば、皆の決意表明が台無しになる。

 それだけは絶対避けたいのに、どうしても葛藤してしまう。


「もし触れるのを躊躇えば、時貞さんが誘導アシストするからね」

「という事なので、率先して触れに行って下さい、マイマスター」

「ひゃ、ひゃい」


 計12分間、美女4人の身体に触れる事が決まった。

 乗り越えるには無となり、直感を信じ、順位を付けるのみ。


「あとは勘繰られない為に、宇津音姉さんとオリヴィアさん、向日葵も参加する」

「え」

「よろしくです! ようくん!」

「皆とても良い身体だけど、私もそこそこ自信はあるからね! 洋もきっと納得できると思うよ! ふっふーん!」

「沢山触れて貰えるなんて最高だよん♪ ハァハァ……」


 プラス9分の計21分間に延長。

 始まってすらいないのに、手汗が尋常じゃない。


「嗅覚での判断対策として、事前に同じ匂いのするシャンプーとボディーソープを使ってるよ」


 あの時、皆が脱衣所にいた理由だ。

 もはや触覚の順位付けは絶対だ。


「以上が身体魅力の説明です。積木さんから質問はある?」

「な、無いです」

「それじゃイヤホン渡すから着けてね」


 手渡されたイヤホンを着け、姿勢を正した。

 皆は元々魅力的な女性だ。

 優しく丁重に触れるのを全力で心掛けよう。

 

「ポンポンと2回触れるのが、3分経った合図になるよ」

「わ、分かりました」

「それでは身体魅力を始めます! ミュージックスタート!」


 時貞さんの手で音楽が再生され、外音がシャットアウト。

 激しめのビートと心臓が徐々にリンクする中、誰かに跨がれて座られた。

 初っ端から対面式なんて全く想定してない。

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