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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
7章 日々の夏休み
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46話 モテるのにモテない、後悔の指切りげんまん、現タレント女王との出会い、根付いた恋愛観

 電車移動で10分、駅前の大型書店木ノ々屋(きののや)へと着いた。

 冷房の効いた休憩スペースで、体を涼ませのんびりと小休憩。

 充分に休み、エスカレートで2階漫画エリアの最新刊コーナーに一直線に向かい、お目当ての漫画を無事に発見。

 午前中にかなり売れたのか、他の最新刊よりも減り具合が違い、いちファンとして笑みが溢れた。

 前々から気になってた漫画も吟味し、表紙の画風や裏のあらすじを見て、どれを買うか時間を過ごしてたら、パタパタと足早に駆ける足音が耳に入って来た。


 気を削がれたのと、あまり書店内で駆けないで欲しい一心で、足音のした方に赴いてみた。


 長い黒髪の女性が、3階洋書エリアに向かうのがギリギリ見え、一目見たい好奇心が勝った。

 静かに洋書エリアに向かい、女性がどこに向かったか一つ一つ通路を覗き見。

 人の寄り付かなさそうな小難しそうな洋書コーナーに、さっきの黒髪の女性がいた。

 何やら帽子とサングラスの茶髪の女性と、ひそひそ会話中だ。

 バレないよう距離を縮める内、黒髪の女性の姿がハッキリ見え、呉橋会長だと確認出来た。

 挨拶の一つぐらい済ませた方がいいと、思い切って接近するも、茶髪の女性との会話に夢中で気付かれない。

 盗み聞きは悪いと思いつつ、聞く耳を立ててみた。


「ふむふむ……年下の男の子が気になる、美人先輩の不器用ピュアラブコメ……いいですね」

「でしょでしょ? 隅々まで熟読すれば、今度こそ私達はモテる!」

「ゴクリ……星ちゃん……一緒にモテましょうね!」


 ガッチリと結託し合う姿に、類は友を呼ぶとはこの事なんだなと思った。

 茶髪の女性の声が、現タレント女王の草薙クレアさんで、変装もよく見ればクレアさんのまんまだった。


 2人がどう知り合ったか分からずとも、中々に交友関係は深そうだ。


「さて、このまま私の家で熟読会ですね!」

「おぉー! モテモテ美女に私はな……る……」


 背後に立つ僕の存在に、ようやく気付いた呉橋会長は、みるみる顔を真っ赤にさせ、体をぶるぶる震えさせてた。

 クレアさんが何事かと振り向き、君は誰なんでしょうと小首を傾げてた。


 ♢♢♢♢


 お会計後、1階の休憩スペースで、僕らは対面する形で座った。

 ヒィーヒィー声を漏らし、顔を手で隠す呉橋会長が、ここまで恥ずかしがるとは、本当に珍しい。

 クレアさんがよしよし撫で撫でと、大丈夫ですよーと励ましても尚、立ち直る気配がない。


「ヒィー……ヒィー……」

「……呉橋会長……僕が悪かったですから、元に戻って下さい」

「……ぜ、絶対誰にも口外しない?」

「しませんよ」

「ほんとに?」

「はい」

「指切りげんまんして」

「あ、はい」


 うるうる泣きそうな大きな瞳でガン見され、細くしなやかな小指を絡めて指切りげんまん。

 恥ずかしさの熱が小指から伝わり、呉橋会長の絡め具合も力が強まってた。


「ゆ、指切りげんまん……う、嘘付いたら一日私の言う事を聞ーく……」

「え」

「指切った……ひひ」


 断りにくい機に乗じて、わざと恥ずかしがってたんだ。

 頭の回転が良くても、あまり器用じゃないのが呉橋会長なのに、今回はしてやられた。

 さっきまでのヒィーヒィー恥ずかし顔から、勝ち誇ったお調子者の顔でジロジロ見られ、本当に後悔してる。


「うひひ! これで洋君を丸一日好き放題じゃ!」

「なんだか良くわからないけど、やりましたね星ちゃん!」

「クレアちゃん! イエーイ!」


 ハイタッチで喜びを分かち合う美女2人に、有り難くないと感じてるのは僕だけだ。

 そもそもクレアさんとの関係性を話して貰わないと、微妙なモヤモヤが晴れない。


「クレ……草薙さんと結構親しそうですけど、いつ知り合ったんですか」

「およ? 聞きたいかね? 聞きたいかね?」

「言いたくないなら大丈夫です」

「まぁまぁ……この懐広い星ちゃんが、いつ言いたくないと言ったかね?」


 素直に話してくれれば好感度が上がるのに、余計なことを言うんだ。

 ガサツに隣に座り、肩を組んできた呉橋会長は語ってくれた。


「まぁ、出会いを話す前に……前に洋君の最寄り駅で会ったのを覚えてるかね?」

「そりゃ、覚えてますよ」

「なら、友達のお泊まり帰りだったのも?」

「まぁ……言ってた気が……え。草薙さんのとこだったんですか?」

「イエーちゅ……」


 渾身のドヤ顔ポーズが、こんなにも憎たらしいと感じるのは呉橋会長だけ。

 お調子者モードのまま、ペラペラとクレアさんとの出会いエピソードを語り始めた。


 クレアさんがまだ駆け出しの街頭リポーターだった頃。

 初インタビューが当時小学生だった呉橋さんで、一目でクレアさんを憧れの人だと認識したそうだ。

 呉橋会長はクレアさんを画面越しに追い続け、中学の入学式、サプライズ挨拶をしに来たクレアさんと再会を果たした。

 クレアさんも呉橋さんの事を覚えており連絡交換。

 ちょくちょく会って交友を深め、現在の関係に至る。


「私の知らない色んな事を教えてくれた、師匠であって友達なんよ!」

「照れますね~星ちゃんは大事な友達で、お弟子さんです!」

「いや~嬉しいね~」


 2人のテヘテヘ頭を掻くシンクロ姿を見て、今まで紐解けなかった呉橋会長の疑問が解決した。

 モテるのにモテないクレアさんから、色んな事を教えて貰ったのが影響し、モテない呉橋会長が出来上がったんだと。


「てな訳で、今しがた買ったこちらの『アンバランスラブ・年の差なんて関係ない!』を参考に、有効活用出来そうなモテテクを、洋君を実験体にして試します」

「……え?」

「二度は言わないぜベイビー。さぁ! クレアちゃん! 読んでモテテクを見つけるんだ!」

「了解! にょわわわわ!」


 勢いの割に1ページ1ページしっかり読み始めるクレアさん。

 時間が掛かりそうだなと眺めてる一方、呉橋会長が僕の懐に大接近し、ギュッとハグをしてきた。


「な、何してるんですか」

「実験体の心音高鳴り確認係です……ほぉほぉ……私にハグされて心音が速まってますな~」


 いくらモテない呉橋会長でも、美人なのは事実なんだ。

 不意のハグの一つでもされれば、そうもなってしまう。

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