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積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
19章 球技大会前の日々
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120話 フラッシュバック、可愛いマネージャー達、完全拘束窒息胸埋め、残り一週間ちょっと

 肌色の夢からハッと目が覚めたら、見知らぬ部屋のベッドの上だった。

 整理整頓の行き届いた室内に、北高の制服が掛けてあり、馬蝶林さんの部屋だと思われる。

 壁の時計を見ると、気を失ってから大体1時間経ったみたいだ。


「のぼせちゃうなんて、ダサいな……」


 1人反省会を開催してたら、おでこに冷えピタに気付いた。

 腰巻きタオル姿だったのも、触り心地の最高なバスローブ姿に変わってた。


 ここまで運んでくれ、着替えさせてくれた事は、とても有難い限りだ。

 同時に僕の()も見られたって事になる。


「……こ、この事は触れないでおこう。うん、そうしよう!」


 自分の為、皆の為、何も聞かず平和に過ごす。


 そうと決まれば、皆と合流しないとだ。


 部屋を出ると丁度、こっちに向かって来るパジャマ姿の実々花ちゃんと目が合った。


「あ! 生き返った! おーいー! みんなー! リビングデッドだぁああー!」

「……行っちゃった」


 大声で報告する実々花ちゃんに続き、リビングに入った途端、申し訳なさそうな表情の女性陣に取り囲まれた。


「無礼講とはいえ、少々強引過ぎたわ。ごめんなさい」

「楽しくて大胆になっちゃってた。ごめちゃい」

「久し振りのお兄ちゃんとのお風呂だったから、ついつい嬉しくて色々と我慢出来ませんでした! ごめんなさい!」

「お泊まり会に舞い上がってて、恥じらいという防衛心を忘れてました!」


「す、過ぎた事なんで気にしないで下さい」


 怒涛の謝罪ラッシュに後退りしてたら、ジュースを片手に持った実々花ちゃんが、僕の肩に手を置いて来た。


「みんな良かったじゃん! 洋ちゃんお兄ちゃんさんが優男でさぁー!」

「貴方もこっち側よ、実々花」

「ま、マジ? そうなんか洋ちゃんお兄ちゃんさん!?」

「ど、どちらかと言えば、そうかな」


 詳細こそ口に出せずとも、実々花ちゃんは露天風呂での事を今更ながら察し、顔色を青くしてた。


「さ、サーセンしたぁあああ! 毛無しボディーをこれみよがしに見せ」

「言わなくても大丈夫だから!?」


 実々花ちゃんの言質で、露天風呂での肌色景色がフラッシュバック。

 目の前にいる女性陣が一瞬、肌色景色に見え、軽く足下がよろけた。

 この有様だと数日間は、肌色景色のフラッシュバックを引き摺るだろうから、細心の注意を払わないと。


 とりあえず、皆の謝罪も受け入れたんだ。

 お風呂での件はきっぱり終わりにして、別の気になってる話題を振ろう。


「そ、そう言えば鈴木さんは?」

「ワタシと一緒にストレッチした後、すぐに寝ちゃったよ」

「今日1日沢山動いて、沢山食べて、疲れも通り越してハイになってたのよ」


 確かに丸一日ハードスケジュールで、気が少しでも緩んだら、今すぐにでも眠ってしまいそうなんだ。

 明日も1日練習なんだ。

 早めに身体を休めた方がいいものの、霧神さんだけツンツンと指先を合わせて、しょぼくれていた。


「折角のお泊まり会だったけど、爽ちゃん抜きに楽しむのは違うから、今日は諦めるよ……」

「また泊まりに来ればいいのよ、司ちゃん。いつでも歓迎するわ」

「野乃花ちゃん……うぅ……だいちゅき!」


 お泊まり会のお誘いと、霧神さんの参加に、一時はどうなるかと内心ヒヤヒヤしっぱなしだった。

