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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
8章 一個下の後輩
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51話 胸パッド3枚、Gカップと太もも、エリート中のエリート、彼女にとっての逆鱗

 花音と幸兎の柔らかもみくちゃ巻き込まれは、空の手で助け出され、胸の中で守られてる。

 エメラルドグリーンのグラデーションフリンジビキニ姿も、可愛らしく似合ってる空。

 ただ、胸の異様な盛り上がりと、不自然なパフっとした感触に色々と察した。


「空ぁ……無理矢理3枚入れてる感じかぁ?」

「そ、そんなに入れてないヨ」

「ダウトだよ空」


 直球指摘にタラタラ汗を流す空は、僕を人質に見立てて後退り。

 空の元々の良さが、偽りの増し増し胸で損なわれるも、本人は元に戻るのを頑なに拒み続けてる。

 

「背伸びしたいお年頃でも、身の丈に合った格好じゃないと、似合わないんだよぉ」

「こ、来ないで幸ちゃん! 花音先輩!」

「ナチュラルバストを曝け出さない者には問答無用! そりゃ!」


 一瞬で空の背後に回り込み、胸から3枚の肌色パッドが抜き取られ、一枚だけ宙を舞った。

 綺麗な放物線を描くパッドは、入り口に丁度現れたアイスブルーのハイネックビキニと、パレオを巻いた姉さんの頭に着地。


「ん? 何かしら? ……ぺたぺたと温かいわね」

「あれこそ偉大なるHだぞぉ、空ぁ」

「蒼先輩……幸兎先輩よりもデカいっすね……本当に敵じゃなくて良かったっす……」


 薄っすら掻いた額の汗を拭う花音と、くったり灰色になった空。

 せっせとカウンター席に運び、慰めのつもりで頭を撫でてたら、すぐ元通りになった。

 姉さんは未だにパッドの正体が分からず、小首傾げながらモニモニ触れ、気持ち良い感触に夢中だった。


 場も一旦落ち着き、僕もそろそろ座ろうとカウンターの空き席を確認した。

 幸兎と花音の間に一席だけ、わざとらしく空席が残され、何か試されてる気がした。


 無言で視線圧を送る2人に、素直に挟まれる形で座った。

 案の定、両サイドから距離を縮められ、幸兎は素肌のGカップで腕を挟んできた。

 花音には手を握られ、ハリのある触れ心地の良い太ももへと誘われた。

 羨まけしからん両手の花の感触に、今にも意識が持ってかれそうな中、戸羽女さんが人数分のウェルカムドリンクをサービスしてくれた。

 空気を悟ってくれたグッドポーズを、こっそり僕にやってくれ、感謝の一言に尽きた。


 ウェルカムドリンクの飲み途中、太もも触れさせを現状維持してる花音が、幸兎にビシッと口開いた。


「連絡でお伝えした通り、4人チーム制で勝負っすからね!」

「わーてるってのぉ。……お、そろそろ来る頃だなぁ……」


 スマホ片手にチラッと、入り口へ視線を向ける幸兎。

 僕らも同じく視線を向けると、夏の日差しを背にする女性シルエットがバッと現れた。

 女性の正体を目の当たりし、非常に心強いチームメイトが来たんだと確信した。


 横に蒼ラインの入った黒のタンクスーツに、引き締まった女の子らしい体付きの美人さん。

 彼女こそ北高生徒会の師走(しわす)佐良(さら)さん。

 師走さんは運動系が全て万能の、超スポーツ特化女子だ。

 師走さん1人いれば、幸兎のチームは圧倒的に優勢だ。


 キョロキョロ店内を見渡し、幸兎を見つけドンドン接近する師走さんから、思いもよらぬ一声が放たれた。


「花音後輩! 時間通りに来たっすよ!」

「今日はありがとうございますっす! 佐良先輩! って事で、1人目の師走佐良さんっす」

