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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
11章 お盆だよ!全員集合!
70/131

☆70話 娘を嫁がせたい、従姉妹達のお気持ち、ゾッコン撮影チャンス、姉達の共同料理、お手製流しそうめん

※2023/7/31文末に積木蜜葉のイラストを追加しました!

※イラストが苦手な方はスルーで!

 従姉達の洗礼から数分、玄関の開く音とただいまで、日和ちゃんの膝枕を瞬時に離れ、玄関に急いだ。


 予想通り、買い物から帰って来た虎二郎伯父さんと、玲子れいこ伯母さんが荷下ろし中だった。


「おかえり虎二郎こじろう伯父さん! 玲子れいこ伯母さん!」


 癖っ毛オールバックに、アクセントの前髪一本束を垂らす、虎柄のシャツをこよなく愛する、ムキムキでガタイの良い虎二郎伯父さんが、パッと嬉しそうな顔を見せてくれた。


「お、洋君! ただいま!」

「あらあら♪ わざわざ挨拶しに来てくれたの?」


 虎二郎伯父さんの後ろから、ピョコッと現れた玲子伯母さん。

 日和ちゃんがもっと大人っぽくなった、ショートヘアの似合う綺麗で優しい人だ。


 とりあえず、伯父さん達の娘さん達から逃げて来たなんて、正直に言うのは心の中に留め、そうだよ、とだけ返事した。


 一龍伯父さんの件を虎二郎伯父さんに伝え、僕は玲子伯母さんと一緒に、大量の食材やら運ぶ手伝いをした。


「助かるわ♪ ありがとう♪」

「このぐらい、なんのそのだよ」

「まぁまぁ♪ 頼もしいわ♪」


 上機嫌な玲子伯母さんは、この町で役場勤めする、役場の紅一点らしい。

 40代目前なのに若々しく綺麗で、ヘタすれば僕より少し年上に見えて、紅一点なのも頷ける。

 初見じゃ到底、4児の母親だとは見抜けない。


 虎二郎伯父さんとタメで、中学から付き合ってそのまま高校卒業後ゴールインって感じだ。


「やっぱり洋君みたいな男の子が、娘達にピッタリなのよね♪ チラっ」


 数年前から玲子伯母さんが毎回振ってくる話題の導入だ。

 いつも返事は同じなのに、全く引き下がらないのが、毎度のパターンだ。

 日和ちゃんの引き下がらなさは、玲子伯母さん譲りなのは間違いない。


「皆の気持ちもあるでしょ……」

「大丈夫よ♪ 皆、男っ気無しだから♪ むしろ貰って欲しいわ♪」


 玲子伯母さんの言う通り、4人とも彼氏がいてもおかしくないのに、誰もお付き合いした経験がないんだ。

 だからお正月に、4人の気持ちを聞いてみたんだ。


♢♢♢♢


 日和ちゃん曰く、

『彼氏~? 考えた事ないよ~?』 


 合う人がいないって事?


『かな~? でも~1人あげるとすれば~洋くんかな~』 


 えっと……僕みたいな人って事?


『みたいな人じゃなくて~洋くんがいいな~』


 ん、ん~……



 文乃ちゃん曰く、

『よ、洋こそどうなんだよ!』 


 ぼ、僕?


『か、彼女いるのか?!』 


 いないけど……


『ほっ……いたら、逝っちまうところだった……』 


 へ? どこに?


『…… な、何でもない!』


 ?



 蜜葉曰く、

『彼氏ってなんだ? 敵か!』 


 えっと……一緒になりたい好きな人?のことかな? 


『じゃあ洋が好きだから、洋が彼氏だ!』


 ぼ、僕は無しだよ。


『え。ダメ? み、蜜葉のこと嫌いなのか? ひっぐ……うわあああああん!』 


 ちょ!?



 吉穂曰く、

『私はその先を見てるの……』


 先?


『うん……お嫁さん……』 


 随分先を見越してるんだね。


『……』 


 吉穂? 僕をジーっと見つめて固まってるけど、大丈夫?


♢♢♢♢


 4人共も彼氏には興味を示さず、現状維持で間に合ってるそうだ。


 勿論、莉緒奈ちゃんにも聞いてみたものの、似た様な感じだった。


『興味はあるよ』 


 本当! 理想とかある感じ?


