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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
14章 夏休み最終週
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89話 躾けて欲しい女子、異国の姉弟子、着崩れ昔馴染みお姉さん、お風呂掃除と肌色景色

 夏休み最終週の午前6時前。

 静かな近所の道で、自転車を漕いでる。

 ただし僕1人ではなく、前を走る女の子を追ってる感じだ。


「もうすぐゴールだよ! 時貞(ときさだ)さん!」

「はぁはぁ……はひぃ!」


 ジャージ姿の女の子、時貞さんを励ましつつサポートするのが僕の役目だ。


 どうしてこうなってるのか遡ること数日前。

 新学期にある球技大会に向け、最後の追い込みをしたいと、連絡を貰ったんだ。

 元々球技大会までに運動音痴を、人並みまで改善したいとお願いされ、夏休み中も時折サポートをしてきた仲だ。


 追い込みも少々悩んだ末、僕らが知り合った宮内道場に協力して貰う事にしたんだ。

 宇津姉と宮内のお婆さんも快諾してくれ、今に至るって訳だ。

 そして僕は早朝ジョギングやストレッチなどなど、出来る範囲のサポートを率先してる。


 そんなこんなを思い返す内に宮内道場が目前だ。

 ラストスパートをかけゴールに着くと、道場前でオリヴィアさんが出迎えてくれた。


「お疲れ様です! ようくん! かなめちゃん! タオルと飲み物です!」

「ありがとうございます、オリヴィアさん」

「あ、姉弟子さん……た、助かりましゅ………はぁはぁ……」


 オリヴィアさんは短期間で日本語が板につき、(つたな)かった頃が懐かしく思える。


「さぁさぁ! ジョギング後は美味しい朝ごはんの時間です!」

「ですって時貞さん」

「……引き摺っていいので、連れてって下さい」

「物欲しそうな目が隠しきれてないですよ。オリヴィアさんお願いします」

「任されました!」


 お姫様だっこで運び込まれる時貞さんに、不服な顔を向けられるも、見て見ぬ振りをした。

 ドM体質なのは悪くないけど、躾というご褒美目当てなら相手しないと決めてる。


「ようくんも早く早く! ご飯が冷めちゃいますよー!」

「あ、今行きます」


 ご厚意に甘えて、数日前から朝ご飯をご馳走になってる。

 姉さん達も誘われてるものの、僕だけお邪魔してる次第だ。

 流石にタダで頂くのも悪いので、台所で宮内のお婆さんのお手伝いをしてる。


「おはようございます。もう運んでも?」

「ありがとさん、助かるよ」


 オリヴィアさんと一緒に運んでると、寝起きの宇津姉がやっと姿を見せた。


「はろ~……にゃむにゃむ……」

「また寝坊かい、宇津音」

「だって~やることが多いんだもん~……ふぁ~……」


 この前大学に戻ってから夜更かし続きで、着崩れた寝間着から素肌がチラホラ顔を覗かせてる。

 晩酌ではない夜更かしだそうで、理由を聞いても内緒の一点張り。

 宇津姉なりに頑張ってるなら、陰ながら応援する方がいいと思い、それからは詮索せずに見守ってる。


 朝食を運び終え、全員が座り、オリヴィアさんがパチンと手を鳴らした。


「それではみなさん! いただきます!」

「「「「いただきます」」」」


 本日のラインナップは焼き鮭に味噌汁、漬物と卵焼き、納豆や海苔などなど、理想の和朝食だ。

 運動後と皆で食べるのもあって、色々と満たされるのを実感できる。


「ん~♪ 納豆と卵の合わせ技は最高です!」

「毎日食べるぐらいだもんね! オリヴィアは日本の食文化とも相性抜群! 日本語も凄く上手になったし、日本人よりも日本人らしくてなんだか嬉しいよ!」

「えへへ~お世辞が上手です~うずねさん♪」


 オリヴィアさんの天真爛漫さに、空気も自然と和やかさに包まれる、そんな朝食だ。


 ♢♢♢♢


 朝食後、オリヴィアさんと時貞さんは、宮内のお婆さんと道場で早速鍛錬。

 僕と宇津姉は洗い物をしながら世間話だ。


「でね! オーバーリアクションの連発! あれはもう傑作過ぎてお腹がよじれちゃったよ! あははは! い、今思い出しただけでも笑っちゃう! あははは!」

「そんなに良かったの? 結構気になるかも」

「なら配信がお勧めだよ! シーズン1は無料だし、導入にはピッタリ……あれ、洋? 向日葵が来るのって今日だよね? 一応スケジュール帳にも書いたはずなんだけど、自分でも何書いてるか分かんなくってさ! いや~慣れない事ってするもんじゃないね!」


 今日はひーちゃんがオリヴィアさんと会う為、宮内道場に来る日だ。

 目的はひーちゃんの両親に託された重要任務、オリヴィアさんの映画オファーの直接依頼。

 僕は仲介役兼、宇津姉からひーちゃんを守る役割だ。


「今日で合ってるよ。確か……8時ぐらいだったかな?」

「良かった~! お客さんが来るなら掃除しておきなさいって、お祖母ちゃんに言われてたからさセーフセーフ! でも家の中ってかなり綺麗なのに、私が掃除する必要あるのかな? どう思う?」

「念には念をって事じゃ?」

「あ! 確かに! でも、今整理整頓するとどこに何があるか分からなくなりそうだし、掃除すると逆に汚れちゃうかもしれないし、むしろやらなくていいかも! うん! そうしよう! いいよねきっと!」


 宇津姉に任せるのは少々危ない気がする。

 朝食のお礼も兼ねて、代わりに掃除をすれば問題解決だ。


「うーん……掃除なら僕がやるから、宇津姉は自分の事やってていいよ」

「本当!? 洋って本当に頼り甲斐もあって優しさが溢れまくりだよ! このままお婿さんになって、ずーっと支えて欲しいぐらいだよ!」

「も、もう……いちいち大袈裟だよ。そ、それよりも掃除道具の場所は?」

「お風呂場前の納戸に一式しまってあるよ! あるものを好きなだけ使っていいから!」

「うん分かった」


 残りの洗い物を済ませ、早速納戸に向かった。


「お、ここだ」


 使い込まれた道具一式を取り出し、掃き掃除から始めようとした時、ふと思い立った。

 目と先にあるお風呂場も、ついでに掃除してもいいんじゃないかと。

 仮に掃除済みならその時はその時だ。

 そうと決めれば行動だ。


 ジャージの袖と足を捲り、お風呂場の扉を開いた。

 そして脱衣所には湯上り姿の女性達による、肌色景色が広がっていた。


「……へ?」


「よ、洋?!」

「洋くん!?」

「つ、積木さん?!」

「ほぅ、誰かと思えば洋君だったか。どうだ、自他共に体には自信があ」

「失礼しましたぁああああ!」


 衝撃的な光景で思考が数秒止まり、扉を閉めるタイミングが遅れた。

 肌色景色が焼き付いて、心臓のバクバクが止まらない。


 しかも相手が峰子さんに千佳さん、暗堂さんに宵絵さんの入れ替わりっ子の4人。

 ちゃんとした機会に4人と会いたかったのに、最悪な鉢合わせを作り出す詰み体質を、今度こそ決別したくなった。

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