表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
3章 勉強会合コン
18/131

☆18話 勉強会合コン3日目その2、口走る本音

※2023/4/25文末に泡瀬幸兎のイラストを追加しました!

※2023/4/30文末に春馬恋次のイラストを追加しました!

※イラストが苦手な方はスルーで!

 注文を聞き終え、スタイリッシュに去る峰子さんのカッコ美しい姿を、通路に身を乗り出してまでムービー撮影する蜂園さんは、本当に愛がブレない。


 ただ注文レパートリーが完全にパーティー状態で、誰も勉強道具を出す素振りを見せず、菊乃城さん達とふーちゃん達は既に女子会。


 そもそもテスト期間中、真面目に勉強と睨めっこ出来る人は、ごくごく少数。

 部活やってる人は羽を伸ばせる機会なんだ。

 多少ぐーたらしたところで大丈夫な筈だ。


「洋ぉの為に買ってきた抹茶チョコ、ちょっと食うかぁ?」

「うん、ありがとう幸兎」

「あーん」

「あむ……やっぱり美味しいね」

「ぶっ!? ちょちょちょちょい!? な、何してんだ!?」


 滅茶苦茶動揺しまくる愛実さんが身を乗り出してきた。

 ふーちゃん達の席も、わちゃわちゃと騒がしい。


「よー君! よー君! よー君! 私の口移しも受け取ってくれるよね! ねぇ!」

「ば、馬鹿吹雪! 落ち着けっての!」

「ふっふっふ~洋チン、ワタシとポッヒーゲームして、そのまま愛を育」

「ポリポリ……ポッヒー美味しいですね! 向日葵ちゃん!」

「ぜ、全部食べちゃダメだよ桜チン!?」


 今にも来そうなふーちゃんを、全力の羽交い締めで止めるしゅーちゃん。

 艶めかしさたっぷりのポッヒーゲームを企てる気満々なさーちゃん。

 それを未然に防いでくれた天然さーちゃん。

 

