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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
8章 一個下の後輩
50/131

☆50話 隣の定位置、後輩のチーム戦海水浴勝負宣言、噓偽りのないFというボリューム感ビキニ

※2023/7/11文末に森光花音のイラストを追加しました!

※イラストが苦手な方はスルーで!

 花音と幸兎、姉妹のような友好関係が、胸押し潰し合いの睨み合いで、バチバチに火花を散らしてる。

 姉さんが仲裁に入り、お互いに離れさせ一時の休戦に。


「早速暴走してるねぇ……花音ちゃんよぉ……」

「私は至って普通っす。幸兎先輩こそ、洋先輩の保護者面は卒業した方がいいっすよ」

「落ち着きなさい2人共」


 姉さんの一言で睨み合いが止むも、再勃発の空気は全然解消されてない。


「洋。今日は俺が傍にいるから、心配ない」

「う、うん」


 恋次が肩を掴んで、ギュッと引き寄せて、守りに徹してくれてる。

 花音と幸兎はソファーの端々に座り、姉さんの手渡すお茶を同時にコクコク飲み干した。


 場を和ませるのに、無闇に口を挟めば、余計に酷くなるかもしれない。

 もどかしさに耐えてる中、花音がニコニコ僕を見て、ポンポン自分の隣を叩いてた。


「洋先輩! 隣座って下さいっす!」

「洋ぉの定位置はアタシの隣だってのを、忘れちゃったんかい? 後輩ちゃんよぉ……」

「それは今までの話っす。今日から洋先輩の定位置は、私の隣になったっす!」

「随分と自分勝手になったねぇ……けど、今回に限っては、洋ぉが判断する事だなぁ」


 今の状況でどっちかの隣に座るのは、無謀に等しい。 

 そもそもダイニングテーブルで、空と恋次に両挟みされてる以上、わざわざ移動する必要はない。


「こ、ここでいいよ」

「むぅ……!」


 花音がぷっくり片頬を膨らませ、不服な一方。

 幸兎は鼻高々に誇らしげな胸張りドヤポーズを、花音に見せつけてた。


「流石洋ぉだなぁ……って事で、思い通りにはいかんのよぉ、花音さんよぉ……」

「むぅ……無駄に分厚い壁っすね」


 どうにか話題になりそうなものがないか、思考をフル回転させてたら、ふとリビングの飾り付けをしてる理由を思い出した。


 空気を変える話題を振るなら、部活の話が最適なんじゃないかと。

 僕は空気を打ち破るべく、早速花音に聞いてみた。


「そ、そういえば、最後の引退試合はどうだったの?」

「! まだ報告してなかったっすもんね! 沢山話したいことがあるっすから、何から話せばいいっすかね~」

「……ほぅほぅー準決勝で優勝校にPK負けして、全国3位ねぇー」


 試合結果を調べたスマホを、プラプラ花音に見せつける幸兎。

 火に油を注ぐなんてどうかしてる。


「……幸兎先輩なりの戦線布告っすか?」

「花音ちゃんの解釈によっちゃ、そうなるんじゃなぃ?」

「……そうっすか……折角色々用意して貰って悪いっすけど、今日はもう帰るっす」


 元気のない声のまま立ち、僕らにペコっと申し訳なさそうに頭を下げ、リビングを去ろうとしてた。

 そんな花音を見て、ポロッと名前を呼んでた。


「か、花音……」


 ノブを握った手がピタッと止まり、ゆっくりと振り返った花音は、視線を幸兎に向けた。


「明日……藻岩ビーチにて! チーム戦・海水浴場勝負を幸兎先輩に申し込むっす!」

「ほぅ……面白そうじゃん……受けて立ってやんよぉ……」


 全く脈略のない勝負宣言に、詳細も聞かずに迷いなく受けてしまってる。

 花音もすっかり勝負モードに切り替わり、闘志がメラメラ燃え上がってる。


「録音させて貰ったっすから、もう逃げられないっすよ」

