表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
最終章 球技大会
128/131

128話 ドキドキカーニバル状態、生徒会襲来、生徒会長を無力化

 青のスポーツ下着姿で歩み寄ってくる愛実さんが、ニカっと可愛らしく微笑み、グッと顔を近付けてきた。


「お昼、食べよっか!」

「え、あ、うん」


 時計を見たらお昼休みが残り40分。

 後半戦を考えたら、そろそろ食べないといけない頃合いだ。

 愛実さんからは何が待ち受けてるか、内心ドキドキカーニバル状態だったけど、音楽が鳴り止んで静まり返ってる。


「なーに? 皆みたいに何かされたりしちゃったり、期待しちゃったか?」

「ま、まぁ……正直に言えばそうだね」

「そーなんだー♪ そんな積っちに耳寄りな情報です♪」


 耳元に両手を添え、僕にしか聞こえない甘く優しい声で囁いてきた。


「球技大会終わったら、2人っきりでお出掛けします♪」

「え、そ、それってデーむっ」

「だから、それまでお・あ・ず・け♪ ね?」


 口を塞いだ指先を離し、自分の唇にチュッと当てがった愛実さん。

 頬を軽く染めて、クスッと笑みを溢してた。

 まさかの愛実さんの方から、確定デートをしてくれるとは思わず、ドキドキカーニバルが一瞬で息を吹き返してる。


 そのままキュッと手を取られ、昼食用にセッティングされた机に着き、里夜先生が預かってくれてた僕のバッグを手渡してくれた。


「うっし! 着替え完了っと!」


 ものの数秒で着替え終えた愛実さんが、隣の席に座り、皆もそれぞれ机にお弁当を置いた。

 あれだけ時間の掛かってた女性陣の着替えが、たった数十秒で何事もなく終えてる。

 ここは何も言わず受け入れるのが、この場での正解なんだ。


「それでは皆様♪ いただきます♪」

「いただき……って、眞燈ロさん?!」

「うふふ♪ お疲れ様です♪ 洋様♪」


 眞燈ロさんの馴染みっぷりに、里夜さん以外が驚いてた。

 今は敵同士とは言え、今更ご退出願うのはあり得ないし、皆も驚きはするも気にはしてなさそうだ。


「わぁ♪ 皆様のお弁当、どれも美味しそうです♪」

「でしょ! おかず交換会もするんで、天宮寺先……眞燈ロ先輩も是非是非参加して欲しいです!」

「眞燈ロ先輩の料理は絶品だったな……もう一度舌鼓を打ちたい」

「あーしは、一発で胃袋鷲掴みされてっけれどもなー」

「なぁ時間勿体ねぇしよ、早く食おうぜ」


 六華さんの言葉で、改めていただきますをして、おかず交換会が始まった。

 が、教室の扉が勢い良く開かれ、姿を見せた複数の人影によって、余儀なく中断された。


「ドーン! 1-Bの諸君! おつおつのカツカレーライスー!」

「お! また新しい斬新な挨拶っスね! 星先輩!」

「み、皆、急に来ちゃってごめんね?」

「あー! 眞燈ロちゃんもいるー!」


 我が北春高校生徒会役員の4名が襲来。

 というよりかは、呉橋会長に連れられて来た感じだ。


「ほほーん? ほーん? さてさて、私の舌を唸らせられるのは、一体誰のお弁当かなー?」

「呉橋会長。貴方はまごう事なき1-Bの敵、今すぐ回れ右して下さい」

「コラコラ洋君……そんなピリピリしてちゃ、お肌の天敵だぞぉー?」


 全くもって教室を出ようとせず、霞さんと六華さんの間に割り込んで図々しく座り始めてる。

 そんな呉橋会長に代わり、芽白さんがぺこぺこ頭を下げてる始末だ。


「お! 洋君の唐揚げみっけ! 私の青椒肉絲と交換ね?」

「会長マジ抜け駆け野郎じゃん」

「つまり早い者勝ちって事じゃない♪」

「ならばこうしてはおれん! 洋! 私の手捏ねハンバーグ300gとおかず一品を交換してくれ!」


 瑠衣さんの発言を皮切りに、女性陣に美味しそうなおかずを差し向けられ、渋滞が発生。

 一旦落ち着いて貰おうにも、呉橋会長がこの場にいる限り、平和がやって来ない。


