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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
4章 先代生徒会襲来
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19話 夏休みマジック、先代生徒会、プレイボーイ積木、心強い味方達

 前期終業式の本日、運命の期末テストの行方は、無事全員が補習地獄を回避。

 担任の天羽(てんぱ)先生によれば、1-Bで赤点を取った生徒は誰もいなかったそうだ。


 約束された夏休みの到来に、歓喜の声が教室で響き渡ってる。


「うぉおおお! 補習の無い夏休みぃいいいい! 最高かよぉおおお!」

「ふっ……恋次の兄貴と、市瀬会長に礼しに行くか」

「良かったれふな~」

「し、静かにした方がいいよ……」


 赤鳥君曰く、学生生活で一番いい点を取れたらしい。

 目の下のクマが努力を物語ってる。


 緑岡君も神流崎さんとの勉強会が捗り、学年10位にまで成績アップ。


 初めて赤点回避出来た愛実さんも、大変に喜んでる。


「皆のお陰で、初めて赤点取らずに済んだ! ありがとう!」

「愛実が頑張ったからだ。自分を褒めてくれ」

「うぅ……峰子師匠! 大好きだぁああ!」


 1人じゃ越えられない事も、協力し合えれば乗り越えられる。

 期末テスト期間で改めて教えさせて貰った。


「お、そうだ積木! ホームルーム終わったら、肝試し実行委員会のお疲れ様会に直行だかんな!」

「一緒に行くから大丈夫だよ」

「確かに!」


 延期が続いてたお疲れ様会は、タイミング的に午前終わりの今日がいいと、満場一致で決まったんだ。

 愛実さん達も女子会するそうで、お互いに楽しまないとだ。


 予鈴が鳴るのと同時に、天羽先生が廊下からひょこっと顔だけ見せた。


「皆さん。そろそろ終業式なので、廊下に並んで体育館に行きますよ」


 元気な返事をし、背中に羽が生えたような足取りで、体育館へ移動した。


 ♢♢♢♢


 終業式後のホームルーム直後、天宮寺さんと里夜さんが教室に入って来た。


「洋様♪ 皆様♪ 期末テスト突破おめでとうございます♪」

「おめでとうございます。パフパフ」


 止まない拍手の雨で、どんどんテンションが上がるクラスメイト。

 赤点回避をやり遂げられた皆を、ここまでやる気を出させる夏休みマジックって、本当に凄い。


「つみき君」

「ひょ!? り、里夜先生? い、いつの間に背後に?」

「ふふ。少々わたしとご同行お願いただけますか」

「へ?」


 何も一切教えてくれない里夜さんに連れられ、人通りのない廊下で、ようやく口を開いてくれた。


「実は今、先代生徒会の皆様が来訪してまして、現生徒会の皆様がお相手中なのです」

「先代の……僕が呼ばれる必要は無いような……」

「つみき君が傍にいてくれたら心強い、と、星さんたって希望です」


 呉橋会長の名指し。

 嫌な予感しかしない。


 夏休み目前なのに、あの人は厄介な種を撒かないといけないのか。


 念の為、お断りフレーズを考えてる内に、生徒会室前に着いてた。

 先代生徒会が既に中にいるからか、重苦しいプレッシャーを扉越しに感じる。


 心構えする傍ら、里夜さんが扉を静かにノック。

 バッと開く扉から呉橋会長が顔を見せ、僕の腕を掴んで来た。


「来たね洋君! さぁ入って!」

「のわっ?!」


 強制的に室内に放り込まれ、情けなくもでんぐり返し。

 頭と背中が痛い。


「里夜ちゃん先生もあんがと!」

「いえ。では、わたしはこれで」


 扉が静かに締まり、4つの見知らぬ女性のシルエットが視界に入った。

 明らかに只者じゃない空気を纏い、自然と肝がキュッと冷える感覚がする。


「星。その男子生徒は何だ」

「へ、へい! か、彼が協力してくれる、プレイボーイです!」

「ふぁ?!」


 このモテない会長は何を言い出してるんだ。

 状況が全く飲み込めない僕に、一際プレッシャーの強い女性が目の前に来るや否や、手をスッと差し伸べてきた。


