53話 ビーチフラッグトーナメント、美脚と食い込んだ美尻水着、間違えビキニ、スイカ早割り
2番勝負めはビーチフラッグトーナメント。
うつ伏せ状態から10m先のビーチフラッグを、先に取った方が勝ちのシンプルルール。
脚の速さが重要になってくる。
一番手は峰子さんと雛美さんの身長高低差勝負だ。
両チームの中で一番背の低い雛美さんが、いくら脚が速かろうと、峰子さんの恵まれた体格を活かした、歩幅のリーチがある以上、良い勝負になる筈だ。
スターターの姉さんが手を叩く音で、一気に起き上がった2人。
僅かに雛美さんが一歩リードを決め、独走を決め込む。
しかし峰子さんの踏み込んだ一歩に、一瞬で追い付かれてた。
一歩一歩踏み込む度、雛美さんがどんどん離され、峰子さんが余裕でフラッグを取った。
ギャラリーから歓声と拍手が送られ、盛り上がりも上々。
大まかな盛り上がり要因は、峰子さんのKカップが激しく揺れた事に違いない。
「ナイスファイト峰子師匠!」
「あぁ。勝負できて良かったぞ、雛美」
「あ……こ、こちらこそ……」
握手を交わす雛美さんが、ポーッと顔を赤らめてる。
姉御肌の峰子さんの前じゃ、誰だってそうなってしまう。
2番手は霞さんと白姫さんの美脚美人勝負だ。
うつ伏せの待機状態で、両者の脚線美が魅せられ、ギャラリーから感心声が上がってる。
場を静め、緊張張り詰める中、響いたスタート音に逸早く反応したのは、白姫さんだった。
一直線にフラッグを目指す、フォームの美しいダッシュに、誰しも白姫さんの勝利を確信。
が、ビーチという足場が悪手になり、フラッグ目前で盛大に転倒。
僥倖を逃さまいと、霞さんがフラッグを抜き取り、2勝を飾った。
「うっし! ……大丈夫かー? 手貸すぞー」
「あ、ありがとう」
手を貸し怪我がないか確認した霞さんは、ニコッと微笑みかけ、颯爽と峰子さんとハイタッチ。
潔いよく負けを認め、清々しい顔で自陣に戻る白姫さんは、転倒した弾みで水着がお尻が食い込み、Tバックみたいになってた。
キュッと引き締まった美尻と美脚ウォーキングに、ギャラリーの男達が興奮気味の声を漏らしてた。
3番手は愛実さんと花音の従姉妹勝負だ。
逆鱗の件もあり、どことなく愛実さんの気迫が増してる。
花音も気が気でないまま、うつ伏せで待機するも、押し潰れる横乳ビキニが、無意識に愛実さんを挑発してた。
視線を横乳ビキニだけに向け、ギリギリ歯軋りが止まない愛実さんは、スタート音と同時にダッシュ。
花音も食らい付く様に、強く足元を踏み蹴り、ほぼ同時のタイミングで2人がダイビングキャッチ。
軽く砂煙が舞い、高らかに手を掲げたのは愛実さんだった。
「と、取ったどぉおおおおお!」
堂々と掲げる手には、フラッグのフの字もなく、代わりに別の布らしき物を掴んでた。
「め、愛実ちゃん……わ、私のビキニと間違えてる……」
砂煙が晴れた先には、豊満な胸元を手で隠す、真っ赤な顔花音が愛実さんを見上げてた。
むさ苦しい興奮歓喜声で、愛実さんも時間差で気付きビキニを返し、そのまま身を挺して花音の視界遮蔽物になった。
「マジごめん花音」
「ふ、フラッグは私が取ったからね」
「あ」
しっかりとフラッグを掴んでた花音に、ギャラリーから讃える声が上がり、勝敗は2勝1敗に。
4番手は幸兎と師走さんの最終勝負だ。
正直、幸兎の勝てる見込みは限りなく低い。
勝点が上回ってる分、ポテンシャル自体は充分高く、幸兎の眼も勝利を諦めてない。
「ふっふっふ! 手加減しないっすよ! 幸兎後輩!」
「望むところですよ、師走先輩ぃ……」
握手を交わし、スタンバイを決め、スタートの音が鳴った直後、師走さんがその場から消えた。
そして誰も気付かないまま、フラッグの方角から師走さんの元気な声が聞こえた。
「よっと! あれ? 幸兎後輩? とっくの前にスタートしてるっすよ?」
「は、反射神経も運動能力も何もかも……や、ヤバすぎる……」
息一つ乱れず勝利した師走さんは、ただただ当たり前の事をしたまで。
幸兎がスタートしてない理由も、ギャラリーがザワザワする理由も分からず、師走さんはあわあわと1人で戸惑ってた。
♢♢♢♢
引き分けのビーチフラッグは、勝者の合計タイムが少ない方が勝ちというルールに則り、花音チームが1勝した。
花音チームのキーウーマン師走さんを攻略しない限り、幸兎達の勝利はやって来ない。
「3番勝負めは障害物スイカ早割りよ」
スイカまでの数十mに、相手チームが障害物を幾つか配置。
チームが目隠しスイカ割り役を声で誘導するルールだ。
じゃんけんで勝った幸兎は先攻を選び、スイカ割り役も幸兎自身が名乗り出た。
障害物設置中は相手チームは、海の家で待機する事になってる。
見届け人の積木家は、障害物設置に問題ないかの確認と、海の家休憩を交代する事になってる。
確認は姉さん、僕と空は海の家で休憩を取り、空が作戦会議中の幸兎チームをガン見していた。
「空?」
「スイカップ……前見た時よりもサイズアップしてる……」
「そ、空? お、おーい?」
「ブツブツ……」
ガジガジ指の爪を噛み、視線先が峰子さんだと分かり、これ以上声を掛けるのを止めた。
飛び火する前に姉さんの所へ逃げよう。
そそくさと静かに海の家を出て、姉さん達のいる場所へ駆け出した。
チラチラ背後を気にしつつ、安全確認作業中の姉さんと合流。
「姉さん」
「あら洋。まだ休んでていいのよ」
「て、手伝いたかったから、つい……」
「ふふ……可愛い弟ね」
頭を触れ撫でてくれた姉さんが、ぽわぽわ嬉しさオーラを出し、僕も安心した。
一緒に安全確認作業をしたのもあり、準備時間をだいぶ残し、花音チームの障害物設置が完了。
スタート早々に待ち受ける、絶妙な穴ぼこが広がる、でこぼこビーチロード。
その先に待ち構えるのは、スイカボールを無数に配置した時間稼ぎトラップ。
そしてスイカの周囲に作られた、芸術的な砂の城が行く手を塞ぐ、最終関門。
目隠し状態で進むとなれば、中々に困難な道のりだ。
早速幸兎達を呼びに海の家に戻ると、幸兎が目隠し状態に馴れる練習中だった。
元々目隠し状態でスタート位置まで連れて行く予定だ。
そのまま手を取って移動した方が良さそうだ。
誘導役の愛実さん達には、コース確認も兼ねて先に行って貰い、僕は2人きりになった幸兎の手を握った。
「ひゃん!?」
「わ?! な、何?!」
「よ、洋ぉ?! こ、コホン! て、手握るなら言ってくれよぉ!」
「ご、ごめん」
今まで聞いた事のない女の子らしい声に、幸兎自身もカァーっと耳まで真っ赤になり、握った手もアツアツホカホカで申し訳なかった。




