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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
10章 墨ヶ丘夏祭り
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64話 異性の理想像、お祭りキラー女子、ミステリーフレン

 猫恋さん探しから数十分。

 お祭りの催物を楽しむ僕らは、夏祭りにすっかり夢中になってた。

 いつも表情を崩さない長平さんも、段々と表情が柔らんで、新鮮な気持ちを同時に感じてた。

 高校以外で2人っきりなんて初めてで、コミュニュケーションが取れるか少し不安はあったけど、存分に楽しめてる。


「ん、ベビーカステラ発見よ。食べましょう」

「了解です!」


 かれこれ数店で買い食いし、腹半分目まで満たされても、夏祭りの効果でまだまだ入る。

 長平さんに至っては、僕の倍以上食べてるのに、まだ腹2分目だそうだから、買い食いはまだまだ終わりそうにない。


 買って来てくれたベビーカステラを一緒に食べてると、僕の方を見てクスッと笑みを溢してた。

 口横に砂糖が付いてたらしく、拭おうとする前に、指で優しく拭われ、パクっと拭った指を自分の口に咥えてた。


「ふふ、甘いわね」

「ふぁ、ふぁい」


 相変わらずな翻弄っぷりを披露する経験豊富そうな長平さんには、前々から恋愛相談を少ししてみたかったんだ。

 2人っきりの今の内に、恥を忍んで聞いてみよう。


「そ、その……長平さんが嫌じゃなければなんですけど……」

「? 何かしら」

「な、長平さんの恋事情を聞きたいなーと思いまして……」

「構わないわ。で、何が聞きたいの?」


 急な話題にも適応、まさに大人の余裕だ。

 とは言え、見切り発車な話題切り出しだ。

 まずはジャブ程度の話題だろう、長平さんならではの、異性の理想像を聞いてみたいところだ。


「え、えっと……な、長平さんの中でい、異性の理想像って、どんな感じですか?」

「異性の理想像なら、彼一択ね」

「え」

「見せて上げるわ……はい」


 心構えもないまま、目の前に映るスマホ画面を、ハッキリくっきりと刮目。

 長平さんの方から腕を組む、八頭身イケメンとのツーショットだった。

 と一瞬思ったら、異様に彼氏さんが無機質に見え、すぐに理由が何か分かった。


「……ま、マネキン……ですよね?」

「マネ()よ」

「ま、マネ夫……さんですか」


 顔が触れ合いそうな接近で、僕の手を握りスマホ画面をスライド。

 多種多様な服装とポージングをとるマネ夫と、モデル顔負けの美しい長平さんとの、ファッション誌風写真が次々に視界に焼き付く。


「昔からリアル異性にはうんともすんとも、心が靡かないの。だから従順な彼が、異性の理想像になる訳よ」

「な、なるほど……」

「ただ、最近はリアル異性に興味出てきたわ」

「へ?」


 僕を見ながらの意味深発言後、パシャリといつの間にか切り替わってたインカメで、ツーショットを撮られた。


 スマホ画面に写ったアホ面の僕を、妙に色っぽい指使いでなぞる長平さんは、直接僕の顔に触れ始め、そのまま耳元で囁いた。


「積木君みたいな、可愛げのある異性なら……私は構わないわ」

「そ、それって……」

「ふふ……安心して頂戴。好意的なだけで、恋愛感情は無いわ」

「あ、あふっ……」


 手の平の上でコロコロ弄ばれても、長平さんに心許してるから、全然嫌な気持ちにならない。


「身になる恋愛アドバイスは無理でも、積木君達の恋路には協力するわ」

「あ、ありがとうございます! わぷっ!?」

「もう一つ言い忘れてたわ。私、積木君を知る度に、どんどん母性が目覚め始めてるの……ふふ」


 生肌も同然な胸埋めの底無し柔さと、包まれる優しい温もりが顔一杯に触れて、息が物凄く辛い。


 両肩を掴みギブアップしかけた時、数m先の屋台で歓声が上がり、長平さんも気が逸れ、胸埋めが緩まった。

 この一瞬の隙を逃さず、スルリと体を屈め脱出。


「あ。やるわね」

「ど、どうもです? そ、それより、何が起きてるんですかね?」


 興味本位で歓声の中心に行くと、和装姿とダークブルーの編み込みサイドアップの見覚えある女性が、屋台景品を掲げるポーズを取ってた。

 そして僕は女性の名前を自然に呼んでいた。


(みお)さん……ですよね?」

「ん? 君は……北高の1年生、積木洋君……滝長平さん……でしたよね?」


 やっぱり西女生徒会の2年生鵜乃浦(うのうら)(みお)さんだった。

 林間学校で明日久さんが、澪さんはお祭り事とか行事ごとが大好きな人だと、言ってた記憶がある。


「立ち話もなんです。移動しましょうか」


 根こそぎ掻っ攫った景品を両腕に持ち、澪さんの行くままに僕らは続いた。


 ♢♢♢♢


 飲食スペースの一角で、僕らとテーブル越しに対面する澪さんは、掻っ攫った景品を子供達にプレゼントしていた。


「ありがとー! おねえさん!」

「お祭り楽しんで下さいね」

「うん!」

「どうもありがとうございます。良かったね、まーちゃん」

「うん! たからものにするの! バイバイ! おねえちゃん!」


 去って行くお子さん達に、笑顔で手を振り続け、心温まる光景から早数分。

 景品を全部プレゼントし終えた澪さんは、ホクホクと満足そうだった。


「……さて、お待たせしましたね」

「いえいえ、大丈夫です」

「鵜乃浦先輩は、子供好きでお祭り好きなんですね」

「えぇ。例年通り今日は東方面を攻めて、明日は西方面を攻めるつもりです」


 2日に渡って全屋台網羅する根気は、もはやお祭りキラーだ。


「ただ、お祭りを楽しむのと同時に、私にはやらなければいけない事があるのです」

「それは一体……」

「猫恋さんという、正体不明の女性と会う事です」


 思い返せば林間学校でもツチノコ探しをするぐらい、UMAやらミステリー関連にも目が無い人だった。

 

「あのー僕達も猫恋さんを探してるんですよ」

「なら話は早いです! 同志は多い程有利! 是非是非ご協力を!」

「は、はい」

「よ、よろしくお願いします」

「そうと決まればミステリーフレンドにも連絡ですね」

「ミステリーフレンド?」

「そのままの意味です。今回は彼女と2人ですが、まず連絡に気付いてくれるかどうかですね」


 会場内のどこかにいるフレンドの女性は、澪さん以上にミステリー好きで、何かに夢中だと音沙汰無しが当たり前だそう。

 澪さんが電話を早速掛けようとした時、僕らの背後で誰かが立ち止まる気配を感じた。


「おや、澪も休憩中でしたか」

「噂をすればナイスタイミングです、千鶴さん」


 聞き覚えのある名前と声に、長平さんと振り返り、目を疑った。

 澪さんのミステリーフレンドが、変装してるシークレットスターの1人、仄影千鶴さんだったのだから。

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