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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
最終章 球技大会
129/131

☆129話 健闘のハグ、アイドルの指名相手、立派なお胸の2つのアレ

※2024/4/11文末に八田李実梨のイラストを追加しました!

※イラストが苦手な方はスルーで!

 おかず交換会後、仲睦まじい昼食は予鈴前まで続いた。


「ご馳走様でした♪ お互い後半戦も頑張りましょうね♪」


 眞燈ロさんと里夜先生を見送り、分担で机を手早く戻す中、芽白さんがちょこちょこと僕の真横に来た。


「洋くん……卓球頑張ってね」

「ありがとうございます。芽白さんもバレー、ファイトです」

「うん!」


 ちっちゃく胸元で両手ガッツポーズを決め、可愛らしい笑顔で作業に戻って行った。

 呉橋会長も芽白さんみたいな立ち振る舞いを、是非見習って欲しいと切実に思った。


 大体教室が元通りになった頃合い、萌乃ちゃん先輩の元気一杯な笑い声が聞こえて来た。


「ふっふっふ! 決勝で待ってるよ! 愛実ちゃん!」

「望むところ!」


 がっしりと腕絡みする愛実さんは、メラメラと闘魂を燃やしてる。

 相手が萌乃ちゃん先輩であっても、勝利を掴み取る意思を曲げないのが、愛実さんらしかった。


「峰子ちゃん達が相手でも、手は抜かないからね」

「私もそのつもりだ、芽白さん」


 バレー準決勝相手の芽白さんと、健闘のハグをする峰子さん。

 トップクラスのお胸同士がハグで押し潰れ合い、もしあれが詰み場と考えたら、背筋がゾクッとする。

 そんな入れ替わりっ子だった2人による試合を、見届けたいのは山々だけど、僕もやるべき事をやらないとだ。


「イイっすねイイっすね! 後半戦も頑張るっすよぉー!」


 やる気マックスな師走さんは、お昼ご飯の時に聞いた話だと、相手チームに得点を取らせる事なく勝ち進んでるそうだ。

 もはやバスケの優勝は師走さんのクラスで確定だ。


 ♢♢♢♢


 愛実さん達と教室で別れ、心菜さん達と卓球場に戻ると、ギャラリーの数が目に見えて増えてた。

 きっと準決勝に進めなかった生徒達が、間近でアイドル凛道刹那を生で観られる、またとない機会だから集まってるんだ。

 シークレットスターの応援グッズや、口々に凛道さんの名前が話題に上がってるのが、何よりもの証拠だ。

 お陰様で試合前から1-Bは完全アウェイ状態。

 アウェイな空気に飲まれない様にしないと。


「んだらばーまず、リーダー同士じゃんけんしてくれー」


 山々田先生に従い、僕は館国さんと、室戸先輩は川下先輩とじゃんけんした。

 お互い館国さんと川下先輩が勝った。


「決まったなぁーしたら、勝った方は対戦相手をそれぞれ指名してくれー」


 相手を好きに指名出来る。

 それは自分が優位に立てる絶好のチャンスだ。

 1-Aが1分程話し合い、指名相手の僕らの前にそれぞれ立った。


「ウチは鈴木爽を指名する」

「私は馬蝶林さんを」

「ワタシは美鼓さんです」

「よろしくね積木君!」


 ギュッと僕の手を両手で包み込み、胸元が触れるまで引き寄せる握手をする、神対応アイドル凛道さん。

 いくら神対応行為でも、名前を覚えられている同級生男子の存在に、ギャラリーがザワめかない訳がなかった。

 それに凛道さんのボディーガードである、李未梨さんと喜京さんも、ギリギリ歯を鳴らして、殺気の視線を突き刺して来てる。

 いつの日か闇討ちされないか、今から不安でしょうがない。


「うーし、各自台にスタンバイしてくれぇー」


 各卓球台を挟んで対峙する1-Aと僕ら。

 凛道さんは随分と余裕なのか、近くにいる生徒に神ファンサ。

 正直、実戦風景を解析してた際は、実力はあの霧神さんに近しいものを感じてた。

 ただ実際、対峙してみると、そこまで圧を感じず、僕と同格な強さだと思えた。

 きっと凛道さんと霧神さんの大きな違いである、体格差が影響してるからだ。


 先制サーブのじゃんけんで凛道さんが勝ち、試合開始のブザー音が鳴り響いた。


「行くよ積木君! えい!」

「ふん!」

「せい!」

「やー!」


 強さは互角、でも霧神さんに比べたら優しいぐらいだ。


 10回目のラリーで技を仕掛け、インコースがギリギリなのもあって凛道さんは防ぎきれず、1ポイント先取。

 それから取っては取り返されてを繰り広げ、なんとか1ゲームを先取出来た。


「やるね……次からは、そうも行かないよ!」


 早着替え並みにジャージを頭上へ脱ぎ飛ばし、黒のヘソ出しスポーツウェア姿へと変身。

 投げ飛ばしたジャージをキャッチし、丁寧に折り畳んで邪魔にならないコート横に置いた凛道さん。