「初めまして、先代生徒会長の乙津(おづ)杏世(あんぜ)だ」

「い、1年の積木洋です……」


 物凄く綺麗な黒髪美人なのに、眼力が異常に強く、恐ろしくて目が離せない。


 杏世さんも視線を一切逸らさず、硬直状態が続く中、残りの3人も急接近。


「アタシ達に協力してくれるんだね! アタシ、山郡(やまごおり)巳乃(みの)だよ!」

海廻(あまめぐり)冴姫(さき)よ♪」

百瀬(ももせ)桃夏(ももか)だ! わっはっは!」


 現役アイドルでも十分通用する、王道可愛い系の山郡さん。

 子持ち感が見える母性の主、聖母系女子の海廻さん。

 小柄なのにボリュミーな、活発元気っ子系の百瀬さん。


 容姿レベルが高過ぎる面々に、近距離で詰め寄られれば、誰だって緊張する。

 現生徒会の皆さんも静かに座り、見守るしかないみたいだ。


「そ、それで……僕は何を協力すればいいのでしょうか……」

「立ち話もなんだ。座ろう」


 来客用ソファーに移動し、包囲される形で座り、耳にだけ集中する事に。


 杏世さん達は華々しいキャンパスライフを送る女子大生。 

 生徒会で培われたカリスマ性、頼り甲斐、秀逸な功績の数々、経験豊富そうな雰囲気から、あらゆる相談ごと、特に恋愛ごとを相談される日々を送ってる。


 しかし4人とも彼氏いない歴=年齢。

 ネット知識で恋愛相談を乗り越えて来たものの、そろそろ限界を感じて来てると。

 そこで先日、晴れて成人を迎えたのを機に、異性と恋愛疑似体験を(たしな)みたい話に行き着き、今に至った。


「で、ヒカリンが最近、男の子の家に遊んだり、泊まったりしてるってのを小耳に挟んでね! その子にお願いしようって話になったの!」


 その男の子って、絶対に僕の事だ。

 僕の知らないところで、省かれた情報を広めた張本人を問い詰めたい。


 会長椅子で吹けもしない口笛で誤魔化し、そっぽ向く呉橋会長に近付き、退路を断つように真正面から詰め寄った。

 

「ひゃ!?」

「呉橋会長……」

「う、嘘付いてないし……あうぅ……」


 実際僕の家で遊んだり、泊まったりしたのは嘘じゃない。

 呉橋会長が顔を真っ赤にさせても、もじもじしても、反省して貰うまで動かない。


「あれがリアル壁ドン……いや、椅子ドン……やはり適任は君しかいない」


 呉橋会長から離れた際、名残り惜しい声を背に、再びソファーに戻った。

 右から海廻さん、左から百瀬さんが腕の触れ合う距離間まで詰めてきた。

 大人の女性の雰囲気が集中を削がれても、ひたすらに耐えるのみ。


「え、えっと……具体的に何に協力すればいいんですか?」

「シンプルに私達とデートをして欲しい」

「……4人一緒にですか」

「1人1デートだ。初日は私だ、明日から頼めるか」


 デート費用は杏世さん達持ちで、内心ホッとするも、4人分のデートプランにも限界がある。


 見えないプレッシャーに押し潰されそうな中、ふと強烈な視線が刺さってるのに気付いた。

 正体は眼光を光らせてる暗堂さんだった。


 ハッと、光る眼光の意図を汲み取り、暗堂さんに軽く頷きを交えたアイコンタクトを取った。

 暗堂さんの光る眼光は、デートプランを練るのを協力してくれるサインだ。

 非常に心強い限りだ。


「都合が悪ければ別日も可能だが、どうだ」

「大丈夫です。やらせて頂きます」

「じゃあ決まりだね!」

「まぁ♪ 男らしいわ♪」

「こりゃ期待だ! わっはっは!」


 海廻さんと百瀬さんの、異なるボリューミー感触の両挟み。

 正面の杏世さんと山郡さんも、期待オーラを分かり易く出し、プレッシャーがより増してる。


 プレッシャーに勝つ為に、やれることは1つ。

 杏世さん達が納得いくデートをする事。


 杏世さん達と連絡先交換後、生徒会室を出ると、里夜さんが僕の荷物を持っていた。


「わざわざありがとうございます」

「いえ。わたしはつみき君の味方ですので」

「心強いです」


 里夜さんに見届けられ、足早にお疲れ様会の場所へと向かった。

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