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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
3章 勉強会合コン
14/131

☆14話 勉強会合コン初日その2

※2023/4/19文末に生天目歩イラストを追加しました!

※イラストが苦手な方はスルーで!

 くじ引きで場所替えが終わり、結果こうなった。


「さぁ、手取り足取り教えちゃうぞ♪ 赤チュンチュン♪」

「ちぇ、チェンジぃいい! むぐっ!?」

「図書室での(さえず)りは厳禁だぞ♪」


 男釜田さんの力強い口封じハンドの前では、赤鳥君も成す術なし。


 赤鳥君の状況よりも、僕自身の現状を冷静に対応しないと。


「つ、積木しゃん……こ、ここって分かりますか?」

「あ、はい。えっと……あ、檜木さんの勉強してるところ……後期の範囲です……」

「へぇ? ……はぅ!?」


 右隣のドジっ子檜木さんは、女性陣の中でまだ詰み要素が弱いと、勝手に思ってたら全く違った。


 Yシャツが2サイズ程大きく、チラチラとYシャツの先の下着が見えてるんだ。


 極力手元に集中してても、ドジっ子オーバーリアクションで視界が向かされるんだ。

 しまいにはオーバーリアクションで立ち上がり、スカートとふととも境界に、下着らしき物がチラ見え。


 一体どうすればそこまで下着がズレてしまうのか。

 理由は分かりたくはないのに、視線を逸らせない自分がいる。


「座って落ち着いて下さい、照」

「ハッ! そ、そうですね……」


 即座にフォローに回ってくれた蜂園さんは、左斜め向かいに座り、スラスラとテスト勉強。

 と、傍から見ればそう見えても、水面下では峰子さんに関する質問を連絡してきてるんだ。


《以前積木クンが、峰子様の水着をお選びになった際の、峰子様の様子を400字以上1200字以内でお答え下さい》


 同系統の文章がこれで5つ目。

 ご丁寧に記入用紙のファイルまで添付され、必ず答えろって圧で釘刺されてる。

 家に帰ったらじっくり答えないと、後々が怖い。


 もし今後、蜂園さんの要求がエスカレートして、いよいよって時には、峰子さんに直接注意して貰えるようお願いしよう。

 

 蜂園さんの質問に目を通す中、真正面の菊乃城さんは再びテーブル下で、脚のいたずらしてきてる。


「んー? どうしましたか積木さん?」


 さも自分は何もしていない風を装い、脚を器用に動かし続ける菊乃城さんは、本当に小悪魔だ。


「い、いえ……な、何も……」

「そうですか♪ 漢成ちゃん達は順調ですか?」

「ノープロブレムだ、ミス美香沙。赤チュンチュンも真面目にやってるぞ♪」

「カエリタイカエリタイカエリタイ……ブツブツ……」


 男釜田さんも成績優秀だもんで、赤鳥君に付きっきりだから、これはこれで良い組み合わせだ。


 一方の残りの男性陣は、それぞれ席の端々で、黙々とテスト勉強中だ。


 結局場所替えで凹状包囲網詰みになり、勉強会合コンが終わるまで自由になれないんだ。


 しかも左隣の生天目さんが、さっきからYシャツをグイグイ引っ張って来てるんだ。


「むぅ! むぅ! むぅぅ!」

「ど、どうしました?」

「サバブラの話! ツミーとしたいのに! むぅむぅ!」


 ぷくーっと頬を膨らませ、涙目の訴えには、流石にテスト勉強を一時中断せざるを得ない。

 キッカケを作ったのは僕なんだ。

 生天目さんが納得するまで責任を果たさないと。


 ♢♢♢♢


「でなでな! ラスト1秒で奇跡の大逆転勝利! 見事優勝したって訳!」

「優勝候補1位チーム相手に凄いですね……確かに当時、話題になってましたもんね」


 去年行われたサバブラのアマチュア県大会で、無名チームが優勝し、見届けていたプレイヤー達がお祭り騒ぎだった。

 僕も空と一緒に、決勝戦のアーカイブを観て、本当に胸熱な展開のオンパレードで、丸一日興奮が冷めなかった。


「だろだろ! 優勝の興奮し過ぎで、筆が止まらんくて三徹したぐらいだし! えっとえっと! これこれ! はい! そん時、描いたやつ!」


 向けられたスマホ画面には、魔術師が魔術を決めてる、最高にカッコいい美麗な油絵が。


「あ、この絵って確か……サバブラの公式イラストで見かけたような……」

「ふふーん! なんせ公式が直々に使用許可を取りに来たヤツだもん! ふっふーん!」

「マジですか! す、凄い……」


 サバブラ愛も然り、一目で虜になる絵の才能は、生天目さんにしか出来ない事だ。


「そうだツミー! 聞いて聞いて! 最近、ワタシがライバル視してる奴らが、急に仲良くチーム組んじゃって、オンプレで無双状態になってんの!」

「え? そ、そんな事になってましたっけ?」

「むぅ! ワタシ嘘つかないもん! むむむむ! むぅ! コイツらの事!」


 色々と柔らかな感触が触れる密着距離で、再びスマホ画面を見せてくれた。

 