 一瞬あのチューブトップ姿になるのかと、止めようとするも、昼休み中に着替えが届いたみたいで良かった。

 ただどちらにしても、ギャラリーにとっては神サービスも同然で、歓喜の阿鼻叫喚で卓球場が埋め尽くされてる。


「ねぇ積木君、知ってる?」

「な、何をですか」

「アイドルの私は、皆の声が力になるんだよ!」

「うぉ?!」


 1ゲーム目とは比にならない強烈なテクニックサーブに、危うく追い付けないところだった。

 それでも凛道さんは、更に強烈なショットを間髪入れずに決め、早くも1ポイントを取った。


「これからどんどんヒートアップしちゃうよ! 覚悟!」

「の、望むところ!」


 激戦を繰り広げ、お互い2ゲームずつ取り、勝敗を分ける最後のゲームに。


「はぁはぁ……つ、積木君が相手じゃなかったら、今頃勝ってたとこだよ」

「み、皆の努力を知らずに、そう言い切るのはどうかと思いますよ……はぁはぁ……」

「ご、ごめん……そんな意味合いじゃなかったんだけど……」

「ま、まぁ、if話はこのぐらいにして、僕らの勝敗に白黒つけましょう」

「う、うん!」


 サーブ権を手にしてる以上、必ず先制の1ポイントは取っておきたい。

 額の汗を拭い、どこへ狙い撃つか視線を泳がせてると、ふと凛道さんのスポーツウェアの異変に気付いた。

 何かの見間違えでなければ、立派なお胸の山頂部分に薄っすらと、2つの何かがかろうじて浮き出てる様に見えるんだ。


「どうしたの? 早くしないとサーブ権移っちゃうよ」

「え、あ、い、今やります」


 軽ステップの構えで立派な胸を揺らし、いつでも打ち返す気満々な凛道さん。

 小刻みな動きと角度的に、まだギャラリーが気付いてる様子はない。

 つまり僕だけしか気付いてないから、余計に集中が削がれてしまう。

 内心動揺しっぱなしなまま、無難なサーブを打った。

 拍子抜けな弱攻撃に、容赦のない反撃をされ、数ラリー後に凡ミスでポイントを取られてしまった。


「軽く手を抜いて、体力温存でもしてるのかな?」

「……そ、ソウデス」

「だとしたら無駄だよ。だって私は、舞台で数時間パフォーマンスする体力持ちだからね!」


 これ見よがしに両手を腰に添え、胸をドンと張るやる気ポーズ。

 2つのアレがより強調されて、全然話が入ってこない。


「だから積木君! このまま一気に終わらせてあげる!」

「あぶっ!?」

「てりゃー!」


 集中出来ないまま、凛道さんの猛撃をなんとか打ち返し続け、お互い4ポイント取った状態になった。

 正直、この1ゲームだけで精神体力諸々がごっそり削られ、決勝戦で戦えるかどうか自信がない。


「ふぅ……泣いても笑っても、これで決まるね」

「へ?」

「むぅ……やっぱり積木君って、他の子と違って目が離せないよ」

「ど、どういう意味ですか?」

「それは……自分で考えて……ね!」

「わっ!?」


 渾身の強烈サーブをギリギリで返し、次なる攻撃に備えた時、凛道さんの綺麗なフォームの振りで、ラケットが手からスポッと抜け、僕の返した球を盛大に空振っていた。


 試合終了のブザー音が鳴り、なんとも言えないまま僕が勝利した。


「ま、負けちゃった……うぅ……悔しいなぁー!」


 どうやら手汗で持ち手が滑ったのが原因だったみたいだ。

 本気で悔しがる凛道さんに、ギャラリーから黄色い声と拍手が送られ、グッと気持ちを切り替えて僕に近付いてきた。


「ありがとう積木君! 白熱出来て良かったよ!」

「ど、どうも。あの……ちょっとお耳を……」

「?」


 このタイミングで言わないと、あらぬ噂が広まってしまう可能性があるんだ。

 被害は最小限に抑えてなんぼだ、何も臆せずに言おう。


「……その……胸が……透けてます……」

「むにぇ? ……っ!?」


 ようやくご自分の姿を把握した様で、運動の汗とは違う冷や汗を流し、アイドルスマイルで握手をして来た。


「じゃあ、またね!」


 ヌッと握手を終え、ジャージを手に取り、胸を隠しながら卓球場を足早に去った。

 どうしてすぐに去らず、アイドルスマイルの握手後だったのかは、きっとギャラリーに悟られない為と、僕に迷惑を掛けない為だったと思う。


 兎に角、これでホッと胸を撫で下ろせると安心していたら、不意に誰かの手が肩に置かれた。


「積木ーお疲れさんーリーダーとしてチームメイトを労ってやれよぉー」

「は、はい」


 山々田先生にポンポン肩を叩かれ、心菜さん達の試合がどうなったかを確認した。

 1-Aの3人が3ゲーム先取しており、心菜さん達の今にも泣きそうな顔を見て、ようやくその現実を受け入れられた。

 1-Bの卓球チームは準決勝敗退の戦績を残し、球技大会での戦いに幕を下ろしたんだ。

挿絵(By みてみん)

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