 このまま落ち着かせる方法として、笑顔で手を振ろうとしたら、ふーちゃん達のテーブルに峰子さんが来た。


「お楽しみのところ申し訳ありません。少々落ち着きながら、引き続きお楽しみ頂けないでしょうか?」

「「「「あ、はい……き、気を付けます……」」」」


 短い丁寧な対応で、鎮静化に成功させた。

 勿論、蜂園さんは峰子さんの雄姿をしっかり、ムービー撮影していた。

 こっちはこっちで抜かりない。


「なぁメグちゃん。それに霞ちゃん。折角の機会だしぃ、アタシら女子だけで駄弁らん?」

「の、望むところ! カスミンもいいよな!」

「お、おぅ」

「じゃ、席替え開始ぃ」

「はいはい! ワタシ、ツミーとサバブラ話したい!」

「ぬぬぬ! よー君は私の旦那さんだよ! 私の許可無しには駄目だよ!」

「嘘はよくないよん! そもそもアナタは洋チンとどういった関係なんだよん!」


 生天目さんとふーちゃん達の混戦が、何故か僕らの方まで広がり席がごちゃごちゃ。

 峰子さんの介入で、それぞれ目的に合ったテーブル決めで、どうにか場が納まった。


 ふーちゃん、ひーちゃん、生天目さん、菊乃城さんによる、積木洋関連話テーブル。

 しゅーちゃん、さーちゃん、檜木さんのテスト勉強テーブル。

 幸兎、愛実さん、霞さんの駄弁りテーブル。

 そして愛実さん達の向かいにいる、僕、恋次、赤鳥君、青柳君の男子会テーブル。


 席替え発案者の幸兎曰く、愛実さん達にただの親友だと伝えておくとの事。

 幸兎を信じ愛実さん達を任せるしかない。


 それはそうと、恋次と赤鳥君達が険悪ムードで、嫌な空気だ。


「けっ! 春馬って言ったか? お前、相当モテモテハーレム野郎なんだろ? マジ気に食わんわ!」

「ふっ……リア充は冥府に帰るべきだ」


 本人がいる前で堂々と悪口を吐き、色々と犠牲にしてる2人。

 それでも恋次は爽やかな顔を一切崩さない。


「んー……2人の俺に対するイメージだけど、間違ってるよ」

「嘘コケぇええ!」


 赤鳥君の渾身の叫びが、本物のニワトリに聞こえた。


「じゃあ、これを見てくれる?」

「おぉん? スマホの……連絡先……ん? んっんん!?」


 恋次の連絡先は、家族と僕ら親友2人、残りは全員同性だ。

 決して同性が対象って訳じゃなくて、僕と同じ特殊な体質でこうなってしまうんだ。


「ふっ……な、名前はいくらでも変えられる……つまりフェイクだ!」

「じゃあ、これでどう?」

「おぉん? ……集団写真? 全員男……お、女は!」

「隈なく確認してみて」


 鬼スライドと鬼凝視をしても、異性写真は家族と幸兎しかない。


 だって恋次は、同性の好感度がすぐ爆高になる、特殊体質なんだ。

 勿論、異性との交友関係はあるし、むしろ好感は高い方だ。

 のに、異性に連絡先も遊んだ事も、皆無に近い。

 僕と幸兎がいない時は、同性が一気に集まるのを何度も目撃してるんだ。


 スマホの中身を隈なく確認し終わった赤鳥君達は、若干の焦りを見せてた。


「じゃ、じゃあ今までのバレンタインチョコは!」

「幸と家族、男友達からの友情チョコが沢山だね」

「お、男の人望が分厚い……大地、俺達は誤解してたのかもしれん……」


 疑ってた罪悪感が込み上げ、すっかり俯いてしまった2人に、恋次は爽やかな笑顔で背中に手を添えた。


「大地君、大海君。俺は気にしてないから、早く水に流しちゃおう?」

「「は、春馬さん……」」

「だからじゃないけど、俺は2人と友達になりたいって思うんだけど、どうかな?」

「「れ、恋次の兄貴ぃ!」」


 無事、2人の恋次好感度は爆高、恋次チルドレンの仲間入りだ。


 ♢♢♢♢


 賑やか空気も穏やかになった頃合い、恋次が僕の顔を見てきた。


「来月の今日は、洋の誕生日だね」

「おぉーだなぁ。前祝い、後祝い、どっちがお好みだぁ?」

「うーん……迷っちゃうな」


 毎年恋次達が家に来て、誕生日パーティーを開いてくれて、本当に有難い。


 誕生日がお盆ど真ん中じゃなかったら、前日か後日だって迷わずに済むけど、もう慣れてる。


 当日は父さんの実家に帰省するから、親戚総出で祝ってくれるのが恒例行事だ。

 大宴会並みの大騒ぎが年々エスカレート気味で、今年はどうなるか少し不安でもある。


「つ、積っち……ら、来月の今日って……8月15日だよな?」

「? ですけど……驚きすぎじゃないですか?」

「お、同じ……」

「同じ?」


「わ、私も同じ誕生日……なんだけど……」

