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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
9章 女子眼福巡りin渋ヶ谷
60/131

☆60話 重度のブラコン、汗で艶めく美背中と腰、誘いたい夏祭り

※2023/7/21文末に赤鳥南朋のイラストを追加しました!

※イラストが苦手な方はスルーで!

 南朋さんは誤魔化しきれないと悟り、僕の肩を掴み掛かり、開き直った顔で見つめてきた。


「いい積木くん……今聞こえた事は口外厳禁だから」

「ふぁ、ふぁい」

「君は何も聞かなかった。聞こえなかった。いいね?」

「……はい……」


 瞬きのない落ち着いたトーンも合わさり、不気味さがより際立ってる。

 僅か1分で、南朋さんのあらゆる面が垣間見え、嫌な汗が頬を伝った。


「何を話しやがってる?マス?」

「世間話ですよ。ね?」

「で、ですです!」


 凄まじいプレッシャーを与えられ、同調以外の道は残ってなかった。

 そのまま南朋さんは僕の耳元へ近付き、スゥッと一呼吸してから言葉を放った。


「いい積木くん……可愛い可愛い大地キュンは、小さい頃から私がダサく見える様に、入念に仕込んできたの……何でそんな事するのかって? 勿論、私や身内しか知らない可愛い可愛い大地キュンを隠して、メス達が寄り付かない様にする為……もし君が、この事を大地キュンにバラそうものなら……分かってるよね?」