『うん。年下で私より小さい、黒髪、一人称は僕』 


 結構具体的だね。


『ふふふ……あと鈍感なところかな』


 鈍感がいいの? へぇ~。



 皆の気持ちを踏まえて玲子伯母さんに返事してるのに、会う度圧が増してるんだ。

 まるで娘達を本気で嫁がせる勢い、とでも言えばいいかな。


「で? 誰がいい? 日和? 文乃? 蜜葉? 吉穂? それとも4人とも♪」

「なんでそうな」

「ドーン! あ! お母さん! おかえり!」

「はい♪ ただいま♪」


 台所からハイテンション出現した蜜葉のお陰で、空気が戻った。

 大量の買い物袋に興味津々で、動き回る姿を見ているだけで忙しない。


「なぁなぁなぁ! 美味いもん買って来たのか!」

「そうよ♪ 私もお料理手伝わないとね♪」

「ふほー! 腹減って来たぁああ!」


 話題も完全に方向転換したんだ。

 台所に運び終わったらひとまず安心と言ったところだ。


 2人に続いて台所に向かうと、姉さんとお婆ちゃんが丹精込めて料理をテキパキ丁寧に作り上げていた。


「味どう?」

「……腕が上がったね。ただもう少し風味が欲しい所だね」


 姉さんとお婆ちゃんの料理姿は、まごう事なき師弟関係そのもの。

 吉穂も料理に関心があるのか、出来上がった料理の盛り付けを一生懸命やってる。

 学校でも成績優秀だそうだし、何事も学ぶ姿勢を崩さないポリシーは大事だ。


「お婆ちゃん! お母さん帰って来たぁ!」

「そうかい。教えてくれてありがとうね」

「おかえりなさい、玲子さん」

「はい♪ ただいま♪ 蒼ちゃん♪」


 いつの間にかエプロン姿になった玲子伯母さんは、買い物袋の中身をじゃんじゃかあるべき場所に収納しまくってる。

 無駄のない洗練された動きは、主婦経験が豊富でないと出来ない芸当だ。


「なぁなぁなぁ! 味見していいか?」

「ダメ」

「ぶぅーぶぅー!」


 僕の役目は終わった事だ。

 皆が台所に集中してる内に、ひっそりとリビングへと退避だ。


 ♢♢♢♢


 お昼ご飯まで残り数十分、日和ちゃん達と話でもして、時間を潰そうと思ってたら、日和ちゃん達が縁側に座ってた。

 エアコンの効いてるリビングの方が絶対快適なのに、どうしたんだろう。


 3人に近寄りつつ縁側先の庭を見たら、お爺ちゃんと伯父さん達が、せっせと大掛かりな物を組み立て中だった。

 竹を何本も使った、滑り台みたいな形状に、ピーンと正体に気付いた。


「ねぇ、あれってもしかして……」

「あ、洋。お爺ちゃん達のお手製流しそうめん台だよ」

「蜜葉リクエストのな」

「お爺ちゃんも~お父さんも~物作り好きだもんね~」


 林業勤めの虎二郎伯父さんは、手先の器用さを趣味に、あらゆるものを手作りしたりしてる。

 日和ちゃん達の勉強机や大半の家具も、お爺ちゃんと伯父さんの手作りだ。


 お手製流しそうめん台があれば、見飽きて食べ飽きるそうめんも、ひと夏の思い出になるんだ。


「洋。立ってないで隣座っていいよ」

「お、おい! こっちの方が日陰だぞ!」

「膝枕で涼んでもいいよ~?」

「あ、えっと……の、飲み物取ってくる!」


 日照りの強い縁側で、3人に揉みくちゃにされれば、流石に参る。

 後退りのまま台所に避難しようとしたら、リビングに誰かが入って来た。


「んー……休憩休け……あ、洋君。来てたの気付きませんでした……」

「その様子だとお疲れみたいだね、(あかね)伯母さん」

「お恥ずかしながら、やる事が沢山なんです」


 身体を伸ばしながらやって来た、莉緒奈ちゃんの母である(あかね)伯母さんは、有名女子大の大学教授だ。

 眼鏡と黒髪ショート、ワイシャツ姿の似合うスレンダーさは、大人カッコいい女性みたいな感じだ。


