☆36話 可愛い原石の為に、アベン〇ャーズの解散、美脚サンドウィッチ、オフ会のお開き
※2023/6/27文末に真人のイラストを追加しました!
※イラストが苦手な方はスルーで!
ドリンクバーのお代わり中、席替えが実行され、静香さんが空いてる隣席をポンポン叩いてた。
大人しく座り、同じテーブルの琴音さんと忍さんの話に耳を傾けた。
「ほぉ、琴音さんは助産師か」
「えぇ。尊い生命をこの目で見届けたくて、死に物狂いで勉強したわ」
「凄いです凄いですね! 私は陶芸家ですが、一つ一つが我が子のように可愛いです!」
「そうね、生み出された事には変わりないわ……全ては可愛い原石の為に……」
赤ん坊の時から可愛い子に目星を付けてる、それが働いてる動機ならある意味凄い。
今まで詳細不明だった琴音さんが、真っ当な仕事をしてると知れて良かった半分、釈然としない自分がいる。
別のテーブルの様子でも見て、気を紛らわすのに隣テーブルへ視線を向けてみた。
「は、早見さん? い、いくらなんでも食い過ぎじゃないですか?」
「まだ腹二分目ぐらいですよ? あむあむ♪」
「す、すげぇ……ワタシより細ぇのに、ステーキ300g3皿目……」
「いつ見てもいい食べっぷりだよね。次どれ行く?」
「唐揚げ大盛りでお願いしまふ!」
開いた口が塞がらない真人さんとメリアさんを他所に、追加唐揚げを奈々さんに頼む早見さんは、本当に胃袋がモンスター級だ。
ただ野菜を食べると嘘みたいにお腹いっぱいになるんだ。
いざって時はサラダをさり気なく食べさせるつもりだ。
「ツミー! ちょっとこっち来て!」
一番離れたテーブルで、ちょいちょい手招く生天目さんに誘われ、戸羽女さんの隣に座った。
「コホン。唐突なんだけどね? アベ〇ジャーズは今日をもって解散する事にしたの」
「これからはフレンドとして、一緒に楽しもうって意見合致したんだよ♪」
「他のチームにも連絡済みなので、どうぞご了承下さい」
「あ、はい」
トップ同士が納得したのなら、素直に頷くだけだ。
お陰で平和的にサバブラが約束される。
にこやかな空気感に包まれてる一方、隣テーブルの宵絵さん達が空になぜか詰め寄ってた。
「お、お兄ちゃんの癖ですか?」
「そうだ。洋君の実妹である空君だけが知る、表沙汰にしていない癖でも構わない。むしろその方が好ましい!」
「私は空たその、あれやこれや隅々まで知りたい! そして漫画に反映させたい!」
「ひぇ?!」
別目的なのに妙な一体感が生まれ、空が完全にたじたじ。
兄として妹を助けなければ。
「よ、宵絵さん! へ、癖はアレですけど、話せる範囲でなら教えますんで!」
「そうか。私の事も隅々まで教えたいから、隣に来てくれ」
「は、はい!」
宵絵さんの隣に座った直後、腕絡めと肩頭乗せのポジションを確保された。
「私の事を一つ教えるから、洋君も一つ教えるルールでいいか?」
「りょ、了解です。えっと……結構な甘党なんで、町ブラしながらスイーツ巡りを時々してます」
「ほぉ、是非とも町ブラとやらに同行したいな。次は私だな。タイツはいつも40デニールを使用してる」
僕の手をそっと掴み、長い美脚へと挟まれた。
至極の太ももサンドウィッチに、もうどうする事もできないまま、教え合いはしばらく続いた。
♢♢♢♢
楽しい時間ほど瞬く間に過ぎ、オフ会はお開きに。
「それでは積木さん。3日後現地でお待ちしてます」
「はい。また3日後に」
ペコリと静かに帰る戸羽女さんとメリアさん、そして真人さん。
生天目さんは渕上先生達と、自宅で2次会をやるそうだ。
「積木君に空ちゃん、またオフ会しましょうね♪」
「勿論です。空も……多分大丈夫かな?」
「お、お兄ちゃんとなら……ど、どんな事だって乗り越えるよ……」
精神面的に強くなった空は、立っているのがやっとなぐらいダメージも受け、体を抱えて支えてる。
「相変わらず仲良いな。ほんじゃ、夏休み中ハメ外すなよー?」
「大丈夫じゃない? ま、色々と進展するといいね」
「ま、マロンちゃん……ハァハァ……お、お別れのキスをして頂だぶぅ」
「はいはい、帰るぞー」
姿が見えなくなるまで、濃厚な投げキスを空にし続けた琴音さん。
助産師さんと変態が成り立ってるんだから、本当に不思議でたまらない。
「洋君。明日からモーニングコールをしたいのだが、起床時間の午前7時で構わないか?」
「お、OKです。も、もし負担になるようでしたら、すぐに止めて貰っ」
「負担など微塵も感じない。むしろ同じベッドの中で、そっと耳元で囁いて起こしたい」
クールな真剣顔のまま、ポッと頬を赤く染める宵絵さん。
ド直球の言葉には、やっぱり照れてしまう。
「うぅー私も起こして貰いたいな……」
「大和ちゃんは朝起きるの苦手ですもんね!」
「懐かしいー! 学校でやままーの寝癖を皆で治してあげるのが、日課だったよね?」
「あぁ。それを含めいい思い出だ」
「い、今はちゃんと起きれるよ! 寝癖も治せてるもん!」
とは言いつつ、かなりの頻度で寝癖らしきぴょん跳ねをしてる。
渕上先生の可愛らしい名誉の為に、言わないでおこう。
「ツミー! 空りん! 今度はフレンドとしてサバブラやろうね!」
「はい、これからもよろしくです。じゃ、僕らはこれで」
生天目さん達と反対方角に向かい、濃密なオフ会を振り返りながら、自宅へと帰って行った。
♢♢♢♢
風呂上がり、ゆったりとリビングのエアコンで涼み、バイトの件を友達び連絡したところ、全員が10分以内に返事をくれた。
既読後数秒で返事をくれた愛実さんは、死んでも行くと、スタンプ付きでOK。
霞さんも1分以内に返事をくれたものの、接客が無理と、キッパリお断り。
コミュマスタータケトウに至っては、国内旅行中でそもそも無理。
食い付いて来そうなふーちゃん達も、花嫁修行強化合宿が始まると、泣く泣く返事。
千佳さん達も別のバイトで、申し訳なさそうに断られた。
赤鳥君達も私用が重なり、血の涙を流す断念文章が送られてきた。
結果的に愛実さんと一緒に3日間、海の家でバイトする事になった。
嬉しさのあまり足をバタバタさせ、姉さんに声を掛けられて、ハッと我に帰った。
「どうしたの洋」
「ふぉっふ!? ちょ、ちょっと嬉しい事があったから、つい……」
「うふふ。バイト頑張ってね」
気恥ずかしさで頭をぽりぽり掻き、シンプルながら嬉しい激励に感謝した。
「うん、ありがとう姉さん。お土産買えたら買ってくるよ」
「お土産話でも構わないけど、楽しみにしてるわ」
「ふぃー! いいお風呂だったー! あ、凪景さんのドラマ始まるからテレビ付けて付けて!」
バイトまでの数日間、家族と過ごしながら期待に胸躍らせ、あっという間にバイト当日になった。




