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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
10章 墨ヶ丘夏祭り
65/131

65話 隠し切れない芸能オーラ、ドヤ顔同然誇らしげ顔、加速する密着加減、大いなるプレッシャー、知られてた好きな人

 同席した千鶴さんは、一歳下の澪さんと小学からの友人だと、聞かれるより前に教えてくれた。

 澪さん1人でも掴み所が少ないのに、千鶴さんも加われば、厄介な事になり兼ねない。


「千鶴さんも収穫ゼロみたいですね」

「ヒント1だけでは、大雑把にしか絞り切れませんからね。ヒント2まで待ちましょう」

「そうしましょう。お二人もよろしいですか?」

「よ、よろしいです」

「従います」


 長平さんも千鶴さんの前だとカチコチに緊張してる。

 そもそも変装してる千鶴さんは、側を通る通行人の大多数に二度見される程、オーラがダダ漏れなんだ。

 当の本人はそんな事を一切気にせず、澪さんとテーブルに小物をどんどん置いていた。


「あ、あの……何してるんですか?」

「未確認生物を誘い出す儀式です」

「猫恋さんも対象なら、きっと現れます。さぁ、お二人も」


 魔法陣の布上に置かれた奇妙な小物を囲み、両手を隣同士で握り合った。

 謎の奇怪な呪文をツラツラ唱える2人に続き、真似る一方、側を通る通行人がみるみる離れていた。

 僕も相手が澪さん達じゃなければ、蜘蛛の子散らすように逃げてる。


 怪しげな呪文詠唱後、小物の中心に置かれた物が、犬と猿が混ざったキメラ像こと、夫婦円満や恋愛成就のご神体ウッペポイ像だった。

 見た目がUMAっぽい理由だけで置いてるのかもしれない。

 

「さぁ! 聖なるUMA(しん)よ! 我らの(にえ)を捧げようぞ!」

「お二人も贄の方をお願いします」

「え」

「に、贄の具体的な物はなんでしょうか?」

「髪の毛1本構いません」


 スッと銀皿を向けられ、それぞれ1本ずつ髪の毛を捧げた。

 澪さん達も髪を捧げ、千鶴さんが火を付けたマッチを銀皿に入れた。

 ストロベリー系の香りが、甘く優しく香ってきた。


「……千鶴さん。またお皿間違えて来ましたね?」

「みたいですね。まぁ、大事なのは信じる心ですので、儀式の1つや2つぐらい気にしてちゃいけません」


 ちゃっちゃと消火を済ませ、ケロッと儀式道具を片付ける千鶴さん。

 ミステリー好きがそれを言って大丈夫なのかと、若干心配になった時。

 僕と長平さんのスマホが同時に鳴り、瑠衣さんからの新しい猫恋さん情報だった。


「あ、友達から猫恋さん情報来ました」

「ヒント2、今日は北方面と南方面には行かないそうです」

「成程。このまま周囲を徘徊すればよさそうですね、千鶴さん」

「やはり儀式は効果覿面ですね」


 ドヤ顔も同然な物凄い誇らしげな千鶴さんは、どんな顔も絵になる。

 兎にも角にも、新たな情報を頼りに、猫恋さん探しを再開だ。


 ♢♢♢♢


 猫恋さん探し再開から数分。

 先陣を切る千鶴さんの、人を惹きつけるオーラに誘われ、通行人の注目の的になってる。


 あの仄影千鶴が女友達と男友達?とプライベート夏祭り。

 なんて変な誤解が広まってれば、千鶴さんに迷惑が掛かる。

 解決策は逸早くこの場から距離を置くに限る。


「みき君。積木君」

「……へ? よ、呼びました?」

「えぇ。積木君も千鶴さんの正体に気付いてるようね」

「ま、まぁ……」


 長平さんも知ってた様だけど、妙に距離が近い。


「きっと積木君の事だから、色々心配してるのでしょ?」

「相手が相手ですし……」

「なら、こうすればいいじゃない?」


 ヌルりと腕を絡めて来た長平さん。

 不意な行動に戸惑うも、理由を聞いて納得した。


「こうやって肌身離れずいれば、少なからず積木君と千鶴さんとの疑わしい関係性は薄まるわ」

「な、成程」


 擬似カップルを装えば、通行人の認識も変わる作戦だ。

 効果覿面か、僕への視線が綺麗さっぱり無くなってた。

 協力してくれる長平さんに頭が上がらないのに対し、腕に触れる胸の感触に、どうにも意識が持ってかれてる。

 