 今まで姿が見えなかったのは、きっと部屋で仕事をやってたからに違いない。

 顔もどことなく疲れが残ってる感じだ。


「ところで……庭が賑やかですけど、何かありましたか?」

「お爺ちゃん達が流しそうめん台を設置してるんだよ」

「一龍さんも?」

「うん」

「ならば、絶好の撮影チャンスですね! やっぴー!」


 さっきまでのお疲れ顔が吹き飛ぶぐらい、茜伯母さんは一龍伯父さんにゾッコンなんだ。

 縁側から聞こえるスマホの激写音を背に、僕は台所へと舞い戻った。


「あ! 洋! どこ行ってやがった!」

「ご、ごめんごめん」

「許さん許さん許さん! 遊べ遊べ遊べ!」


 蜜葉のぽこぽこ連撃も、全然痛くも痒くもないけど、そろそろ一緒に遊ばないと不満が爆発しそうだ。

 何か体力温存できる遊びは無いか、頭の中で検索してると、玲子伯母さんと目が合った。


「洋君♪ 丁度お料理の準備出来たから、テーブルとかの準備頼める?」

「う、うん。って事で、遊ぶのは食べてからでね?」

「分かった! お母さーん! 蜜葉も手伝うぅ!」


 何だかんだで蜜葉は聞き分けのいい子なんだ。

 将来的に玲子伯母さんに似て、いいお嫁さんになれる筈だ。


 ♢♢♢♢


「ふほぉおおお! 蒼姉の肉のヤツ! 爆美味ぁあああ!」

「喜んで貰えて嬉しいわ」


 歓喜の雄叫びと地団駄で、姉さん達の共同料理は舌鼓を打ちまくってる蜜葉。

 やっぱり作る人によって美味しさも違って、いくら食べても食べ飽きない。


「コラ! 立ち上がって叫ぶなアホ蜜葉!」

「だって美味ぇんだもん! 文姉!」

「ガッハハハ! 良かったなぁ蜜葉!」


 お爺ちゃん達は流しそうめん台の最終調整中で、リビングからその様子がよく見え、賑やかなやり取りが庭まで届いてる。


 甘やかすのも程々でないと、とお婆ちゃんが空に言いながら、空に料理を見繕ってくれてるお婆ちゃんも、何だかんだで孫の僕らには甘い。


「ふっ……誰に似たのやら」

「あぁ? 壁女が」

「……無駄ラード」

「あぁ?! どこがラーみゃぷ?」


 突然文乃ちゃんと莉緒奈ちゃんの口に、すっぽり収まった肉料理は、姉さんの仕業だ。


「食事は楽しくよ。文乃、莉緒奈」

「「ふぁ、ふぁい……ごめんなふぁい……」」


 姉さんと日和ちゃんには敵わない。

 そんな関係性をよく見せてくれる文乃ちゃん達は、何だかんだで隣同士で座ってる。


「さぁ愛する孫達ぃ! 今から流しそうめんするぞ!」

「来たぁあああ! みんな早く早く!!」


 待ちに待った流しそうめんに、一目散で縁側から飛び出した蜜葉に続き、僕らもサンダルを履いて、付けつゆと箸を持って準備完了。

 そうめん補充役のお爺ちゃんが、そうめん流し役の一龍伯父さんへと、そうめんを渡した。


「それじゃ、流すよ」


 合図を出して流し始めた一龍伯父さんを、恍惚の表情で激写する茜伯母さんは、どんどん若返ってってる。

 それを見て、止めたいのに止められない表情を隠し切れない莉緒奈ちゃんを、笑いを堪え眺めてる文乃ちゃん。


 虎二郎伯父さんに抱えて貰い、最前線にスタンバイする蜜葉は、上手に掬い取って嬉しそうだ。

 そんな蜜葉の向かいで姉さんも楽しそうにワクワクと、ここぞって時には子供っぽい一面を隠しきれない。

 僕は中間地点で空と吉穂と一緒にスタンバり、少しずつ美味しく頂いてる。


 お婆ちゃんと玲子伯母さんは、微笑ましくリビングから眺め、楽しいお盆のお昼一日目を堪能していた。

挿絵(By みてみん)

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