15話 勉強会合コン2日目その1、東海高校四大美女の幼馴染達
勉強会合コン2日目、東海高校近くの図書館にやって来た、僕ら男性陣4人。
1人足りないのには、しっかりと経緯がある。
昼休みに神流崎さんが緑岡君を、別の勉強会に誘ったんだ。
元々2人は両想いなんだ。
この機に仲を深めて、恋仲に1歩でも近付けたらと思い、快く送り出したって感じだ。
尚、赤鳥君達は2人の恋路に、未だに気付いてない。
「おーい積木ー入らんのかー?」
「あ、今行くよ」
緑岡君と神流崎さんに幸あれ。
心の声が届く様に、願いながら図書館に足を踏み入れた。
二階の広々した読書スペースの一角が、今回の集合場所だ。
2日目の今日、来てくれる女性陣は、進学校でもある東海高校に通う、僕の幼馴染4人だ。
東海高校4大美女と呼ばれるだけあり、個性的で綺麗で可愛いらしく、魅力的な高嶺の花だ。
ただ少しだけ僕に対するアプローチが色々と過激で、毎度毎度会う度に大変なんだ。
「よぉおおおおおおくぅぅぅぅぅううんんっっん!」
「ごぇっ!?」
死角から容赦ない脇腹ロケットダイブタックル。
無防備で無力な僕を押し倒した、美しい白髪ツインテールの彼女こそ、ふーちゃんこと兼森吹雪ちゃんだ。
「スンスンハァ……スンスンハァ……よー君の香り……はぁはぁ……ご飯食べられちゃう……」
「ふ、ふーちゃん……は、離れな……うげぇ!?」
「ダーメ♪ ずーっと離れないもん♪」
華奢で軽い筈なのに、全く身動きが取れない。
ガッツリめに密着され、お腹部分に大きな柔らかい感触がむにゅーって押し潰れ、意識が自然に向いてしまう。
掃除機並みの鼻呼吸と、全身擦りが激しさを増す中、急にふーちゃんの体が離れた。
「こーの! 馬鹿吹雪! 場所考えろ!」
「ブーブー。しゅーちゃんだって、うずうず物陰で身だしなみ整えてたでしょ」
「ばっ!? よ、洋さんがいるのに言うなよ! っ~!」
ドカバキと自分自身の体を殴り、恥ずかしさを誤魔化す赤髪パーマショートボブの彼女は、しゅーちゃんこと市瀬秋子ちゃん。
引き剥がしてくれたお礼の前に、自己暴力型抑制を今すぐ止めないと。
羽交い締めで止めた甲斐あり、割とすぐに大人しくなってくれた。
「よー君にギュッとされてるぅーいいなぁー……むぅー」
「あわわわわ……」
「あ、ごめんね。今離れ」
「イヤ……もう少しギュッとして……」
僕の手に触れ、優しく自分の胴体へと誘導。
ふーちゃんみたいな大きな膨らみが無くとも、細く柔くミントの香りがして、今にも壊れそうな体にドキドキだ。
離れようにも離れられない、情けない僕の背中に、ふーちゃんよりも大きい柔すぎる感触が、急に広がり始めた。
耳元でも甘く囁く吐息も吹かれ、全身がゾクゾクと高揚してしまう。
「ふふふ~ぺったんこな体より、魅惑的な肉感ボディーの方がいいのねん」
「ひ、ひーちゃん……のわっ!?」
「にゃ?! いてて……あ! 向日葵! 洋さんを返せ!」
羽交い締め+美脚絡めで拘束する、ブロンド美女の彼女こそ、ハーフの北坂向日葵ちゃんだ。
引き締まったグラマーボディーで、あらゆる密着誘惑を仕掛けてくる、危険な幼馴染だ。
「ひーちゃんズルい! 次は私の番!」
「おい! まだ私の番だろ!」
「せっかちはモテないよん。しっし」
「「な、なにをぉおおお!」」
「「おわ!?」」
猪突猛進で奪還に移る、ふーちゃんとしゅーちゃん。
三つ巴ムニムニ感触を耐え、抜け出すチャンスを待ち侘びるしかない。
「ぬぬぬ……むにぺたむにぺた邪魔だよん!」
「ぺ、ぺたってねぇって! ちゃんとあるだろ!」
「しゅーちゃん。残念だけど、ひーちゃんが正しいよ」
「こ、このデカチチ共がぁあああ!」
しゅーちゃんの猛攻で、流石のひーちゃんも誘惑拘束が少し緩んだ。
千載一遇のチャンスは今しかない。
このまま正面突破で逃げる。
「そ、そりゃ!」
「「「あ!」」」
見事に脱出成功するも、ひーちゃんの美脚絡めから強引に逃げ出したから、足元がおぼつかない。
