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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
5章 三つ巴ゲームイベント
32/131

32話 奥義炸裂、勝者の打ち上げ、天使とのオフ会、トリプルブッキングセッティング

 アンデッド軍団から無事脱出成功し、自陣で何が起きてるのか大急ぎで戻ると、えっさほっさ大量の財宝を置いてくラグナロクがいた。


 渕上先生が一体何を考えてるか分からないが、3位になった理由がこれで判明した。


《りゃ、りゃぐにゃりょくぅうう!?》

《文字入力の動揺が凄いであります! 総指揮官!》


 動揺の満場一致リアクションで、ラグナロクがやっと僕らに気付いた。


 ゆっくり視認し、生天目さんへ近距離詰め。

 ジェネラルスタイルの通常攻撃CQC炸裂。

 通常攻撃CQCは、近くに他プレイヤーがいれば連続で繰り出せる、集団相手向きの攻撃だ。

 ただし連続する為に、画面表示されるコマンド入力する必要がある。

 その間1秒、連続する度に入力コマンドが増える仕様だ。

 ラグナロクは周りのプレイヤーを全て倒すまで続けられ、瞬殺の将軍と異名が付けられた。


 外野の付け入る隙がないまま、生天目さんの残りライフ1の絶体絶命な中、頭上からプレイヤー達が突然降って来た。


 ラグナロクも思わず動きを止める、突然の来訪者こそ、モチモチとスターニンジャだった。

 絶望の天空地ヘブンから落ちて来たんだ。

 生天目さんは間髪入れず、ラグナロクに向け奥義ヘルファイアを放った。

 擦りさえすればライフ全削りの奥義。

 念願のラグナロク打倒まであと一歩のところ、ヘルファイアを可憐に回避。

 マーシンさんも応戦レーザーを撃つも、間合いに入られCQCを食い瞬殺。

 生天目さんもやられ、2人が瞬殺。


 次に僕へと狙いが定めた瞬間、スターニンジャと格闘中だったモチモチが、目の前に現れた。

 代わりにCQCを食らったモチモチが、一瞬だけ見せた笑みで、助けてくれくれたんだと分かった。


 モチモチの身を呈した助けが無駄にならないよう、バックステップで範囲外まで離れた。

 モチモチがやられ、次にゴリリンさんを捉えたラグナロクに、奥義ハートブレイクを撃った。


 範囲外からの不意打ち弾道は、いくらラグナロクでも回避不可能だったのか、鍛え上げられた身体にハート型の貫かれた跡が残り、見事命中した。


《マロン! 足下!》

《へ?》


 ガオガオさんの忠告も虚しく、アンデッド軍団の存在をすっかり忘れた僕は、呆気なくアンデッドに足を噛み付かれ、ライフが0。

 何ともあっけないゲームオーバーになった。


 ♢♢♢♢


「せ、せっかくラグナロクを倒せたのに、凡ミスでアウト……」

「でも、お兄ちゃん! ラグナロク倒したんだよ! しゅごいのぉ!」

「そ、空こそ落ち着いて」


 興奮冷めやらない空も、スターニンジャに倒されたみたいだ。


 敗者は敗者らしく、財宝争奪戦の結末を見届けよう。

 冷蔵庫から冷え冷えジュースと、2人分のコップを運んでると、スマホの着信音が鳴った。

 相手は生天目さんからで、何故か空が密着して聞く耳を立てて来た。

 

