21話 大人気アイドルとお揃い、癒しの白肌女神、筋肉痛ドM、三度のドジっ子行為
数分クールダウンを挟み、滝さんが相手決めしてると、赤鳥君が挙手していた。
「何かしら赤鳥君」
「俺俺俺俺俺俺俺が凛道とやって見せます! どうかどうかお願いします!」
わざわざ凛道さんを名指しする程、下心しかない赤鳥君。
屈強オカマ男子が隣にいるのを、すっかり忘れてる様だ。
「心配ないぞ赤チュンチュン。ワタシが本番まで付き合うぞ♪」
「い、嫌だああああああああ!?」
筋肉ホールドをされ、悲しい断末魔が響き渡る。
内心ホッとしてる束の間、凛道さんに次の相手に抜擢。
猫カフェにいる体で、強制的に始まった。
「ね、猫可愛いですね!」
「猫! お腹スンスンしたい!」
トテトテと自分のカバンから、薄手のパーカーを取り出し、猫に見立て始めた凛道さん。
林間学校で貸したままの僕のパーカーだ。
普段から持ち歩いてるなんて思わなかった。
「ふぁ~……落ち着く~……スンスンスンスン……」
「し、幸せそうで良かったデス」
パーカーはもう諦めた方がいいのかもしれない。
次はパフェを食べるシチュエーションで、現物が用意された。
「ん~♪ 冷たくて甘くて最高~♪ あむあむあむ……」
「美味しそうです何よりです」
「うん! ……あ、私ばかりごめん! はい、どうぞ!」
口を付けたスプーンを、そのまま僕の口にイン。
間接キスは完全にアウト案件だ。
平常心を装いながら精神的大ダメージを負う中、最後の小物雑貨店シチュエーションに。
「どれも可愛くて目移りしますね」
「うんうん! あ、これなんかどう?」
再びカバンを漁り、2本の色違いシャーペンを出した。
そのまま青い方を手渡してくれた。
「これでお揃いだね!」
神対応アイドルを前に、ヘラヘラと照れ笑いする以外に、何も出来なかった。
♢♢♢♢
「次は、癒し提供がメインよ」
「い、癒しなら私が!」
高らかに挙手した暗堂さんの希望で、公園でのピクニックシチュエーションになった。
「ひ、ひひひひひ膝枕して上げるね!」
「お、お願いします」
柔もちスベスベなひんやり美脚の膝枕は、暗堂さんの立派な双子山で、美しい顔が一切見えなかった。
「ど、どうかな?」
「へ? あ、とても癒されます……」
顔が見えずとも、癒やされてることには変わり無い。
段々と安眠枕に思えてきた頃合い、ガサゴソとポケットを漁る音が聞こえた。
「み、耳かきしよっか!」
「え、あ、はい」
横に向き直し、2つの意味でドキドキしてると、優しく耳を触れられた。
フニフニと解す様に、絶妙な耳マッサージは極上。
カリコリと耳穴をなぞられ、最高の耳かきに癒された。
「じゃ、じゃあ次は後ろからハグするね!」
「ふぁい……」
骨抜き声の返事のまま、体勢チェンジ。
背面を網羅する至極の背もたれは、滝さんの安全バーとはまた違う、最強の心地良さに瞼が重くなり、自然と目を閉じていた。
「……君……積木君、起きてちょうだい」
「はっ。ここは……カラオケ……ん? どうして横に?」
「眠ってしまったのよ」
「ご、ごめんね積木さん……」
暗堂さんにぺこぺこ謝られ、僕もぺこぺこ謝罪と感謝をし、数分続いた。
「最後は体を動かすのがメインよ」
「照ちゃんが適任ですよ♪」
「りょ、了解であります! で、では積木しゃん! 移動しましょう!」
「い、移動ですか?」
「はい!」
早速滝さんを筆頭に少数精鋭で、別階のスポチャチャに移動。
レンタルのスポーツウェアに着替え、待つこと数分。
スポーツウェア姿の皆さんが登場。
細身で健康的でありながら豊満な滝さん。
既にしっとり艶肌な菊乃城さん。
へそ出し極短スパッツの檜木さん。
「為木君ー! 私達も混ざっていいかなー!」
「ま、待って凛道さん! ま、まだ私の閉まってないから!」
遅れてポニテを揺らす凛道さんが、暗堂さんとやって来た。
暗堂さんは本当に胸元が閉められないのか、手で隠してても、ザックリ胸元の半分以上が見えてた。
「ど、どれから回ります?」
「ボルダリングをやりたいでしゅ!」
「確かに一度はやってみたいものの一つですよね」
ボルダリング前に、軽くストレッチを済ませて移動した。
スタッフさんに命綱諸々を装着され、動きをレクチャーして貰った。
初めてのボルダリングを始め掛けてると、不意に呼ばれた。
「あれ? マイマスター?」
「そ、その呼び方は……時貞さん……外ではダメですって……」
北高の1-D時貞要さん。
球技大会までに運動苦手克服を頼まれ、マイマスターと呼ばれることになった、生粋のドMさん。
「呼び方はともあれ、積極的に体を動かすだけでも、十分進歩ありですよ」
「あ、いえ! 筋肉痛を求めてるだけです! 部位ごとに筋肉痛を味わえる最高な場所です!」