「え」


 一瞬愛実さんが何を言ってるか理解出来なかった。


 好きな人と同じ誕生日、こんな偶然ってあり得るのか。

 偶然だとしても、これで愛実さんにプレゼントを渡せる。


 思い切って一緒に皆で誕生日を祝う案を出し、前祝いか後祝いを決めよう。

 そうすればプレゼントも直接渡せる。


「あ、あっと……め、愛実さんが良ければなんですけど、誕生日の前後どちらかで、2人で出掛けませんか?」

「ふ、ふぇ!?」


 今、僕は何を口走ったんだ。

 誕生日の前後どちらかで、2人で出掛けませんか、だっけ。

 これではまるで、皆の前で愛実さんをデートに誘ってるも同然。


 いずれは2人っきりで、どこか出掛けたかったのは間違いない。

 ただ、もっと心の準備と計画を立ててから誘うのが、普通だ。


 緊張で本音を口走ったせいで、愛実さんの顔が驚いたまま固まってる。

 愛実さんの都合も考えず、自分の都合で口走るなんてを最悪だ。


「おーい愛実ー返事してやれー」

「ふぁ! そ、そうだよなカスミン! え、えっと……こ、こちらこそよろしくお願いします……」

「だってよー。……積木、聞こえてんのかー?」

「え?」

「愛実がオッケー出したぞー良かったなー」

「夢……? ふぇふぁ」

「ゆ、夢じゃないって……ぜ、絶対行こうな!」

「ふぁ、ふぁい」


 愛実さんに頬っぺたを引っ張られ、しっかり目を合わせ、絶対に行こうって言ってくれた。

 耳まで真っ赤な愛実さんがそうなら、僕はそれ以上に真っ赤だ。


「私はもう決まってるよ! よー君!」

「うぉ!? ふ、ふーちゃん?」


 ふーちゃん以外の3人も、ふーちゃんの後ろからギュウギュウで詰め寄って来てる。


「ずばり私のプレゼントは婚姻届けだよ! しっかり私の方は記入済みだよ!」


「安直過ぎるねん。ワタシは特製ブレンドの秘薬で、既成事実を作ってあげるよん」


「馬鹿馬鹿! ま、まずはデートだろう! ど、どうだ洋さん!」


「皆でお泊まり会したいです! それで皆と川の字になって寝たいです!」


「ちょ、ちょっと皆!? そ、そんな詰め寄っわぷぅ!?」

「「「「わっ!?」」」」


 狭い隙間で幼馴染4人に押しつぶされ、ほぼ窒息寸前となった僕は、峰子さんの迅速なレスキューによって、助け出された。


 ♢♢♢♢


 時刻はすっかり夕暮れ時、そろそろお開きの時間だ。


 ふーちゃん達と菊乃城さん達は、もう少し残っていくそうで、店内で名残り惜しみつつお別れした。


「あ、そうだ赤鳥君。明日の相手だけど……」

「おい積木おいおい! 俺はなぁ! 市瀬さんの有難いプリントで、それどころじゃねぇから!」

「え。じゃ、じゃあ残りは?」

「今回で終了一択だろ! 大海! 手伝ってくれるか!」

「ふっ……お前の船に乗ってやるか」


 固い結束力で結ばれた2人を、全開の恍惚な笑みで眺める幸兎。

 自分を包み隠さない感情表現は、いつも憧れてしまう。


「大地、俺も力になるよ」

「恋次の兄貴ぃ!」

「ふっ……百人力、いや……千人力以上だな!」

「大袈裟だよ。それじゃ俺らはここで。今日はありがとうね、洋」

「こちらこそありがとう! 今度は遊ぼうね!」


 恋次達の後ろ姿を見届けたことだし、僕らも帰ろう。


 さっきまでいた霞さんと幸兎の姿が見当たらない。

 ポツンと残された愛実さん1人が、ポーッと僕を見つめて、何か言いたそうだった。


「な、なぁ積っち……」

「は、はい」

「と、友達になって結構経つじゃん? だ、だから、そろそろさ……ユッキー達みたいに、タメ口にしてくれると嬉しんだけど……どう?」


 言われてみれば、ずっと敬語もどきじゃ前に進めない。

 

「ハ……うん。少しずつだけど、そうさせて貰おうかな……」

「! いくらでも練習に付き合うから!」

「はい! あ」

「ぷっ。少しずつな?」


 無邪気に笑いながら、優しくフォローしてくれる。

 そんな愛実さんの傍に、少しでも近づけられるよう、これからも頑張りたい。


「そ、そういえば2人は?」

「あそこで見てるぞ? ほら」


 数メートル離れた自動販売機の物陰で、幸兎と霞さんがニヤニヤ顔を見せ楽しんでた。

 一気に恥ずかしさが込み上げ、駅方面にダッシュした僕は、元陸上部の愛実さんにあっさり捕まった。


挿絵(By みてみん)

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