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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
12章 詰みな誕生日
81/131

81話 初恋のお姉ちゃん、もう一度同じ人に恋する、義姉妹

 お婆ちゃんの持って来てくれた和菓子で、滞りなく皆のおやつあげが完了。

 弄り合いが再熱する前に、ふーちゃんに切り出さないと。


「ふーちゃん。さっき姉さんから聞いたよ」

「やん♪ またサイズアップしたのバレちゃった?」

「あ、いや、違うよ」

「入れ替わりっ子についてよ、小雪」

「あぁー♪ そっち?」


 反応が思ったよりも軽い。

 話すのが照れ臭いのか、身体をくねくね動かし、指先同士をふにふにツンツンしてる。


「んふふ♪ えっとね? こ、小雪でしゅ♪ キャ♪ 噛んじゃった♪」

「え、えっと……これからは小雪ちゃんって呼んだほうがいいのかな?」

「よー君の呼びやすい方でいいよ♪」

「じゃあ、今まで通りのふーちゃんで」

「了解♪」


 ゆるゆるな空気、肩肘張ってまで緊張するよりかはいいかな。


「まず、ふーちゃんにはお姉ちゃんがいる、でいいんだね」

「うん♪ 今は別々に暮らしてるけどね♪」

「昔遊んだふーちゃんは、お姉ちゃんと入れ替わりっ子してたんだよね」

「お陰様で、こんなに元気に……大きく実りました♪ ハァハァ……」


 自分で立派な胸を揉んで、大きく実った事を教えてくれてる。

 少々顔を赤らめて息が荒くても、ツッコミはしない。


「えー……僕としても喜ばしいよ」

「キャ♪ ふーちゃん大勝利♪」

「おい、私を見ながらは止めろ」

「いたたた!? ふともも抓ねらないで!?」


 容赦ない制裁を下すしゅーちゃんの背後で、莉緒奈ちゃんと空が密かにガッツポーズを取ってた。


「つ、続けても?」

「い、いいよ。いてて……」

「あ、うん。えー今まで入れ替わりっ子の事を教えてくれなかったのは、お姉ちゃんが口止めされてたから?」

「だね♪ 私はどっちでも良かったけど、お姉ちゃんがどうしてもって、必死にお願いして来たからね」

「じゃあ、口止めの本心は?」

「聞いてましぇん♪でも、何となく分かるよ。よー君との大切な思い出は、綺麗なままでいたいもん」


 入れ替わりっ子をバラすなら、明かさないまま思い出として大切にしたかったんだ。

 

「それによー君は、お姉ちゃんの初恋相手だもん。勿論、小雪一個人としても、しっかりとちゃんと好きだよ♪」

「ふーちゃん……」

「でも、引っ越すって分かってから、お姉ちゃんはその思い出ごと大事に大切に、自分の中にしまい込んじゃったの」

「他県の引っ越しだったから、余計に……」

「新生活が始まれば、何もかも一からのスタートだからね」


 次いつまた会えるかも分からない。

 もしかしたら二度と会えない。

 再会しても綺麗さっぱり忘れられてたら、心に深い傷を負ってもおかしくはない。


 だからお姉ちゃんは、そうせざるを得なかったんだ。


「引っ越ししてからお姉ちゃんは、沢山色んな事を頑張って来たの。また会える日が来るまでに、よー君の隣にいられる人になる為にね」

「……そうだったんだね」

「私もよー君のお嫁さんになるのに、現在進行形で頑張ってますけどね! ふっふーん♪」

「うん。ありがとうね、ふーちゃん」

「いえいえ♪ お姉ちゃんもよー君と再会できたし、最近は毎日楽しいみたいだよ♪」


 お姉ちゃんと再会済み、そして最近毎日が楽しい。

 もうヒントは充分すぎるぐらいだ。


「さてさて! 流石のよー君も、お姉ちゃんが誰かお気付きだよね?」

「だね。でも、どっちが本当の苗字なのか分からないんだ」

「あぁー! 兼森は親戚ので、お姉ちゃんのが私の本当の苗字だよ♪」


 今まで気付けなくて、今すぐ謝りたい。

 でも、まず最初に言わないといけない事がある。

 ずっと覚えてくれてありがとうって。


「……ふーちゃん……いや、水無月小雪ちゃんは、水無月宵絵さんの妹なんだね」

「正解♪ 流石よー君だね」


 水無月宵絵さん、僕が尊敬してる一人だ。


 今度は入れ替わりっ子としてじゃなく、水無月宵絵一個人として僕に恋をしてくれ、前に告白もしてくれた。

 ただ僕が告白を断っても、宵絵さんは以前よりも意欲的に好意を示してくれ、今日もモーニングコールと誕生日を祝ってくれてる。

 宵絵さんのひたむきさは、あの時から忘れずに想い続けてくれたからだったんだ。


 再会できたのは、偶然か、奇跡か、はたまた運命か。

 少なくとも西女訪問で偶然再会。

 サバブラでも奇跡的に会え、もう一度同じ人に恋をする運命。

 宵絵さんにとっては全部だったんだ。


「そっか……宵絵さん……」

「大丈夫だよ、よー君。お姉ちゃんは今幸せだよ?」


 宵絵さんが幸せなら報われた気がする。

 なんて都合の良い解釈で、ハイ終わり、って訳にはいかない。

 納得が行く形を、今度は一方的にじゃなくて、2人で作り上げるんだ。

 