 でも流れ的に、静かに幕を下ろしそうだ。


 ♢♢♢♢


 会話やテレビを見たり、午後9時を回る頃には、皆ウトウトと船を漕ぎ始めていた。

 霧神さんたっての希望で、リビングと隣接する和室に布団がセッティングされ、川の字状態で準備万端だ。


 ただ僕は空と2人っきりで寝る約束があるんだ。

 実々花ちゃんに来客用の寝室へと、案内して貰った。


 ホテルさながらの室内には、2台のふかふか気持ち良さそうなベッドが目立ち、このまま横になれば爆睡間違いなしだ。


「ほんじゃ、また明日6時ピッタシに起こしに来っから!」

「アラームあるから大丈夫だよ。お兄ちゃんもいるし」

「んな甘ったれてたら、二度寝待ったなしじゃんか! それに比べて、わたし目覚ましは100パー起きれる!」


 手をブンブン往復するモーションが、実々花ちゃん目覚ましなら、確かに痛みで100%起きれそうだ。


「す、すごい自信があるんだね」

「ふふーん! そうだZE☆ 洋ちゃんお兄ちゃんさん☆ 明日の朝、その身を持って分らせてやるさ! ほな今度こそ、おやんすみ!」


 キザなポーズを決め、ドタバタと出て行った。

 念の為、実々花ちゃん目覚ましに備え、5分前にアラームを設定しておいた。


「これで良し……明日も6時起きだし、もう寝ようか」

「むぅ……ちょっとお喋りしたい」

「んー……ちょっとだけだよ」

「わーい!」


 ピョンと僕のベッドに寝そべり、嬉しそうにパタパタと足を動かす空は、まだまだ元気いっぱいだ。


「ねぇお兄ちゃん! 私も明日、お兄ちゃん達と一緒にいていい?」

「いいけど、練習するだけだよ」

「うん分かってるよ。だからこそ、マネージャーも必要でしょ?」

「マネージャー?」


 思い返せば、飲み物を飲み干した時、汗だくで自販機に買いに行ったり、タオルも簡単に交換出来なかったり、細々した行動が少し面倒だと思ってた。


 空達がマネージャーになるなら、痒い所に手が届くサポートをしてくれ、今日よりも集中出来る筈だ。


「面倒掛けるかもだけど、頼りにしてるよ」

「うん! ドンと何でもお任せあれ!」


 それからお喋りに花咲かせ、30分もしない内に空が寝落ちして、自分のベッドまで運んで、僕もベッドに戻りすぐに目を閉じて眠った。


 ♢♢♢♢


 就寝してしばらく、生暖かい温もりの息苦しさを覚え、ハッと目が覚めた。

 眠気眼の瞬きを数回繰り返し、視界が鮮明に戻った時。

 謎の息苦しさの正体が分かった。


 何故かどうしてか目と鼻の先に、今にも溢れそうな大きな大きな生肌の胸があったんだ。


「ど、どうなってるんだ……」

「待ってぇょ……ぇぃ……ちゅかまえたぁ……」

「んぐっ?!」

「にゃむにゃむ……逃げちゃダメだよぉ……」


 生肌胸と声の主である霧神さんが、何かを捕まえる夢を見てる影響で、現実でもガバッと目の前にいる僕を、ギュッと胸埋めして来た。


 更には長い脚にも絡まれ、完全拘束窒息胸埋め。

 必死に呼吸しながら、ジタバタ動いて気付いて貰うしかなかった。


「くしゅぐったいよぉ……にゃむにゃむ……」

「んんん!?」


 気付かれる兆しが見えないまま5分間。

 動き続け全身に薄っすら汗を掻き、息苦しさが荒々しくなる中、ペタペタと接近する足音が聞こえて来た。


「おはー! 6時になる……およよ~? 洋ちゃんお兄ちゃんさん~赤ちゃんみたいにおっぱいを無我夢中で貪ってるじゃん!」

「ん、んんんんー!」

「わーてるわーてる。邪魔しないから、存分に司ちゃんお姉さんのおっぱいを楽しん」

「んんんー!」

「にっひっひ! 嘘だっつうの! 今助けますってーの!」


 ググッと胴体を掴まれ、グイグイと力づくで引っ張られ、スポッと解放に成功。