 日本ランキング1位のプレイヤー・ラグナロクと、アサシンスタイルのプレイヤー・レイブンとのツーショット画像。


 アサシンことレイブンは僕で、ラグナロクは我が北高の天使先生、渕上先生だ。


 渕上先生がラグナロクだと知ったのは、ここ最近。

 ちょくちょく先生とオンプレで連勝してたけど、話題に上がってただなんて知らなかった。


「でねでね? ラグナロクとレイブンに負けっぱなしじゃ納得行かないから、同志達を集ってアベン〇ャーズを結成したんだ!」

「え」

「そして来月の大型イベントで、アイツらを倒すんだ!」


 ここで正体を明かせば、絶対敵対するだろうし、高校でも敵対されそうで怖い。

 かと言って、即興でこの場を乗り切っても、いずれボロが出るのは目に見えてる。


「で、で、で! 今日会ったのも何かの縁だし、ツミーも一緒に参加してくれない?」


 両手でしっかりと手を包み、純粋なお願い眼差しで見つめられ、断る隙を与えてくれない。


「あ、そういえば、ツミーのプレイヤー名って何? ワタシはムゥムゥだよ! ほら、教えて教えて!」


 昔から何度も対戦してた、魔術師スタイルのプレイヤー・ムゥムゥは生天目さんだとは、話してる内に察せれた。


 生天目さんからすれば、僕がプレイヤー名を教えない理由はどこにもない。

 期待と純粋な眼差しに耐えられる時間も、ずっと黙り込む時間もない。


 覚悟を決め、正体を明かそうと息を呑み込んだ時。

 最終手段が残っている事に気が付いた。


 乗り切るにはこれしかない。

 後悔する前に言ってしまおう。


「ま、マロンです」

「まろん? 栗? なんで?」

「も、モンブランが好きなんで……」


 マロンは空がサバブラで使ってるプレイヤー名だ。

 サバブラ歴もそれなりで、プレイヤーIDも新規じゃないから、疑われる事はない。


 苦し紛れとは言え、乗り切る方法がこれしか思い付かなかったんだ。


「ワタシもモンブラン好き! じゃあじゃあ! テスト終わったら一緒にやろ!」


 引くにも引けない状況に、OKの選択以外残されていない僕は、生天目さんと連絡先を交換した。


 ♢♢♢♢


「それでは皆さん♪ また明日です♪」

「お、お疲れ様でしゅ!」

「お互いにテストを乗り切りましょう」

「明日もガンバローぉ!」

「勉強に困ったら遠慮なく頼っていいからな」


 可愛らしく手を振る女性陣を見届けた僕らは、いつもより色々と疲れ切っていた。

 黄坂君と青柳君に至っては、抜け殻みたいにポケーっとしてる。


「ふ、2人とも大丈夫?」

「……麗しき女性達と同じ空間に長時間居られただけ、幸せだったんれふ……」

「ふっ……所詮、3次元は2次元の成れの果て……コミュニケーションが全く取れなかった事に、悔やんでる訳じゃな……い……さ……」


 無駄のない滑らかな動作で突っ伏す2人。

 緑岡君が背中を擦り慰めても、うんともすんとも反応してない。


 詰み体質の僕の参加で、2人の待ち望んでいた理想の勉強会合コンが実現しなかったんだ。

 初日がこうなるなら、残りの勉強会合コンは僕抜きの4人でやって貰うしかない。

 きっぱり赤鳥君に言えば、納得してくれる筈だ。


「赤と」

「……積木ぃ……明日は期待しておくからな」

「ちょ、は、ハードル上げな」

「貴様の弱音は聞かん! 俺は……俺は! オカマ野郎じゃない、おっぱいのある女子と勉強がしたいんだ……くっ……」


 役者も頷く感情表現でも、欲望は剥き出しなままだ。

 初日は僕らに色んな深い深い傷跡を残し、幕を下ろしたのだった。


挿絵(By みてみん)

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― 新着の感想 ―
[一言] 前作から引き続き楽しませてもらっています。 これからも無理のないペースで頑張って下さい。
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