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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
12章 詰みな誕生日
79/131

79話 幼馴染ブラフ、時間制限初キス、交渉と女優、幼馴染と花嫁達

 幼馴染4人が行動しそうなのは恐らく、待ち伏せだ。

 証、お助けアイテム、ゴールと、僕の来る場所を確実にマークしてるのは、想定の範疇。


 4人の個々の力量は、一般的な女性を凌駕し、僕じゃ到底太刀打ち出来ない。

 でも今は渚さんという味方がいる限り、1対2の状況なら突破は可能だ。


 残り5分に迫ってる状況下、待ち伏せ以外の方法で狙われれば、逃走行為も間に合わずに終わりだ。


「……う君。洋君!」

「え? ど、どうしました?」

「証が見えたわ」


 目立つ狐印の前で、堂々とした立ち姿で、桃髪のポニテが揺れてる。

 さーちゃんが相手だとしても油断禁物。

 幸い周囲は広く、奇襲されても逃げられる。

 いざって時は銃で静止させるまで。


 渚さんと頷き合い、さーちゃんに向かって走った。


「正面突破とはいい度胸ですね! 洋ちゃん! 凪景さん!」

「取らせて貰うよ!」


 負けじと向かい来るさーちゃん。

 狙いが僕である以上、静止させるのはお茶の子さいさいだ。

 確実に仕留める為、胴体を狙い撃とうとした時。

 さーちゃんが大きな声を上げた。


「今です! 向日葵ちゃん!」


 天然で真面目な性格のさーちゃんの事だ。

 挟み撃ち作戦も、わざわざ声を大に言ってしまっても、おかしくない。

 