「師走佐良っす! チーム花音の為に頑張るっす!」


 勝ち筋が一瞬で遠退く錯覚を見てしまった。

 花音1人でも充分強いのに、運動系最強の師走さんが加われば、誰だって白旗を振りたくなる。


 幸兎も師走さんが只者でないと分かり、滅多に掻かない汗が頬を伝っていた。

 勝負前からやる気を削ぐ、花音の作戦はもう始まってるんだ。


 そんな圧倒的強者の師走さんが、時間差で僕に気付き、屈託のない笑みを見せてくれた。


「お! 洋後輩じゃないっすか! 夏休みエンジョイしてるっすか?」

「お、お陰様で……あ、あの……2人はご友人で?」

「そうっす! 洋後輩も花音後輩と知り合いなんっすか? 凄い偶然っすね!」


 まるで自分の事のように喜ぶ師走さん。

 見届け人の僕まで、幸兎の敗北が過る中、2つの人影が入り口に立ってた。


「んー……お、いたいた。おーい花音、来たぜー」

「おや、洋君に空ちゃん、蒼さんまでも」

雛美(ひなみ)! 白姫(しらひめ)先輩!」


 雛美と呼ばれた薄紫髪をヘアバンドで纏めた女の子は、今年中学女子サッカー全国大会で優勝を飾った、女子サッカー部強豪校黒紅(くろべに)中学の絶対的エースストライカー、南帝(なみかど)雛美(ひなみ)さんだ。


 絹のように滑らかな灰色のロングヘアーの白姫さんは、僕らと中学まで同級生だった水泳部のエース、朝絹(あさぎぬ)白姫(しらひめ)さんだ。

 両者共に運動部のエリート中のエリート。

 もはや並大抵のチームじゃ絶対に太刀打ちできない布陣だ。


 花音を中心にキャッキャ楽しむ師走さん達が、立ち塞がる分厚い大きな壁に見え、幸兎も無意識に体が強張ってた。


 勝負前から優勢を捥ぎ取った花音の、余裕ある空気感もプレッシャーになり、幸兎が劣勢に押し潰され掛けてる。

 それでも幸兎のチームメイトを信じるしかない。

 そう強く願ったのが通じたのか、思いもよらぬ声が聞こえてきた。


「お待たせユッキー!」

「あつぅー冷たいもん飲みてぇー」

「私が奢るぞ、霞」


 聞き馴染みのある3人の声に、入り口へ視線を向け、目を見開いた。


 バイトの時と同じビキニ姿の愛実さん。

 ブラックのプランジング水着の峰子さん。

 スカイブルーカラーのモノキニ水着の霞さんがやって来たんだ。


 3人が一歩一歩近付く度、灰色景色が色を取り戻し、幸兎の強張ってた体も緩んでた。


「め、愛実ちゃん……」

「ん? って、花音? なんでいんの?」


 花音の余裕だった表情が、愛実さんを視界に入れた途端、物凄く動揺し始めた。

 知り合いなのか2人に聞こうとしたら、一足先に師走さんが聞いてた。


「およ? 愛実後輩も花音後輩の知り合いっすか?」

「あ、佐良先輩! 花音は私の従妹なんですよ!」

「あぁー! 確かに顔が所々似てるっすね!」


 首を痛めそうな速度で、2人の顔を何度も見比べ、満足気に納得した師走さん。

 花音が愛実さんの従妹だったなんて、全然想像し得なかった。

 ただ、花音を見た瞬間から、愛実さんの様子が明らかに平穏でなく、ビリビリ緊張感が張り詰めてた。


「てか、花音。正月に会った時より、絶対胸大きくなってるじゃん」

「ど、努力しただけだよ? せ、成長期も重なってるし、そんな事もあ」

「ない。ねぇ、私に喧嘩売ってる?」


 逆鱗に触れたの如く、今にも花音の胸を鷲掴みして捥ぎ取りそうな恐ろしい表情になってる。


「その無駄にデカくなった分! 物理で捥ぎ取ってやる!」

「愛実のご乱心ー」

 

 楽しそうな霞さんの横で、宥めたそうな峰子さんは、自分が今出るのはマズいと察し、セルフお口チャックしていた。

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