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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
5章 三つ巴ゲームイベント
30/131

30話 大型イベント本番、今日だけ敵対フレンド、天使の宣戦布告、最悪のスタート

 7月末の週末、サバブラ大型イベント・幻界(げんかい)財宝争奪戦の本番当日だ。


 内容は主に、幻界に隠された財宝を見つけ、自陣に終了時間まで財宝をキープすれば、夢のようなポイント大量獲得、イベント限定アバターが手に入る、チーム制のイベントだ。


 今回もっとも注目されてるのは、日本トッププレイヤー・ラグナロクのチーム参戦だ。

 猛者達が唯一勝てない、完全無欠の絶対強者。


 チーム制限10人と、大人数が有利にも関わらず、ラグナロクは4人チーム。


 ラグナロクチームと相手できる、またとない機会にプレイヤー達は今日という日を待ち侘びてた。


 ある者は敗北を晴らす為。

 ある者は腕試しの為。

 ある者はラグナロクとお近付きになる為。


 純粋にイベントを楽しもうとする者は、ごく一握りだ。


 そして僕は、ムゥムゥこと生天目さんのチームに参戦する。


 イベント開始まで残り10分、オンライン広場で最終確認の真っ最中だ。


《ワタシ達の目標はただ一つ! ラグナロク達のPKプレイヤーキルだよ!》


 ラグナロクに敗れた同志達で結成されたチーム・ア〇ンジャーズは、僕らのチーム以外にも存在している。


 今回の場合、財宝争奪チーム、隠密情報伝達チーム、マップ攻略チーム、そして僕らのPKチーム。

 各5名からなる4チーム計20名が。


《ムゥムゥ総指揮官! 我! 死に物狂いで働くであります!》


 アンドロイドスタイルのマーシンさんは、サポート兼生天目さんの右腕ポジション。


《今度こそ勝利を掴み取るぜ!》


 バーバリアンスタイルのゴリリンさんは、先陣を切る特攻隊長。


《私も! さぁ、マロンちゃんも意気込みを!》

《が、頑張ります!》


 パワースピード重視の獣人(じゅうじん)スタイルのガオガオさんに、背中を押される狙撃手スタイルのマロンの僕は、死角を守る護衛だ。


 魔術師スタイルの生天目さんは、様々なバフや中距離遠距離攻撃を得意とする。


 正直に言えば、ラグナロクチームのPKは無謀も同然だ。


 それでも生天目さんに頼られてる手前、役割を全力で全うするしかない。

 

 最終確認を終える頃、バイキングスタイルのプレイヤーが僕らの近くにやって来た。

 僕がよく知るプレイヤーの1人だ。


《がっはっは! 今日はヨロシクな! ムゥムゥ!》

《あ、モチモチ! ワタシ達の邪魔すれば、ちょちょいのちょいだからね!》

《ご都合約束はできないぜ! じゃ! 楽しもうぜ!》


 バッチリ僕と目が合ったモチモチは、ずかずか上機嫌に去った。

 律儀に敵チームに挨拶回りするのが、最近のモチモチルーティンなんだ。

 ただ、時と場合があまりよろしくない。


《むぅ~! 堂々と宣戦布告するなんて、いい度胸してる! みんな! 絶対勝つよ!》


 案の定、生天目さんの闘争心がメラメラに燃えがってる。

 始まる前に冷静さを失わないか、今から心配だ。


 ♢♢♢♢


 現在時刻19時55分、積木家自宅のリビングにて。

 サバブラの映るテレビ画面を、ソファーで隣に座る空と見ていた。


「……(ながれ)さん。宣戦布告しちゃったね」

「火に油注いじゃマズいよ……どうしよう」


 早見(はやみ)(ながれ)さん、モチモチの正体だ。

 一番フレンド歴の長いOLさんで、オフ会でも会い、連絡も頻繁に取ってる仲だ。


 今回のイベントについても事前説明してたのに、ノリノリの宣戦布告。

 実力を知ってるからこそ、相手したくない1人だ。


「だ、大丈夫だよ、お兄ちゃん! 私がちゃんとお兄ちゃん達に近付かないようにするから!」


 空には僕のアサシンスタイルのレイブンで参戦し、辻褄合わせに付き合って貰ってるんだ。

 1週間一緒に寝るのを条件で快諾してくれた。


 心を落ち着かせ開始まで1分切った時、渕上先生からの着信があった。

 繋げると食い気味で可愛い声が聞こえてきた。


『あ、もしもし積木君? こんばんは! 渕上です!』


「こ、こんばんは。もうイベント始まりますけど、どうしたんですか?」


『ふっふっふ……宣戦布告だよ! 積木君!』


 さぞかし可愛らしい顔で言ってるのが想像出来てしまう。

 かと言って、濃厚な敗北フラグは拭えない。


「わ、わざわざありがとうございます。僕らなりに健闘しますんで、よろしくお願いします」


『楽しみにしてるよ! あ、そうそう! イベント終わった後に、もう一回電話していいかな?』


「? いいですよ?」


『ありがとう! じゃ! またあとで!』


 大変上機嫌な声色のまま電話を切った渕上先生。

 少しは和むも、戦わないとならないから色々と辛い。


 ♢♢♢♢


《大変長らくお待たせしました! これより幻界財宝争奪戦のスタートです!》


 ゲームアナウンス直後、総勢100名のサバブレイヤー達が遥か上空から滑降スタート。


 舞台の幻界は主に、4つのエリアで構成されてる。


 財宝を守る不死軍団が眠る、北の深淵の墓場アンデッド。

 浮遊大地が常に行き交う、西の絶望の天空地ヘブン。

 モンスターが跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)する、東の蹂躙の森アビス。

 プレイヤー即死要素が盛沢山な、南の災厄の大海原モンストロ。


 マップを見下ろす今、真っ先にやる事は自陣確認だ。

 各チームの自陣は、4つのエリア内のどこかにランダム設定される。


 アベ〇ジャーズは深淵の墓場アンデッドだった。


 生天目さん達も自陣視認を終え、作戦通りラグナロクチームの動向を追い始めた。


《そ、総指揮官! ラグナロクチームの姿がありません!》

《にゃ、にゃにぃ?!》


 たった数十秒で見失うなんて、どうなってるんだ。


《あ! めっちゃ下にいたぜ! しかもバラバラに移動してやがる!》


 ゴリリンさんの言葉通り、4つのエリアにそれぞれ急滑降する、豆粒サイズのプレイヤーが4人いた。

 

 スタート直後に自陣確認もせず、急滑降し続けてたんだ。


 大胆過ぎる行動なら、マップを見下ろしてた僕らの視界に入る筈だ。


 もしかすると、ほぼ死角のマップ端から、急滑降したのかもしれない。

 視界の広いFPS視点の限界を狙ったんだ。


 恐らく目的は、一足先に地上へ着く事で、滑降してくるプレイヤーの着地点を予測し、迅速且つスマートに排除する事。


《むぅ! むぅ! むぅぅうううう! マーっちょ! 自陣エリアに向かったのが誰か、早く割り出して!》

《りょ、了解であります!》


 アンドロイドの特性メカニカルアイは、スコープ、レーザー攻撃、回数制限付きライフ感知。

 他にも多彩な機能がある代わり、奥義が唯一無いスタイルだ。


《わ、ワタシ達の自陣エリアに向かったのは……で、デストロイであります!》


 壊し屋スタイルのデストロイ。

 一度視界に入れたプレイヤーを破壊の限りを尽くす、出会いたくない狂人。


 PK作戦を実行するアベ○ジャーズにとって、最悪のスタートになる。

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