☆105話 まさかの誤タップ、今だけ妹、策士の巨漢男子、派手目な女性陣
※2023/10/24文末に月鉈小麦のイラストを追加しました!
※イラストが苦手な方はスルーで!
サッカーの模擬戦で3-Dに敗北し、愛実さん達のモチベが下がるかと心配になるも、闘争心が焚き付けられ、モチベが爆上がりする結果に。
本番当日には一体どうなるのか、今からいい意味で不安だ。
放課後、総合体育館で3-Dの卓球リーダー鯉洲輝和先輩、通称ですわ先輩達との模擬戦中、トイレ離席中に連絡が来ていた。
「積木さん。さっきから貴方のスマホが鳴ってるわよ」
「あ、本当だ。ありがとうございます馬蝶林さん」
明日のお相手である1-Cクラスリーダー富士亀さんからの着信だった。
明日の軽い打ち合わせだろうから、休憩スペースに向かい通話を繋いだ。
「もしも」
《うぉおおおぉおおおおお! やっと出たっス!》
「み、耳が……」
《もしもしもしもしぃいいいい? あれ? 積木君? 聞こえてるっスかぁああああ!?》
「き、聞こえてますよぉ……」
音割れの爆声量に耳が死にそうで、富士亀さんにはスマホを若干遠ざけて欲しいとお願いした。
たそれでもまだ大声量で、僕も顔一つ分離してようやく適声量になった。
「え、えっと、それでご用件は?」
《そうっス! 明日の昼休み! 体育館でバスケの模擬戦をやりたいっス!》
「バスケの模擬戦ですね。今、球技リーダーの黄坂君に聞いてき」
「おや、積木殿~卓球の方は順調れふか~?」
「あ、黄坂君。ナイスタイミング」
「?」
黄坂君に早速説明すると、朗らかな笑みで快諾してくれた。
「勿論いいれふよ~明日心待ちにしておくれふ~」
「だそうですので、よろしくお願いします」
《うぉおおおおおお! 迅速な対応に感謝っス!》
「い、いえいえ。また何かあれば連絡して下さい」
《了解っス! ではまた明日よろしくっス!》
「はい。それじゃ、ま……」
通話を切るのに画面に視線を戻した、たったの1-2秒間の出来事を一瞬理解出来なかった。
何故かどうしてか、画面には更衣室で着替え中の、下着姿の富士亀さんや数人の女子達が映っていたんだ。
何かの拍子に誤タップして、ビデオ通話に切り替わったんだ。
そんな光景に、横にいる黄坂君の糸目が開眼していた。
「Eの双丘~ご馳走様れふ~」
「み、見なかった事にしようね……ね!」
スリーサイズを目視で測定出来る、通称エロティックアイズの黄坂君が、この事をアウトプットしないのを祈るばかりだ。
♢♢♢♢
翌日の昼休み。
体育館のハーフコートを使ったバスケの模擬戦を、2階のギャラリーからお昼ご飯をお供に観戦してる。
本来なら愛実さん達と一緒だったのが、昨日の事があって、昼休みを返上して練習に励んでるんだ。
無理だけはしないようにと言ってあるも、スポーツマンの多いサッカーチームだ。
一度焚き付けられた闘争心が落ち着くのは、時間が掛かるかもしれない。
若干心ここに在らずで、模擬戦の行く末を見届けていたら、トテトテと可愛らしい足音が接近してた。
「あ! 洋お兄ちゃん♪」
「ん? あ、萌乃ちゃん先輩」
「座ってもいい?」
「どうぞどうぞ」
「やったー♪」
嬉しそうにツインテールを揺らす萌乃ちゃん先輩は、僕の胡座にすっぽり収まった。
夏休みから今日にかけ、直接会うのが久し振りで、敵ながらも嬉しさが勝ってる。
「えへへ~♪ ここは私の特等席なのだぁ♪」
「妹にも似たようなことされてるんで、なんだかほっこりします」
「そうなんだ♪ 今だけ妹ちゃんになっちゃおうっと♪」
萌乃ちゃん先輩が人懐っこい子犬なら、空はテリトリーを独占したい子猫だ。
だからか、実家のような安心感に包まれて、心にゆとりが生まれてる。
無意識系癒し少女の萌乃ちゃん先輩に感謝だ。
「あ! 生徒会会計の子じゃん! こんにちは!」
「ふぅ? 貴方は確か、鈴木爽ちゃんだよね? こんにちは♪」
パンパンになった袋を片手に持った鈴木さんは、萌乃ちゃん先輩にぷにぷに触れて大変ご満悦なご様子。
「袋の中パンパンだね! 何入ってるの?」