 ただ、引っ張った反動が思いの外激しく、僕を巻き込んで実々花ちゃんが転倒した。


「いたた……だ、大丈夫、実々花ちゃ」

「みゃん!?」


 転倒のごちゃごちゃで、実々花ちゃんのパジャマの隙間に、僕の手が入り込んで、生肌の胸を揉んでいたんだ。

 速やかに手を除け、瞬時に下がりながら、土下座をした。


「ご、ごめん! 事故だとしても、嫌だったよね!」

「い、嫌じゃなかったし……むしろ、気持ち良……んっん! つ、次は許可を得てからでヨロシク!」

「い、いやいや、ダメでしょ」

「な、なーんだ残念! あーあ! もったいなー!」


 顔を赤くしたまま、プイッとそっぽ向く実々花ちゃんは、もう少々言葉選びを自覚した方がいいのかもしれない。


 それにしても、いつの間に霧神さん達の寝ている和室に来たんだろう。

 状況がいまいち見えない中、足を音が再び接近していた。


「あら、起きたのね積木くん、おはよう」

「ば、馬蝶林さん、おはようございます!」

「元気な寝起きね。朝のルーティンが済んだら、朝食の準備手伝ってくれるかしら」

「よ、喜んで!」

「良い返事だわ。実々花はみんなを起こして頂戴」

「アイアイアイサー! それぇー! 起きろぉー! 司ちゃんお姉さん! 爽ちゃんお姉さん! 心菜ちゃんお姉さん!」


 馬蝶林さんの言われた通りに、トイレや洗顔歯磨きの朝のルーティンと、軽くシャワーと着替えを済ませ、アイランドキッチンで朝食作りを始めた。


 ♢♢♢♢


 洋朝食を頂き、総合体育館で空と実々花ちゃんの渾身的なサポートの下で練習に励み、日が暮れる前に現地解散する事になった。


「き、筋肉痛が悲鳴上げてるよぉ……いひゃい……」

「家に帰るまでが練習よ、爽ちゃん」

「司んは何ともないん?」

「うん! むしろ動き足りないよ!」

「体力モンスターじゃん。やば」

「わたしのマネ力、パナかったわぁ! 我ながら良い仕事した!」

「本当に助かったよ、実々花ちゃん。ありがとう」

「お、おっふぅ……真っ直ぐ言われると恥ずぃぜ、洋ちゃんお兄ちゃんさんよぉ……」

「赤くなってる実々花ちゃん、可愛い!」

「み、見ないでくれい! 空ちゃん!」


 皆解散したくないのか、その場で10分以上留まり、名残惜しみながら馬蝶林さんの声掛けで、それぞれが帰路へと足を向けた。


 空と一緒に1日振りの我が家に着くと、インターフォン前に宇津姉が立っていた。


「宇津姉?」

「は! 洋! 丁度会いに来たとこなんだよね! 前々から、1-Bを指導するって約束してたのに、仕事が立て込んじゃって全然顔出せなくてごめんね! でも、ようやく仕事が片付いて指導出来る様になったから、明日から本番前日まで徹底的に鍛え上げるから!」

「わ、わざわざ知らせに来てくれて、ありがとうね」

「洋と私の仲でしょ? 気にしない気にしない! あとね! 昔馴染みのよしみで洋には特別に、私の家で夜もしごいて上げるから、今日から頑張ろうね! あ、ちゃんと迎えに行くから家で待っててね!」

「きょ、今日から毎日?」

「2時間みっちりとね! ただ勉強も疎かにしちゃダメだから、しごきながら勉強も出来る方法も考えたんだ! かなりハードになるけど、洋なら乗り切れるって分かってるから、残り1週間ちょっとの間、毎日やるからね!」

「ひょ、ひょへぇ……」


 球技大会前の最後の追い込みに、足はプルプルと震えて、今すぐにでもその場で崩れ落ちそうだった。


「お、武者震いだね! うんうん! やっぱり洋の前向きな姿は、私は大好きだよ!」


 それから1週間、宇津姉による1-Bの指導と、天羽先生の洗練されたスケジュールの下、休まる暇もなく心技体が鍛わり続け、いよいよ球技大会本番になった。

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