 どうにか状況打破できないか、脳内をフル回転してる最中、僕のスマホの着信バイブ音が鳴り始めた。


 パッと着信相手を見て、静香さんが助言してくれた、呉橋会長をスマホ一つで無力化させる方法が、ようやく叶うんだと内心ガッツポーズを決めた。


 あとはこのまま、電話を呉橋会長に出て貰うだけで、ミッションコンプリートだ。


「呉橋会長、すみませんけど、この電話に出て貰えますか」

「あむあむ……んぇ? なんか言った?」

「……出ないと後悔しますよ」

「うぷぷ! 今更私をどうこうしようって話かい? 何をしたって無駄無駄♪」

「今繋げたんで、無駄かどうかは、その耳で確かめて下さい」

「もう……しょうがない人だね洋君ったら♪ この優しくてチャーミングで、美しい懐深い星ちゃんが出てやろうじゃない! はーい♪ もしもしー? どちら様ですかぁー?」

『私だ、星ちゃん』

「し、忍ちゃん……ひゃぴぃ……」


 スマホ一つで無力化する方法は、呉橋家長女で呉橋会長が大好きな忍さんに連絡する事。

 忍さんの声を聞いただけで、横柄だった態度が、耳垂れ子ウサギみたいにプルプルと怯えてる。


『今しがた遊優(ゆゆ)と一緒に校門にいる。生徒会室で落ち合うぞ』

「あ、え、ま、ちょ?! し、仕事は?!」

『ノルマは終わらせた。しかし、今日が球技大会本番だと何故知らせなかった』

「あ、う、だ」

『言い訳無用。黙っていたペナルティーはペナルティーだ。いつもの言葉を言ってくれ』

「ま、待って!? こ、ここじゃ無理だよ!?」

『今すぐ言わないと、拡声器を使って北高生達に、星ちゃんの100の事を広め』

「わ、分かったからやめて!?」


 皆の視線が突き刺さる中、滝の様な汗を流し、徐々に赤面する呉橋会長は、グギギと僕を涙目で睨み付けてる。

 ここまで来たらもう怖いもの無しだ。


「いつもの、言ってあげて下さい」

「お、おにょれぇぇ……」

『時間が勿体無い。3、2、1、キュー』

「し、忍ちゃん愛してるよ! チュッチュッチュー!」

『私も愛してるぞ星ちゃん。生徒会室で会おう』


 通話の切れる音が聞こえ、呉橋会長は精神的大ダメージでフリーズ。

 ただ本能的に、この場にはいられないと分かったのか、ゾンビみたいな動きで教室の扉へと向かってた。


 このまま行かせるのもありだけど、僕らを振り回した分のお返しがまだ済んでいない。

 多少悪いとは思いながらも、トドメの言葉を言った。


「あ、呉橋会長以外の皆さんは、残って貰ってもいいですよ」

「お! イイっすか!」

「あ、ありがとう洋くん!」

「わーい♪ 流石洋お兄ちゃんだね!」

「ち、ちくちょぉおおお!」


 悔しく言葉を吐き捨てて、教室を走り去って行った呉橋会長。

 あとは予定通り、忍さんと次女の遊優さんに、呉橋会長の精神体力諸々を削って貰い、後半戦を早々に離脱させる。

 そして恐らく、呉橋会長が大好きな室戸先輩も、少なからず影響されるだろうから、卓球はまともに機能しない筈だ。

 上手くいけば3-Bは、前半戦みたいな統率は無くなって、劣勢を強いられると思う。


「それでは仕切り直しまして♪ おかず交換会を始めましょうか♪」


 眞燈ロさんの一声で、おかず交換会が再開。

 各々が再び、僕に多種多様のおかずを差し向けてきた。

 交換するのはイイとして、皆には少々言っておかないと。


「あ、あの! 唐揚げは一つだけ残して下さい! 姉さんが僕の大好物の味付けにしてくれたんで!」

「ほぉ、蒼さん直伝の洋好みの唐揚げか。しっかりと口で覚えておかないとだ」

「何個かに分割して、シェアしよ」

「だな! 積っちの為にいつか再現すっぞー!」


 唐揚げをちゃんと一つ残し、おかず交換した女性陣は、唐揚げ達を綺麗に分割シェア。

 一噛み一噛みを大事に味わい、ブツブツと意見交換し合う姿は、審査員さながらの光景だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