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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
8章 一個下の後輩
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54話 ポッポと赤らむ驚き、吉と出るか凶と出るか、まさかのハプニング、かき氷早食いタイムアタック

 幸兎がスタート位置にスタンバイし、愛実さん達も誘導できるよう両手を口元に添えてる。

 姉さんの手鳴らしスタートで、幸兎が恐る恐る一歩踏み出した。


「ユッキー! しばらくでこぼこ道だから、足元に注意!」

「慎重にいつも通りの歩幅で進んだ方が、逆に安全だ」

「恐れず行ったれー」


 誘導通り、ちょびちょび歩きから、いつもの歩幅で進み始めた。

 絶妙にでこぼこにハマらず、スイスイとでこぼこ道を突破。


 次なる関門、スイカボールの散乱する地帯は、早速幸兎の足下にボールが触れていた。


「みゃ!?」

「ユッキー! 左向き過ぎてる! 方向修正!」

「ペースは上々だぞ! 好タイムを狙えるぞ!」

「方向修正オッケーそんまま直進だぞー」


 驚き声を聞かれ体が赤くなる幸兎は無言で頷き、こまめなアドバイスに従い、スイカボール地帯を突破。

 最後の関門、砂の城防御を如何に突破するかは、愛実さんの一声ですぐ決まった。


「スイカの周りに砂の城があるだけだ! 突っ切れユッキー!」

「臆するな! 何も怖くない!」

「砂に塗れるだけだー余裕余裕ー」


 行く手を塞ぐ芸術性の高い砂の城を、臆せずズカズカと壊しながら進み、渾身の振り翳しでスイカを割り、タイムストップ。

 タイムは2分弱。

 目隠し状態でこのタイムなら、かなり大健闘した方だ。


 花音達もタイムを聞き、分かり易く焦りの色を見せていた。

 そんな花音チームは、雛美さんがスイカ割り役に抜擢され、海の家で作戦会議をしに向かった。


 幸兎達も大健闘余韻をそこそこに、障害物設置を始めていた。

 安全確認は僕と空とで分担しながら見守り、順調に作業時間が過ぎて行く。


♢♢♢♢


 作業が大方進んだところで、1人になってる幸兎に聞きたい事があり、今の内に聞いてみた。


「ねぇ幸兎。どうして不利な先攻を選んじゃったの?」

「そりゃ、目隠し経験値を設置に活かす為よぉ」


 幸兎曰く、実際にどの障害物が難しかったか、自分自身で経験した方が、確実に時間を稼げる方法が分かる算段だったそうだ。

 見た目が滅茶苦茶難しそうでも、案外やってみたら簡単で、逆にシンプルなもの程難しかったりする。


「経験上、最初のデコボコ道と、中間のビーチボール地帯が厄介だなぁ」

「うんうん。最後なんか突っ切ってたもんね」

「砂の城作った人には悪ぃけど、あくまでタイムアタックだからなぁ」


 実際、砂の城製作者の白姫さんが、ショックのあまり膝から崩れ落ちてた。

 先攻の魂胆が分かった以上、余計な口出しはせず、しっかり安全確認を全うしないと。


 作業時間ギリギリで障害物設置を完了。

 幸兎チームのコースはこうなった。


 ビーチに打ち上げられていたワカメを、至る所に配置したヌルヌルロード。

 足を強制的にぬからせ時間を稼ぐ、沼穴地帯。

 そしてスイカボールとスイカをごちゃ混ぜにした、惑わせミックス。


 先攻で得た経験値が吉と出るか凶と出るか、いざ本番だ。


 ♢♢♢♢


 スタンバイ完了の雛美さんは堂々とした立ち姿で、目の前の見えないヌルヌルロードにも怖気付いてない。

 スタートの手鳴らし音と同時に、凄まじい跳躍でヌルヌルロードを、少しだけ飛び越えた。


「あと4回繰り返せば、ワカメ道を越えられるよ!」

「もし滑っても、砂浜がクッションになってくれるから大丈夫」

「ババっとビッビっとシュバババーンすれば、パンパラパーっすよ!」


 師走さんの擬音誘導はさておき、花音の正確な誘導プランと、白姫さんの安心フォローを信頼し、あっという間にヌルヌルロードを攻略。

 勢いのまま沼穴地帯に脛丈まではまり、強制鈍化移動されるも、雛美さんはすぐに状況を理解していた。