どんどんと前進が止まらない中、むにゅんと柔らかに沈む何かに、優しく受け止められた。
「にょわ!? よ、洋ちゃんじゃないですか!」
「ふぁ、ふぁーふぁん! ふぉふ!?」
「なるほど……分かりましたよ洋ちゃん! 吹雪ちゃん達から守ればいいんですね!」
「い、息ふぁ……っ」
窒息寸前の豊満胸埋めで守ってくれる、桃色ロングストレートの彼女は、さーちゃんこと榮倉桜ちゃん。
僕の知る中で、一番天然と言っても過言じゃない、ずば抜けて言動と行動が読みずらい子だ。
胸埋めの現状も、良かれと思ってグイグイ奥へ奥へと、沈ませてきてる。
嬉しいさ半分、苦しさ半分。
無理に引き剥がす事も出来ない。
「あー! さーちゃんに奪われたぁ!」
「胸埋めはワタシの方が相応しいのねん!」
「ぬ、抜け駆け厳禁!」
突撃ダイブしてくるふーちゃん達に、僕らは呆気なく押し倒され、もみくちゃの四面楚歌。
こんな美しく可憐な幼馴染達がいるだけで奇跡的なのに、何故か僕の花嫁候補になってるんだ。
正確には僕の知らない所で、4人が勝手に決めたらしい。
皆と一緒に過ごしたのは、実際幼少期の1年ちょっと。
異なる事情で皆が引っ越してから、詰み体質を自覚し始めて、楽しかった皆との記憶も精一杯な日々を送る内に、どんどん記憶が薄れて霞んでいったんだ。
ふーちゃんと再会するまで、顔も声も薄らぼんやりとしか記憶に残ってなかったのに、皆はずっと昨日の事みたいに覚えてて、申し訳ない気持ちが今でも残ってるんだ。
だからこそ皆の気持ちと向き合い、1人1人に僕の気持ちを伝えないとダメなんだ。
「ふににぃ! よー君の懐は! 私の場所なのにぃい!」
「ど、どこ掴んでるけろ! おっぱい出ちゃうよん!」
「ちょ! す、スカート脱げてるって!」
「これ誰の太ももですか? あ、この付け根のほくろは吹雪ちゃんですね!」
「い、今の内に……」
気持ちを伝えるにしても、もみくちゃ四面楚歌は刺激が強過ぎて、逃げる以外に道はない。
上手く皆の隙を掻い潜り、はい逃げる事には成功。
あとは4人を蚊帳の外から、止めれば一旦落ち着。
「よぉ……積木ぃ……」
赤鳥君達がすぐ側にいるのを、すっかり忘れてた。
「今日もお前の勝ちゲーじゃねぇか、この野郎。八百長か? やらせだろ? 高みの見物は楽しいか?」
「お、落ち着いて赤鳥君……」
日差しを背にする赤鳥君が、とんでもない形相をしてるのは間違いない。
鶏冠みたいな前髪も、どことなく鋭く伸び、殺意が籠ってる気もしなくない。
「ふっ……3次元には興味ないが、堂々とハーレムを見せつけられたら、制裁を下したくなるな……」
「あ、青柳君まで……」
赤鳥君も青柳君も、本気で制裁を下す気満々だ。
2対1なんて絶対太刀打ちできない。
じりじり後退する僕の退路は、既に壁に阻まれてる。
素直に制裁を受け入れるしかない。
覚悟を決めた時、横にも縦にも大きい影が、目の前に現れた。
「まぁまぁ、2人とも~情のまま動くのは、紳士的じゃないれふよ?」
「こ、黄坂君!」
「太……お前はこっちサイドだろうが」
「……裏切る気か」
「ちっちっち……レディー達の前では、常に紳士でないとれふよ?」
黄坂君の指差す先には、もみくちゃ四面楚歌を止め、ジーっと僕らを黙って眺めていた。
レディーの前じゃ見苦しい姿を見せない。
黄坂君なりの信念が僕の盾になってくれた。
ふーちゃん達が見てる中、迂闊に制裁を下せないと分かった2人は、大人しく引き下がってくれた。
「……まぁ、東海高校四大美女とセッティングしてくれたんだもんな。許したる」
「ふっ……美しき3次元女子達を前に、思わず我を見失ってた……俺は2次元を愛す者だった」
「うんうん。良かったれふな~積木殿~」
「あ、ありがとう黄坂君」
にこやかに手を差し伸べる赤鳥君達。
本当に許してくれたかどうか、若干喉に小骨が引っ掛かった感じがした。
「ところで……お三方は誰なんですか?」
さーちゃんの一言で、勉強会に来たことを思い出す僕らだった。