 そして長平さんの密着加減は加速し、恋人繋ぎにまで発展。

 もし知り合いに見られれば、滅茶苦茶誤解されること間違い無しだ。

 

 そんな中、突き刺さる視線を前方から感じ、恐る恐る視線の主を目視した。


「あ、あの……どうしました、澪さん?」

「積木君……積木洋君……あくまで予想なのですが……もしや貴方が、宵絵さんのお慕い人である、洋君なのですか?」

「え」

「っ!?」


 突拍子もないタイミングでの、僕と宵絵さんの関係性話題は、全く想像出来なかった。

 長平さんも見たことのない驚きっぷりだった。


「た、確かに宵絵さんとは仲良くさせて貰ってますけど……どこからその情報を?」

「宵絵さん本人です。夏休み入って数日経ったのを境に、宵絵さんが洋君という方に、もぉにぃんぐこぉぉる?を、毎朝欠かさず勤しむ様になったので、気にはなっていたんです」


 オフ会での一件以降、宵絵さんのモーニングコールが始まり、今朝もやって貰ったばかりだ。

 もし澪さんが宵絵さんと同じ寮暮らしなら、モーニングコールを聞かれててもおかしくはない。

 

 宵絵さんの事だ、澪さんに僕とのあれやこれやを素直に話してる可能性が高い。


「先日も藻岩ビーチに急遽出向き、翌日帰って来ましたので、お土産の受け取りの際に聞いてみました。するとどうでしょう。モーニングコール相手である洋君に会いに行ってたと、嬉しそうに話してくれましたよ」

「た、確かにそうです」

「っ!?!?」


 ジリジリ距離を詰める澪さんから、大いなるプレッシャーを感じる。

 長平さんもプレッシャーのせいで汗を掻き、しっとり吸い付く柔美肌が左腕に触れてる。


「ほぉ……つまり、宵絵さんのお慕い人である事を、お認めになると?」

「は、はいっのわ?!」

「つ、積木君!? 本気で言ってる!?」

「な、長平さん?」


 強引な両肩掴みで向き合わせてきた長平さん。

 いつものクールな面影はなく、真剣な眼差しの中に明らかな動揺と焦りが混ざってる。

 長平さんの行動に疑問が浮かぶ最中も、澪さんは僕に向かって言葉を投げ掛けてる。


「いいですか積木洋君。宵絵さんは恩人であり、友人であり、目指すべき憧れなのです」

「は、はい」

「宵絵さんの意思を汲み取り、今は貴方を味方として見ます。が……宵絵さんを少しでも傷付ける結果になれば……後は分かりますよね?」


 宵絵さんを慕っている人達を全て敵に回す事になる。

 そういう意味だ。

 

 何も言えずに喉だけがカラカラな僕は、長平さんに手を握られ、ハッとした。


「う、鵜乃浦先輩! 私達はこっちを探すので! また後程!」

「おわっちょ!?」


 グッと手を引かれ、猛スピードで人混みに紛れ、澪さん達の姿が数秒で見えなくなった。

 それでも脚は緩まず、もう大丈夫だと声を掛けようとするも、長平さんがとある言葉を漏らしていた。


「早く猫恋さんを見つけて、愛実ちゃんに来て貰わないと……」

「へ? ど、どうして愛実さ……はっ」


 今まで分からなかった点と点が繋がり、一つの線になった今、僕は長平さんの行動の意味を知った。


「な、長平さん……も、もしかして……僕の好きな人……知ってたんですか?」

「何を今更?! 気付かないとでも?!」


 知ってて当たり前な返事に、一気に恥ずかしさが込み上げるしかなかった。

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