 分かってるからこそ、分かりたくない事だってある。

 コクリと頷くのを確認した南朋さんは、何事もなかった風にウェイトレスモードに戻った。


 詰み体質も所詮、危険な因子を引き寄せるだけに過ぎないんだと、改めさせられた。


「おい姉貴。サボってんじゃねぇーよ」

「ぴょわ?! だ、大地!? ちゃ、ちゃんと気付くように声掛けろって、いつも言ってるだろ!」

「はいはい、さーせんさーせん」


 慌てて仕事に戻る南朋さんを一切見ず、オリヴィアさんからメニューを受け取る赤鳥君。

 一方で離れた南朋さんは物陰から、赤鳥君にラブ視線を送ってる。


 熱い視線に一切気付かない赤鳥君は、オリヴィアさんの胸元をチラチラ見て、鼻の下をだらしなく伸ばしてた。


「で、積木。姉貴と話してたのか?」

「……え?」

「世渡り上手?な話をしてやがったデス!」

「なるほー確かに、順調人生な姉貴だから、学べる事はそれなりにあるわな」

「そ、そうそう!」


 オリヴィアさんの絶妙な言い間違いフォローで、赤鳥君が良い方向に解釈し、何とか南朋さん話題が終わってくれた。


「そ、そういえば2人は何食べるか決めたの?」

「ワタシはカチカレーデス! 大きなてんぷらが、とても美味しそうだったデス!」


 カツを天ぷらだと勘違いしてても、実際に食べて分かって貰えればいいんだ。

 トンカツとカレーのダブルパンチに、ノックアウト間違いなしだ。


「俺はビーフカレーだな。ここのはバチバチに美味いんだよ」

「ビーフカレー! 僕もカレーの中で好きなんだ!」

「なら、一口食ったら目玉飛び出んぞー?」

「ゴクリ……」


 昼食が決まり、赤鳥君が早速呼び出しベルを鳴らした。

 チーン音で南朋さんが誰よりも早く歩み寄り、迅速に身だしなみを整え、何食わぬ顔でやって来た。


「ご注文をお伺いします。大地はビーフカレーだな?」

「そだけど、ちゃんと接客しろよな」

「うっせ! 積木くんとオリヴィアさんの注文は何かな?」

「あ、ビーフカレーでお願いします」

「カチカレーでお願ぇーしマス!」

「ビーフ2にカツカレー? でいいのかな?」

「デス!」


 注文を聞き終え、少々お待ち下さいと笑顔で去って行く南朋さん。

 赤鳥君が振り向かない前提で、投げキスを何度もしていた。

 もうバレるかバレないかの瀬戸際すらも、愛の為ならば攻め続けるんだと、見てるだけで内心ひやひやだった。


 ♢♢♢♢


 カレーが届くまでの間も、南朋さんのラブアピールは絶え間なく行われ、見ているだけでドッと疲れが来てた。

 やはり詰み要素は十人十色なんだと、なるべく疲れを見せない様に、目の前のビーフカレーをスプーンで掬い、口に運んだ。


「……?! え、あ、お、美味しい!? あ、赤鳥君!? す、凄いよ! ここのビーフカレー!」

「ご期待以上のリアクションだな、積木よ」

「みゅふふ~とても可愛らしいデスよ、ようくん!」


 語彙力がどっかに飛び、真面な感想が口に出せずとも、ちゃんと自分の中じゃ言いたい事は分かってた。

 濃厚でコクのあるルーの中に野菜の甘さが感じ、牛肉もホロホロに口でほぐれ、ブレンドされたスパイス達がしっかり食欲増進してくれてる。


「カチカレーもスパイシーで身体が燃えました?デス!ハフハフ……」

「ふほほ! ブロンド美女のハフハフ顔も、絵になりますな!」


 好物を無我夢中で食べる子供みたいで、見てるだけで可愛いらしいオリヴィアさん。

 代謝が大変によろしい様で、ぽたぽたと汗を掻き熱気がムンムンだ。


「ハフハフ……ようくん! 背中の汗を拭きやがってくれデス!」

「……え? い、今ですか?」

「ハイ! お願ぇーしマス!」


 コルセットチューブトップの背中の紐をシュルッと解き、汗で艶めく美背中から腰までが御開帳。

 タオルもいつの間にか手渡され、早く早くと言わんばかりに、じわりじわりと距離を詰めて来てる。


 赤鳥君もビーフカレーそっちのけで、興奮の眼差しで見届ける気満々。

 同時に遠目で睨んでる南朋さんが、フォーク片手の般若の形相で、僕を視界に捉えてる。


 このまま南朋さんに手を下されそうで、もう躊躇ってる暇はないと、形振り構わずにタオルを背中に当てた。


「ンッ……気持ちいいデス……そのまま隅々までお願ぇーしマス……」

「は、はい!」


 艶めかしく気持ち良さそうな声と、軽く拭く度にピクっと反応する身体に、大人な空気を感じた。

 無心を心掛けつつ、丁寧に汗を拭いてる内に、肌を露出した範囲外も拭いて欲しいとお願いされ、しっかりと綺麗にした。


「フゥー! ムラムラが解消されまシタ! ありがてぇござぇーマス!」

「ど、どういたしまして……」

「デュフフフ……グッジョブ……積木……」


 スッキリ爽快したオリヴィアさんは、再びハフハフ食べ始め、さっきよりも汗を掻かずに済んでた。

 赤鳥君もご満悦な顔でビーフカレーを食べ、オリヴィアさんの胸元を眺めてる。

 そして南朋さんは物陰から、赤鳥君の幸せな顔を見て、キュンキュンくねくね体を動かしてる。


 とりあえず一件落着に、安心して口に運ぶ美味しいビーフカレーは、疲れのお陰であまり味がしなかった。


 ♢♢♢♢


 南朋さんに見送られ、イノリを後にした僕ら。

 エレベーターに乗り込み、今度こそ安堵が訪れたと、ホッと息が漏れた。

 南朋さんの危険性を知った以上、なるべく同系統の女性とは、あまり関わらない方がいいと学ばせて貰った。

 とは言え、詰み体質はどんな異性が来るかは全く分からないんだ。

 今後はより危機感を持って過ごすと心掛けよう。


「なぁ積木」

「え? な、なに?」

「今週の土日、瓦子を誘ってんのか?」

「……ま、まだ……」


 土日は県内で一二を争う有名な夏祭り、墨ヶ丘(すみがおか)夏祭りが開かれる。

 2日間で10万人以上が足を運ぶ大規模な夏祭りに、今年は愛実さんを誘おうか悩んでた。

 前までは詰み体質が怖くて夏祭りには行けなかったけど、今は赤鳥君も味方だと知れて、何だか踏ん切りがついた。


「でも、今日誘ってみるよ」

「よし! よく言った!」

「えでで……」


 元気良く背中を叩かれ、軽く痛いのには変わらないけど、凄くやる気を貰えた。

 それから夕飯前まで、女子眼福巡りin渋ヶ谷withオリヴィアさんは続いた。


挿絵(By みてみん)

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