「空? 電話出れないんだけど……」

「お構いなく!ほら!早く出て」

「う、うーん……静かにしててね?」

「ふんふん!」

「……も」


《ツミーぃいいいいいいいいいい!》


「のわっ!?」

「み、耳がぁぁ……」


 近距離大声量をダイレクトに食い、キンキン耳鳴りがする。


《あれ? もしもしもし? ん? 通話中になってるよね?》

「す、すみません生天目さん。耳ダメージを食らってました」

《なにぃいい?! だだだ大丈夫!? ワタシがコテンパンにしてあげる!》

「お、お気持ちだけで大丈夫です!」


 生天目さん自身が元凶だってのは、自覚なさそうだから、あえて言わずに流そう。


《そぉ? 何かあればいつでも味方になるからね!》

「あ、ありがとうござ」

《ハッ! ラグナロク倒してくれたんだよね! おめがとう!》


 ありがとうとおめでとうが混ざった言葉は、突っ込んだら負けだ。


《で! ラグナロク討伐を祝って、明日午前10時に広瀬町南ゴストで打ち上げだからね!》

「う、打ち上げですか? 他のチームの皆さんとも?」

《あっちはあっちでやるみたいだから、明日はワタシ達討伐チームだけ! 来るよね!》


 討伐チームとは親交こそ浅いけど、フレンドリーで接し易い人達なのは、この短期間で知れてる。

 それに少規模人数で強制参加の流れなんだ。

 ありがたく参加させていただこう。


「はい、行きます」

《にゃふー! みんなでサバブラ談義に花咲かせられるね! 今からもう楽しみだよ!》


 ぴょんぴょん飛び跳ねるぐらい嬉しいのか、電話越しにトスントスン音が聞こる中、キャッチの音が。


「あの、キャッチ来たみ」

《キャッチ? じゃ、切るね! 明日忘れずに来てね!》


 潔く切られた電話に、ちょっと関心しつつ、キャッチ相手の電話を繋いだ。


《あ、もしもし? 積木君? 本日二度目ましての渕上です!》

「ど、どうも。イベントお疲れ様です」

《そうだね! 積木君もお疲れ様! まさか奥義で倒されちゃうなんて驚いちゃった! パチパチパチ!》


 純粋な気持ちの良い賞賛拍手が、心に染み渡ってくる。

 プライベートでも変わらずに天使な渕上先生に、僕は一生付いて行きたい気持ちだ。


《とにかくおめでとう!》

「はっ。ありがとうございます! これからも渕上先生をサバブラ師匠と崇めます!」

《えへへ♪ 師匠も負けなよう精進します!》


 ピシッと敬礼する姿が、容易に想像できてしまう。


《あ、それでね? 本題入っても良いかな?》

「はい! どうぞ!」

《ありがとう! えっとね!? 前にオフ会したいって言ってたでしょ?》

「勿論覚えてますけど、大丈夫な日確保したんですか?」


《うん! 明日午前10時に、広瀬町南ゴストでやりたいんだよね!》


 聞き違いでなければ、生天目さん達と同じ時間帯で同じ場所だった筈。

 念には念入れて確認しないと。


「えっと……明日の?」

《午前10時!》

「広瀬町南の?」

《ゴスト! 復唱で覚えるのは大事だもんね! 花丸上げちゃうね♪》


 花丸を頂ける大正解。

 このままだとお互いのサバブラ正体がバレてしまう、ダブルブッキングだ。

 せめて時間帯をずれれば、どうにかなるかもしれない。


「じゅ、10時以外はどうなんですか?」

《他のl3人の都合で、早い時間じゃないとダメだったの……ごめんね、積木君……》

「ぐっ……」


 しょんぼり落ち込む姿を想像しただけで、心が滅茶苦茶痛い。

 いっその事、僕らの正体を明かして楽になった方がいいのかもしれない。


「か、確認したかっただけなので……ん? 他の3人の都合って事は……」

《デストロイにペイン、スターニンジャの3人だよ! ダメ……かな?》


 サバブラで恐れられてる3人は、渕上先生のフレンドだ。

 中身は絶対にいい人達に決まってる。


「問題ないです! 皆さんと会うのが楽しみです!」

《本当! ありがとう積木君! 確認も出来たし、長電話もあれだから、そろそろ切るね?》

「へ? あ、はい。明日またです」

《うん! 今日は楽しかったよ! またね! お休みなさい!》


 天使のおやすみなさいを噛み締める間も無く、今度は早見さんから電話が。


「もしもし、早見さん」

《もしもし積木君? モチモチ早見です》

「ぷっ。もちもちな早見さん、こんばんは」

《も、もちもちしてません! わ、わざと間違ったんです! もうもう!》


 実際早見さんは細身美人さんだ。


「す、すみません……ぷっ。面白かったので、つい」

《え! 面白かったんですか! 面白かったのならしょうがないですね! ふふん!》


 人一倍素直な早見さんに、まず助けてくれたお礼を言わないとだ。


「あの、さっきは助けてくれてありがとうございました。お陰でラグナロクを倒せました」

《いえいえ! 敵なのを忘れて、いつもみたいに助けちゃいました。やっぱり積木君とは、一緒のチームがいいですね!》


お互い背中を任せて来た戦友だ。

敵より味方の方が断然良いに決まってる。


「僕も同じ気持ちです」

《以心伝心ってヤツですね! はっ! もしかすると、私が電話して来た理由も分かっちゃったりします?》


 若干不吉な予感がしつつ、それっぽい理由を口にした。


「あ、明日午前10時に、広瀬町南ゴストでオフ会しようって話だったりします?」

《わぁー! 確かにオフ会をしようって話だったんですけど、場所と日時まで決めてくれたんですね! 早速皆に連絡しますね! おやすみなさい!》


 自分でトリプルブッキングを決めてしまった。

 通話を切った早見さんは、フレンドの皆さんに早速連絡し、即返で了承を得たと教えてくれた。

 

 自ら招いたトリプルブッキングに、頭を抱えてると、空が優しく微笑みかけてくれた。


「お兄ちゃん。死ぬ時は一緒だよ」

「死にたくないよ!」


 財宝争奪戦を観戦できる訳もなく、眠れる一夜を越え、三つ巴オフ会当日を迎えた。

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