「勝気満々なんでご心配なくぅ」

「ぬぬぬぬ……洋先輩! 蒼先輩! 空!」


 急に名前を呼ばれた空は、僕の腕に絡みついたまま体を若干強張らせた。

 姉さんもおかしを食べてる途中で、軽く喉を詰まらせドンドン胸を叩き、涙目だった。


「是非とも明日の見届け人になって欲しいっす!」

「み、見届け人? ぼ、僕は構わないけど、姉さんと空が……」

「海! 行きたい行きたい!」

「けっほ……こ、高校最後の夏に、海の一つでも行かないと勿体ない……えっほ……わよね」

「ありがとうございますっす! では、また明日っす!」


 やる気に満ち溢れたまま、ドタバタと積木家を去っていった花音。

 数十分も満たない濃密な滞在時間に、肩の力が抜けてた。

 恋次と幸兎も、花音が暴走せずに済み、ホッと脱力していた。


「ふぅ……花音の奴、明日が本腰って感じだったなぁ」

「結構頭の回るのが花音だから、想定の範疇だったのかも」


 全ては花音の思惑通りに動いてる。

 恋次達はそう言いたいのかもしれない。

 

「洋。今の内行っておくけど、明日俺は行けないんだ」

「え! もしかして先約?」

「うん。大地達の夏休みの課題を見る約束をしてるんだ」


 恋次に先約を入れた赤鳥君に、どうしようもなく文句を垂れたい気分に駆られた。


 ♢♢♢♢

 

 翌日、一週間前にお世話になった海の家のカウンター席で、戸羽女さんに事情説明し終えた。


「成程……それにしても、1週間で再会するとは思いませんでした」

「僕も同じ心境ですよ、戸羽女さん」

「とりあえず今回はお客さんとしてですし、それなりにサービスしますよ」

「ホントですか? ありがとうございま」

「洋先輩ー! 着替え終わったっすー!」


 入り口方面から大きな声で僕を呼んで、パタパタと近付く花音に、思わず息を呑んだ。

 嘘偽りないFというボリューミー感が、歩くだけで揺れ動き、爽やかなブルーのタイサイドビキニがとても似合ってた。

 花音のビキニ姿に目を離せずにいたら、戸羽女さんが怪訝な顔で、耳を貸せとジェスチャーで訴えてた。


「な、なんですか?」

「……積木さん。瓦子さんには今回の事、言ってあるんですか」

「い、一応連絡しましたけど、今日は出掛けるらしいです……どうして愛実さんの名前が?」

「んー……これはまずいかもしれませんね……」

「?」


 どうして愛実さんの話題で、戸羽女さんがまずいと思ってるんだろう。

 疑問が過る中、目の前まで来た花音がモジモジと、髪先をイジイジと弄り、僕を見つめて来てた。


「に、似合ってるっすかね?」

「う、うん。あ、あんまり直視は出来ないけどね……い、良い意味だからね?」

「にしし! 知ってるっす!」


 少年の様な無邪気な笑い方は、女の子に磨きが掛かった今でも変らない。

 ホッとした気持ちで隣に座る花音に、会わなかった数か月間どうしてたのかを聞こうとしたら、白のフリルローライズビキニ姿の幸兎が、僕の背後に抱き着いてきた。


「アタシも混ぜてくれるよなぁー?」

「な!? 勝負前に洋先輩に触れるのは禁止っす!」

「単なる英気補充だから問題ないだろー? 洋ぉも別にいいだろ?」

「え? まぁ……幸兎だし、いいんじゃない?」

「ににににに……と、兎に角! 勝負が終わるまで洋先輩の接触厳禁っす! これはルールっす!」

「ルール前から触れてるしぃ、問題なしじゃねぇ?」

「へ、屁理屈が通用するとは大間違いっす! てりゃぁ!」


必死に引き剥がす花音、死守する幸兎の柔らかなもみくちゃに、数分間巻き込まれ続けた。

挿絵(By みてみん)

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