「これ? 全部お昼ご飯だよ! じゃーん!」
どんどんと出されるパン、ご飯、おかずは軽く5人前の量で、見てるだけでお腹がいっぱいだ。
健康バランスは意識してるようで、高タンパク低脂質、カロリー自体も低いものばかりだ。
もしかするとジム体験での心得を意識してるなら、いい兆候だ。
「あ、試合始まるよ♪ ワクワク♪」
「ふもぉふぁもぉ! んっぐ!?」
「み、水水!?」
渡した500mlの水を一瞬で飲み干す鈴木さんは、ドンドンと胸を叩き揺らし、涙目ながら落ち着きを取り戻した。
そんなこんなしている内に、最初のジャンプボールを1-Bが取り、各々攻めのポジションに移動。
それでも尚、富士亀さん達は余裕な態度だった。
「ぱ「カットパスからのアタックっス!」
「な!?」
「どりゃああああ! 行くぜぇええ!」
富士亀さん達の爆声量連携プレイで、黄坂君達の声掛けがことごとく強制シャットアウト。
瞬く間の出来事に混乱する1-Bは、序盤から劣勢に陥った。
「ディフェンスを見直しするのを、オススメするっス!」
圧倒的な優勢を見せつけるように、富士亀さんがスリーポイントシュートを放とうとした時、ボールが手から消え去った。
「へ?」
「いただきれふ~」
死角から聞こえた黄坂君の声に、焦りを見せた富士亀さんだったが、時既に遅し。
俊敏な動きでディフェンスを掻い潜り、凄まじい跳躍力と共に、黄坂君がダンクを決めていた。
「ふぅ~1-Bを舐めちゃいけないれふよ~」
バスケリングにぶら下がる黄坂君を、唖然と見上げる富士亀さん達は、余裕がなくなっていた。
「凄い凄い♪ プロの選手みたいだったね♪」
「黄坂くんってあんな動けるんだね! カッコいい!」
「黄坂君がいれば、バスケは安泰……ん?」
リングにぶら下がってる黄坂君を、よくよく目を凝らすと、少し緩めなバスケユニフォームの胸元を、エロティックアイズで見下ろしてた。
状況が状況なだけあって、コート上の誰もが気付いていないのだから、黄坂君はとんでもない策士だ。
♢♢♢♢
白熱のバスケは1-Bが勝利し、大活躍だった黄坂君はメンバーの女性陣に囲まれ、軽いハーレム状態。
相変わらずエロティックアイズで女性陣を見てはいるけど、それ相応の対価だと捉えれば問題はない筈。
「ふぅー! 観てただけなのに、良い汗掻いちゃった♪」
「わたしも! 一回着替えないと!」
新陳代謝がいい鈴木さんは、軽く濡れたみたいにピッタリと身体にYシャツが張り付き、豊満なボディーラインと下着が浮き上がり、すぐに視線を逸らした。
このままだと話が出来ないので、バスケチームを労いに行こうと提案。
2人と1階へと降りた直後、数名の派手目な女性達がゾロゾロと横切って来た。
「でね~? ん~? あ~積木ちゃんだぁ~」
「お? なになに? 粟ちの知り合い?」
「そーだよぉ~ねぇ~積木ちゃん~」
僕の腕にギュっと抱き着き、パック牛乳をチューチュー吸う粟沢先輩を見て、ニヨニヨとおもちゃを見つけたみたいな反応をする派手女性陣。
詰み体質はどんな時、場所、人も分からないから恐ろしいんだ。
「てか、積木ちゃんに会えて、ちょうど良かった~明日の事でお話ししたいから~ついて来て~」
「え。あ、それは放課後でも」
「へぇー? お姉さん達の言うこと聞けないんだぁ? だったら尚更連れて行かないとぉ。ふぅ~」
「ひゃ!?」
「なはははー! 何この子ー! ビクっちゃってカワー!」
「でしょ~? って事で、1名様ご案内ぃ〜」
身を固め物理的に退路を断つ派手女性陣包囲網に、詰み体質以外一般的な男子1人が、どうこう太刀打ちできる術は勿論無い。
「あわわわ……ま、待ってて洋お兄ちゃん! 助けを呼んでくるからね!」
「も、萌乃ちゃん先輩!」
「えぇ~? 助けに来られるのは、ちょっと面倒かなぁ~」
「なら、行ったもん勝ちっしょ!」
「だねぇ~そうと決まればレッツゴ~」
「わわわわ?! す、鈴木さん! ぼ、僕の分まで黄坂君達の労いをお願いします!」
「わ、分かされました?」
鈴木さんの返事が混乱したまま、目的地不明な状態で粟沢さん達に連れられた。