「雛美! 前に話してくれた、田舎のお祖母ちゃん家の、畑仕事のお手伝いを思い出して!」

「移動速度が遅くなる以外、障害物は何も無いから、どんどん進んで」

「泳いだ方が早いっすよ!」

「「それは佐良さんだけが出来る芸当です」」

「えへへ~そうっすか?」


 アドバイスに頷き、すり足歩行に近い移動でズイズイ進み、30秒で最終関門惑わせミックスに着いてた。

 ヌルヌルロードでガッツリ時間短縮。

 沼穴地帯もお祖母ちゃんお手伝い経験での攻略。


 幸兎チームのクリアタイムより、1分も早い状態だ。

 このままのペースだと、余裕でクリアタイムを上回られ、2敗1分けで幸兎達が負けが確定する。


「スイカボールの群れだから、本物の前までどんどん足で避けちゃって!」

「本物が目前になったら合図出すから、遠慮なくね」

「でもサッカーボールじゃないっすから、蹴るのはどうなんっすか?」

「「真面目ですか」」


 普通なら師走さんのお言葉通りだけど、今は目隠し状態でタイムアタック中だ。

 スイカボールにいちいち躊躇すれば、それこそ大幅ロスだ。


 ご自慢のサッカー脚でボールをぽんぽん飛ばし、本物のスイカがあと数歩先まで迫ってた。

 敗北の文字が過ったまさにその時。

 蹴り飛ばしたスイカボールの1つが、ギャラリーの頭部に跳ね当たり、偶然にも雛美さんの頭に当たり、返って来てた。

 予想外の不意な衝撃に、雛美さんの脚が止まり、何かのトラブルかと思ったのか、キョロキョロと集中が散漫になってた。


「雛美! ただのハプニングだから気にしないで!」


 花音の声でキョロキョロが止み、続け様に花音の的確な方向修正で、状態を持ち直した。

 そしてハプニングを物ともしない振り翳しで、スイカを割った。


 ストップウォッチを止め、タイムを確認すると、僅か1秒差で幸兎チームがギリギリ、勝利していた。


 ♢♢♢♢


 スイカ割りコースの片付けを、祭平建設の人達がやってくれ、感謝しつつ幸兎達は最後の勝負会場に移動。

 海の家前で各チームがテーブルに横並びに座り、スタンバイはあっという間に完了した。


「最後の4番勝負は、かき氷早食いタイムアタックリレーよ」


 順番でかき氷を1人一杯ずつ完食し、早く食べ終わった方が勝ちのシンプルルール。

 順番は姉さんがくじ引きで決め、両チームの順番はこうなった。

 霞さん→峰子さん→愛実さん→幸兎。

 雛美さん→師走さん→白姫さん→花音。


 今までの勝負と違い、身体を動かさない早食いだ。

 誰がどれ程の食の力量なのか未知数な以上、勝負の行方は誰にも分からない。


 霞さんと雛美さんの前に、美味しそうなフルーツかき氷とスプーンが置かれ、最後の勝負の準備が整った。


「準備はいいわね。よーい……ドン!」

「はむ! シャクシャクシャク……」

「シャクシャクシャク……うにぃ……」


 開始数秒の数口で、霞さんが目をキューっと瞑り、ほぼほぼギブアップも同然な空気に。

 隣に座ってる峰子さんが、異変に気付き、肩を掴み物凄く心配してた。


「か、霞! ど、どうした!」

「ち、知覚過敏がぁ……ひぃにゃ……」

「な、なんだと……」


 冷たい物が天敵の知覚過敏は、かき氷との相性は最悪。

 見届け人もチームメンバーも、知覚過敏を和らげるような手助けはご法度。

 その間にも順調に食べ続ける雛美さんとの差が開くのを、見るしか出来ない。


 ルール上、順番交代も出来る訳もなく、どんどん時間が過ぎる中、愛実さんがハッと何か気付いた。


「ハッ! か、カスミン! ち、知覚過敏が片側だけなら、今すぐもう片側の方で食べて!」

「うひぃ……シャク……あ、大丈夫そうだわ。シャクシャクシャクシャク」


 知覚過敏を感じさせない食べっぷりに、峰子さんもホッと胸を撫で下ろし、甘党の霞さんはペースアップ。

 雛美さんに追いつき、霞さんがリードして峰子さんとバトンタッチ。

 盛り上がるギャラリーに拳を掲げる霞さんは、口横に付いてたフルーツをペロッと舐め取り、余裕の笑みを零してた。

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