目的が純粋じゃない、私利私欲に塗れてる。
「あ、マイマスターは気になさらず。これはプライベートタイムなので」
「あ、はい。怪我だけしないようにお願いします」
「了解です!」
ボルダリングを始め、ピクピクと登って行く時貞さん。
まだ残っている筋肉痛の快感を、しっかりと味わってるんだ。
「登らないんですか、積木しゃん?」
「あ、先にいいですよ」
先に登って貰い、下から眺めてみる事にした。
長い手足と相性が良いのか、スムーズにどんどん登ってる。
「凄い上手ですね!」
「え、えへへあにゃ!?」
「わ!?」
頭を掻く照れ仕草で手を離し、つるんと綺麗に落ちた。
うつ伏せで着地した以外、何ともなさそうでも、心配だ。
「だ、大丈夫ですか?」
「び、ビックリしました……す、すみませんが、手を貸して頂けませんか……」
「は、はい!」
肩に手を回して貰い、胴体に手を添え、立ち上がろうとした時、檜木さんの足がふらついた。
グッと力を入れ踏み止まるも、胴に添えた手が、ふにょふにょと柔らかい感触に変わってた。
「あにゅっ……」
踏み止まった際、胴に添えた手が、胸に移動してしまったんだ。
手をすぐに退け、直角頭下げで謝罪した。
「す、すすすすみません!?」
「た、助けて頂いてるので、そのぐらいは……」
もじもじと許してくれ、ホッとする僕らを、黙ってムービー撮影する滝さんはグッドポーズをしていた。
♢♢♢♢
次は無数のトランポリンが床一面を埋め尽くした、トランポリンワールド。
暗堂さん達も楽しんでるのか、ぴょんぴょん飛び跳ねて遊んでる。
「高天原! 君! も! ぴょんぴょん! しよ!」
「楽しそうですね凛道さん」
相変わらずの名前間違えてる凛道さんの、色んな物がわがままに揺れ、視線を極力向けずに心掛けてる。
「積木しゃん……! 見て下さい……!」
「ん? お、おぉ! 滅茶苦茶飛んでますね!」
人を軽々しく超えられる物凄いジャンプ。
段々僕の方に接近され、回避の為避けるも、檜木さんも同じ方向に軌道修正。
お互いに回避が間に合わず、強烈なハグ倒しを食らった。
幸いトランポリンだったお陰で、ケガもせずに済んだ。
ただ手を離したタイミングが悪く、檜木さんのお尻が僕の顔面に接近し、そのままゆっくりと着地。
「むぎゅ?!」
「あ、あれ? つ、積木しゃん? どこ行ったんですか?」
「むごご」
「ひゃわ!?」
すぐ飛び退いてくれ、本日二度目の相互ぺこぺこ謝罪で、平和的に解決した。
♢♢♢♢
最後は皆でローラースケートをする事に。
転倒防止のサポーター一式を装着して、準備完了だ。
早速スイスイ滑ってる菊乃城さんに、ちょこちょこ付いて行く凛道さん。
暗堂さんはよちよちと、滝さんと練習中だ。
僕は檜木さんの後ろから腰を掴み、サポートする形で一緒に滑ってる。
「し、しっかり掴んでますか! 積木しゃん!」
「は、はい!」
ヘソ出し姿もあって、女の子の柔らかな生肌に触れてしまってる。
「あ、あの積木しゃん……」
「つ、掴み過ぎましたか!?」
「そ、それはもう少し掴んでくれていいのですけど……これ、どうやって止まるんですか!」
「ぼ、僕も分かりません!」
極端な話、壁にぶつかれば止まれる。
ただ進路上に暗堂さん達が練習中で、今にも衝突しそうだった。
「ひ、檜木さん! 方向転換を!」
「ど、どっちにですか?!」
「み、右で!」
「わ、分かりまぁあああわぁあああ!?」
「うぇぷす!?」
テンパるあまり、方向転換がガッツリ目に効き過ぎて、僕に向かってターン。
お互い足がこんがらがり転倒。
「いたた……だ、大丈夫ですか檜木さ……」
「うぅ……ご、ごめんなさい積木しゃん……私のせいで……」
檜木さんのスパッツが半分脱げて、お尻が半分出ていた。
目の前の景色は見てはいけないと、首が本能的に背き、首を盛大に痛めた。
「あら♪ とりあえずこっちに行きましょうね♪」
「ふぇ……ありがとうございます……美香沙しゃん……」
助けに来た菊乃城さんに無事に救出され、檜木さんが場外へと運ばれた。
僕はその場に寝そべり、一人反省会を開いてると、ぬっと滝さんが見下ろしてきた。
「積木君。スポーツウェアの利点を知ってるかしら」
「え? り、利点ですか? えっと……」
いきなりな問いに、それっぽい理由を考えてる内に、時間切れになった。
「正解は下着を着けなくて済む、よ」
「した……ぎ……」
「皆がそうでないけど、この場にいる皆はそうよ」
質問をしてきた意味を、ようやく理解した。
僕は檜木さんにセクハラ行為を、三度もやってしまったんだ。
休憩所にいる檜木さんに、渾身の土下座。
自分のドジのせいだと土下座返しされ、しばらく土下座譲りになった。