「ふーちゃん、今まで気付けなくてごめん……それにずっと覚えてくれてありがとう」

「えへへ……入れ替わりっ子になれて良かった!」


 これからは入れ替わりっ子が無くても、ちゃんと大事に大切に、ずっと僕らの心に残り続ける。

 だからもう大丈夫だ。


 夏空のように清々しく澄み渡った今なら、どんな気持ちにも素直になれる気がする。


 改めてふーちゃんに一言言おうとした時。

 さーちゃんが申し訳なさそうに手を上げてた。


「あのー……洋ちゃん。今まで言い難かったのですけど、この際だからいいですか?」

「うん、いいよ」

「ありがとうございます! では、まず秋子ちゃんからお願いします!」

「わ、私か? ま、まぁいいけど……」


 不意打ちバトンタッチに戸惑うしゅーちゃんは、落ち着いたトーンで口開いた。


「実は吹雪だけじゃなくて……私達も入れ替わりっ子してたんだ」

「……ん? 今、入れ替わりっ子ってえ?」

「ただし吹雪と異なる形でなんだ」


 あんなに清々しく澄み渡ってたのに、一気に雲行きが怪しくなってきた。


「私の場合は姉妹と」

「私は洋ちゃんと別の幼馴染とです!」

「ワタシは従姉とだよん」

「ちょ、ちょっと休憩させて!」


 とても簡潔な情報が超ハイカロリー、もう頭が爆発寸前だった。


 ♢♢♢♢


「とんでもない暴露大会だねーでも、聞き役の洋は1人しかいないから、慌てず1人ずつだよ?」

「「「「申し訳ありませんでした御義父様!」」」」


 僕と父さんに向けられた土下座は、すぐやめて貰った。

 お茶で一息ついたから、心の準備はもう大丈夫だ。


「それじゃあ、まずは秋子から話してちょうだい」

「ハイ! 蒼さん!」


 情報過多と混乱を防ぐ為に、事情を知る姉さんが進行役を務めてくれてる。


「第一前提として、私達が口外出来なかったのは、吹雪と大体同じ理由なんだ」

「うん、分かったよ」

「キュン! こ、コホン! でだ! 姉妹と入れ替わりっ子と言ったが、血は繋がってないんだ」

「義姉妹ってことだね」

「そうなる。お互い物心つく前に、私は母親を、義姉妹は父親をな」

「うん……」

「元々友人だった母達は、幼い私達の為に手を取り合い、時間を重ねる内に結ばれたんだ」

「そうだったんだね」


 しゅーちゃん達に寂しい思いをさせない。

 将来を不安にさせたくない。

 ご両親の子を思いやる気持ちが、しゅーちゃんの言葉越しに伝わってくる。


「同じ歳の義姉妹とは、前々から何度も遊んだ仲だったから、本物の姉妹として受け入れる時間は掛からなかった」


 誰かと家族になるのは、勿論簡単に済ませられる話じゃない。

 でも、しゅーちゃんの話を聞く限り、今も友好な関係を築けてる様で良かった。


「そしてある日、1人で出歩いてた私は、あの公園で洋さん達を見かけて、興味本位で声を掛けに行ったんだ」

「で、入れ替わりっ子が始まったんだね」

「うん。吹雪も同じ事をやってるって、当時は知らなかったけどね」


 お互いの入れ替わりっ子自体は、追々知ったんだ。


「私達の場合、初めこそ洋さんを驚かせたい遊び感覚だったんだ」

「小さい頃ってそういうものだもんね」

「お、お恥ずかしながら……で、で! 吹雪達と同じく、一緒に時間を過ごす内に、私達も恋心を抱いてました!」

「う、うん」


 やんちゃで元気溌剌な性格で、いつも怪我をしてたしゅーちゃんは、ずっと男の子かと思ってた。

 時折、女の子らしさが垣間見えたのは、義姉妹と入れ替わりっ子してたからなんだ。


「けれど、私達も引っ越す事になって、義姉妹だけ宵絵さんと同じ道を歩んだんだ」


 宵絵さんの話を聞いた今なら、気持ちが痛い程分かる。


「その影響なのか、義姉妹は自分1人で何でもやるようになった。まるで私達でさえも壊せない、壁を作る様に」

「壁を……ん? 私達?」


 どうして今、しゅーちゃんは私達と言ったんだろう。

 ご両親や周りの人を含んだ意味合いだとしても、少し変だ。


「洋さん?」

「あ、ごめん。その……もしかしてなんだけど……義姉妹ってもう1人いたりする?」

「あれ? てっきり分かってたと思ってた」

「って事は……」

「うん。義姉妹は双子なんだ」


 壁を作った双子の1人。

 その思い当たる人物が1人だけいる。


 彼女がしゅーちゃんの入れ替わりっ子なら、こうやって話を聞かなかったら絶対に気付けてなかった。


「でも、とあるきっかけで、壁を作って申し訳なかったって、謝ってくれた」

「そのきっかけって、高校入試の日じゃないかな?」

「……もう誰か分かったんだね」

「しゅーちゃんがヒントをくれたからね」


 高校入試の日、その壁を作る双子の1人と、再会してたんだ。

 しゅーちゃんと苗字が異なるのは、ふーちゃんと同じで親戚名か旧姓を名乗ってるからだ。


 再会してからずっと近くで力になってくれて、大事な友達として仲良く過ごして来た。


「しゅーちゃんの入れ替わりっ子は……峰子さんなんだね」

「正解だ、洋さん」


 姉御肌美女こと義刃峰子さんが、しゅーちゃんの入れ替わりっ子。

 実感こそあまり湧かないけれど、今の峰子さんも昔の峰子さんも、どちらもかけがえのない人には変わりない。

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