☆50話 隣の定位置、後輩のチーム戦海水浴勝負宣言、噓偽りのないFというボリューム感ビキニ
※2023/7/11文末に森光花音のイラストを追加しました!
※イラストが苦手な方はスルーで!
花音と幸兎、姉妹のような友好関係が、胸押し潰し合いの睨み合いで、バチバチに火花を散らしてる。
姉さんが仲裁に入り、お互いに離れさせ一時の休戦に。
「早速暴走してるねぇ……花音ちゃんよぉ……」
「私は至って普通っす。幸兎先輩こそ、洋先輩の保護者面は卒業した方がいいっすよ」
「落ち着きなさい2人共」
姉さんの一言で睨み合いが止むも、再勃発の空気は全然解消されてない。
「洋。今日は俺が傍にいるから、心配ない」
「う、うん」
恋次が肩を掴んで、ギュッと引き寄せて、守りに徹してくれてる。
花音と幸兎はソファーの端々に座り、姉さんの手渡すお茶を同時にコクコク飲み干した。
場を和ませるのに、無闇に口を挟めば、余計に酷くなるかもしれない。
もどかしさに耐えてる中、花音がニコニコ僕を見て、ポンポン自分の隣を叩いてた。
「洋先輩! 隣座って下さいっす!」
「洋ぉの定位置はアタシの隣だってのを、忘れちゃったんかい? 後輩ちゃんよぉ……」
「それは今までの話っす。今日から洋先輩の定位置は、私の隣になったっす!」
「随分と自分勝手になったねぇ……けど、今回に限っては、洋ぉが判断する事だなぁ」
今の状況でどっちかの隣に座るのは、無謀に等しい。
そもそもダイニングテーブルで、空と恋次に両挟みされてる以上、わざわざ移動する必要はない。
「こ、ここでいいよ」
「むぅ……!」
花音がぷっくり片頬を膨らませ、不服な一方。
幸兎は鼻高々に誇らしげな胸張りドヤポーズを、花音に見せつけてた。
「流石洋ぉだなぁ……って事で、思い通りにはいかんのよぉ、花音さんよぉ……」
「むぅ……無駄に分厚い壁っすね」
どうにか話題になりそうなものがないか、思考をフル回転させてたら、ふとリビングの飾り付けをしてる理由を思い出した。
空気を変える話題を振るなら、部活の話が最適なんじゃないかと。
僕は空気を打ち破るべく、早速花音に聞いてみた。
「そ、そういえば、最後の引退試合はどうだったの?」
「! まだ報告してなかったっすもんね! 沢山話したいことがあるっすから、何から話せばいいっすかね~」
「……ほぅほぅー準決勝で優勝校にPK負けして、全国3位ねぇー」
試合結果を調べたスマホを、プラプラ花音に見せつける幸兎。
火に油を注ぐなんてどうかしてる。
「……幸兎先輩なりの戦線布告っすか?」
「花音ちゃんの解釈によっちゃ、そうなるんじゃなぃ?」
「……そうっすか……折角色々用意して貰って悪いっすけど、今日はもう帰るっす」
元気のない声のまま立ち、僕らにペコっと申し訳なさそうに頭を下げ、リビングを去ろうとしてた。
そんな花音を見て、ポロッと名前を呼んでた。
「か、花音……」
ノブを握った手がピタッと止まり、ゆっくりと振り返った花音は、視線を幸兎に向けた。
「明日……藻岩ビーチにて! チーム戦・海水浴場勝負を幸兎先輩に申し込むっす!」
「ほぅ……面白そうじゃん……受けて立ってやんよぉ……」
全く脈略のない勝負宣言に、詳細も聞かずに迷いなく受けてしまってる。
花音もすっかり勝負モードに切り替わり、闘志がメラメラ燃え上がってる。
「録音させて貰ったっすから、もう逃げられないっすよ」
「勝気満々なんでご心配なくぅ」
「ぬぬぬぬ……洋先輩! 蒼先輩! 空!」
急に名前を呼ばれた空は、僕の腕に絡みついたまま体を若干強張らせた。
姉さんもおかしを食べてる途中で、軽く喉を詰まらせドンドン胸を叩き、涙目だった。
「是非とも明日の見届け人になって欲しいっす!」
「み、見届け人? ぼ、僕は構わないけど、姉さんと空が……」
「海! 行きたい行きたい!」
「けっほ……こ、高校最後の夏に、海の一つでも行かないと勿体ない……えっほ……わよね」
「ありがとうございますっす! では、また明日っす!」
やる気に満ち溢れたまま、ドタバタと積木家を去っていった花音。
数十分も満たない濃密な滞在時間に、肩の力が抜けてた。
恋次と幸兎も、花音が暴走せずに済み、ホッと脱力していた。
「ふぅ……花音の奴、明日が本腰って感じだったなぁ」
「結構頭の回るのが花音だから、想定の範疇だったのかも」
全ては花音の思惑通りに動いてる。
恋次達はそう言いたいのかもしれない。
「洋。今の内行っておくけど、明日俺は行けないんだ」
「え! もしかして先約?」
「うん。大地達の夏休みの課題を見る約束をしてるんだ」
恋次に先約を入れた赤鳥君に、どうしようもなく文句を垂れたい気分に駆られた。
♢♢♢♢
翌日、一週間前にお世話になった海の家のカウンター席で、戸羽女さんに事情説明し終えた。
「成程……それにしても、1週間で再会するとは思いませんでした」
「僕も同じ心境ですよ、戸羽女さん」
「とりあえず今回はお客さんとしてですし、それなりにサービスしますよ」
「ホントですか? ありがとうございま」
「洋先輩ー! 着替え終わったっすー!」
入り口方面から大きな声で僕を呼んで、パタパタと近付く花音に、思わず息を呑んだ。
嘘偽りないFというボリューミー感が、歩くだけで揺れ動き、爽やかなブルーのタイサイドビキニがとても似合ってた。
花音のビキニ姿に目を離せずにいたら、戸羽女さんが怪訝な顔で、耳を貸せとジェスチャーで訴えてた。
「な、なんですか?」
「……積木さん。瓦子さんには今回の事、言ってあるんですか」
「い、一応連絡しましたけど、今日は出掛けるらしいです……どうして愛実さんの名前が?」
「んー……これはまずいかもしれませんね……」
「?」
どうして愛実さんの話題で、戸羽女さんがまずいと思ってるんだろう。
疑問が過る中、目の前まで来た花音がモジモジと、髪先をイジイジと弄り、僕を見つめて来てた。
「に、似合ってるっすかね?」
「う、うん。あ、あんまり直視は出来ないけどね……い、良い意味だからね?」
「にしし! 知ってるっす!」
少年の様な無邪気な笑い方は、女の子に磨きが掛かった今でも変らない。
ホッとした気持ちで隣に座る花音に、会わなかった数か月間どうしてたのかを聞こうとしたら、白のフリルローライズビキニ姿の幸兎が、僕の背後に抱き着いてきた。
「アタシも混ぜてくれるよなぁー?」
「な!? 勝負前に洋先輩に触れるのは禁止っす!」
「単なる英気補充だから問題ないだろー? 洋ぉも別にいいだろ?」
「え? まぁ……幸兎だし、いいんじゃない?」
「ににににに……と、兎に角! 勝負が終わるまで洋先輩の接触厳禁っす! これはルールっす!」
「ルール前から触れてるしぃ、問題なしじゃねぇ?」
「へ、屁理屈が通用するとは大間違いっす! てりゃぁ!」
必死に引き剥がす花音、死守する幸兎の柔らかなもみくちゃに、数分間巻き込まれ続けた。