 ただし、それは前までのさーちゃんだ。

 成長を遂げたさーちゃんから導き出されるのは、作戦そのもののブラフ。

 そうと分かれば怖いものはない。

 引き金を引き、さーちゃんの静止を実行。


 しかし銃口は何故か渚さんに向き、既に撃ち放ってしまってた。


「え」

「ハートを射抜くなら、こうするんだよん。分かったけろ?」


 耳元で甘く囁くひーちゃんが、そのままギュッと抱き着き、銃を持つ手を重ねてた。

 作戦はブラフじゃなかった。

 ひーちゃんは神出鬼没を得意としてたんだ。


「やりましたね向日葵ちゃん!」

「桜ちんのお陰よん」

「す、すみません凪景さん……」

「くっ……」


 本来敵の渚さんを撃つ行為は、何ら問題ない事。

 ルール上、捕らわれた花婿は抵抗できないんだ。

 つまり2人の作戦勝ちだ。


「さてさて……合宿を頑張った自分のご褒美タイムだよん」

「はわわ……い、いよいよですね! ドキドキ!」


 敗北したとはいえ、ひーちゃんもさーちゃんも、ずっと想い続けてくれたんだ。

 気持ちに応えあげられなかった僕が、どうこう言える権利は無い。


 勝利を掴んだひーちゃんは、絶好のチャンスにも関わらず、いつまで経って動こうとする気配がなかった。


「……向日葵ちゃん? どうしたんですか?」

「よ、洋ちんの背中が愛おしすぎて、離れられないよん!」

「えぇぇぇえええええ?!」


 背中に押し潰される幸せな感触が、面積を増やして離れられないとアピールしてる。

 これはひーちゃん達にとって、予測し得なかった誤算。


 2人がパニック中に渚さんの静止時間が解除。

 簡単に助け出して貰い、呆気に取られる2人に残りの玉を撃った。


「はぴゃ!」

「あにょん?!」


 無力化した2人を横目に、証を入手した僕らは、その場から立ち去った。


 ♢♢♢♢


 危機一髪状況から数分、残りの証1つまでの所までやって来た。

 しゅーちゃんとふーちゃんと、未だ遭遇していないのが、唯一気になる所だ。


 お助けアイテムを新たに2つ入手済みでも、油断してはいけない。


「このままだと時間切れになりそうね」

「ですね。でも、デメリットがないのに時間制限ありって、変な話ですよね」

「? 洋君知らないの?」

「へ?」

「時間切れになったら、花婿に一番近い花嫁とキスなのよ」

「な、なんですって?!」


 渚さんの言う通りなら、味方になった花嫁が圧倒的に有利だ。

 だとしても渚さん相手に、もしも考えてはダメだ。


「すみません凪景さん。一瞬疑っちゃいました」

「知らなかったのなら無理ないわよ」

「ほっ……」


 あっさりと許してくれる心の広い方で良かった。

 やっぱり心の師匠の器の大きさは違う。


「そ、それはそうと……して欲しかったの?」

「え? あ、いや……ど、どうなんですかね?」

「濁さずハイかイイエで言いなさい」


 心広い師匠じゃどこへ行ったんだ。

 怪演ばりの豹変と圧は、一般人には刺激が強すぎるのを自覚して欲しい。


 濁さずに答えるなら、自ずとハイにはなる。

 ただそれを本人がいる目の前で答えるんだ。

 照れ恥ずかしさが込み上げるも、言わない方が怖い。


「は、ハイですかね……」

「そ、そんなにしたかったのね!」

「し、強いて言うなら」

「ふ、ふーん……」


 本日何度目かのそっぽ向きは、怒っていないと解釈してもいいのだろうか。

 あくまで興味本位で聞かれただけに過ぎないんだ。


「て、てか! じ、時間延長! す、するでしょ?」

「し、します!」


 ルール上、花婿花嫁の同意があれば延長が可能だ。

 5分延長を決めた僕らは、手を上げて延長宣言。

 無事伝わったのか、延長採用のアナウンスが響いた。


「残りの証は1つ! 行きましょう!」

「強引なリードも嫌いじゃなぴゃ!?」


 不意に現れて渚さんを拘束する、赤髪の美少女しゅーちゃんと目が合った。


「交渉だ、洋さん」

「こ、交渉?」

「お助けアイテムを捨ててくれ。そうすれば解放する」

「私の事はいいから行って!」


 10秒間花嫁が手を出せなくなる無敵帽子。

 捕まっても1度だけ身代わりになってくれるデコイ君。


 最後の最後の突破口として残しておきたい、重要な2つのアイテムだ。

 でも、女優生命まで天秤にかけてくれた渚さんを見捨てない。

 お助けアイテムを置き、両手を上げて後退した。


「これでいい?」

「……隅々まで身体検査したいけど、洋さんを信じる」

「洋君……」


 交渉成立なのか渚さんを解放。

 それ以上しゅーちゃんは何もせず、道を譲ってくれた。


「証はこの先。吹雪はゴールで待ってる」

「ふーちゃんが……ありがとう、しゅーちゃん」


 横を通り過ぎる際、パチっとウィンクしたしゅーちゃんは、ドカバキと物騒な嬉しさ表現音を鳴らしていた。


 ♢♢♢♢


 証を集め終わり、ゴールの駅前まで辿り着いた。

 しゅーちゃんの言う通り、ふーちゃんがラスボスの如く立ち塞がってる。


「ふっふっふ……来たね、よー君」

「ゴールはさせて貰うよ」

「あん♪ 真剣なよー君も、ちゅき♪ チュッチュッチュー♪」


 くねくねと動き、いつもと変わらない感じでも、隙がないと直感で分かる。

 ふーちゃんは幼馴染の中で、一番手強いのは百も承知。

 合宿でパワーアップした今は、尚更乗り切るのは困難だ。


「ふーちゃんの足止め、お願い出来ますか」

「言われなくてもやるわ」

「むぅー! 全部聞こえてるよ!」


 ぷりぷり可愛らしいお怒りも、余裕の証拠だ。

 時間も残り数分だ、やるしかない。


 渚さんが走りだし、僕も後に続いた。

 

「ま、ここまでぜーんぶ♪ 私の計画通りだけどね♪」


 ふーちゃんが指パッチンを鳴らした直後。

 渚さんがクイックターン、僕を真正面ハグで拘束して来た。


「な!? ちょ!?」

「ふぅー……兼森さん。作戦通りに行きましたね」

「ブラボーです凪景さん!」

「ど、どうなってるのふーちゃん!」


 ウキウキるんるんのスキップで、目の前に来たふーちゃん。


「言ったでしょ♪ 全部計画通りだって♪」

「最初から味方のフリしてたのよ」

「そーゆーこと♪ 皆ー♪ 出ておいでー♪」


 戦意喪失の従姉3人、幼馴染の3人も姿を見せ、花嫁が全員集合した。

 8対1の絶体絶命な僕を、ふーちゃんは大変に喜びに満ち溢れていた。


「にゅふふ……大丈夫だよ、よー君……舌までは入れなっふ?!」


 ふーちゃんの素っ頓狂な言葉途切れは、渚さんの急な拘束だった。


「な、凪景さん? あ、貴方の役目は、よ、よー君の拘束ですよ? 相手が違いますって!?」

「いいえ。兼森さんの拘束です」

「にゃ、にゃにぃ?!」


 土壇場での裏切り行為に、余裕が徐々に無くなってきてる。


「はっ! み、皆! よー君がゴールしちゃう! 早く捕まえ……ちょ、ちょっと皆? 立つ場所そっちじゃないですよー?」


 誰一人僕を捕まえに来ないのには、勿論理由がある。

 それを知らないふーちゃんに、ゴール前に教えてあげないと。


「ふーちゃん。実はね、凪景さんがさっき話してくれたんだ。自分は僕の味方のフリをしてるって」

「ふぁ?! ネタバレしちゃったんですか?」

「ごめんなさい」

「えぇえええ?!」


 花嫁全員による出来レースだと聞いた時は、顔面蒼白になった。

 でも、首謀者のふーちゃんを演技で騙し、ゴールさせるとすぐに言ってくれた。


 そして、ふーちゃんに会う前、しゅーちゃん達が現れ、こうして味方になってくれてる。


「そもそも根本が違うんだ吹雪」

「吹雪ちゃん。私達はいつでも洋ちゃんの味方なんです」

「初心忘るべからずだよん」

「かはっ!」


 会心の言葉達に、ふーちゃんは名演技さながらの撃沈っぷり。

 皆がふーちゃんに協力した理由は、ふーちゃんだけが知る僕の秘蔵写真とマル秘情報が報酬だったそうだ。


「ほら時間がないぞ、洋」

「残り30秒。やっぱりゴールしないで、誰かとキスする?」

「こーら~莉緒奈ちゃん~思ってても口にしないの~」

「あ、あはは……じゃ、じゃあ行くね? 皆ありがとうね」


 未来の花婿・初接吻略奪戦は花嫁達に見守られ、花婿が勝利を飾り、初キスを守り切れた。

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