102話 寸分狂わずな肉体美、滾りに滾ってる妹、照れ臭い盛り付け、双子が成せる賜物
片や豊満、片や控えめ。
両手一杯に触れてしまってる、異なる柔らかい胸の感触の率直な感想だ。
「んっん……洋、もっと激し目でもいいんだぞ」
「わ、私はちょっとダメかも……ふにゅ?!」
「マッサージにしか見えませんね。積木様はまだまだ甘々ですね」
「そ、そう言われましても……」
「全く……女性は男性にリードされたいものなのですよ?」
「そ、率先して触れろと?」
「えぇ。今の積木様では無理だと分かり切ってるので、わたくしが再びお手伝いします! それ!」
強制移動された両手の行き先は、引き締まったお腹。
視覚の肉体美と寸分狂わず、鍛えられた美腹筋とくびれは、理想の女性像そのもの。
ミストの相乗効果で、生美肌が手に吸い付いてる。
「ふふ、擽ったいが気持ち良いな」
「あにゅん!? く、クセになりそう……はみゅ!?」
「ハァハァ……ふ、普段お目に掛かれない一面に、感無量です……ハァハァ……」
興奮する蘭華さんに場所を譲ろうものなら、きっと今回ばかりは拒みそうだ。
数分後、正常とは言えない状態の蘭華さんが、次に強制移動させたのは内腿。
しなやかでぷるんと弾力のある感触が、手を夢中にさせる。
「んんっ……ど、どうやら内腿に触れられるのに弱いみたいだ……んっ……」
「にゅひぃ!? よ、洋さんに触れられたら、どこでも弱くなっちゃう……ひゃい?!」
「こ、こんなにも姉様達がふっぐぅ……み、淫らに咲き乱れて……はふぅん……」
「は、はふぅん?……あ! ら、蘭華さん?!」
白目剥き壁にもたれる蘭華さんは、幸福に満ちた失神っぷりだった。
♢♢♢♢
蘭華さんの救出に肖り、サウナからの脱出に成功。
峰子さん達は不完全燃焼だったのか、不服気味だった。
着替えに更衣室に向かうと、入り口で青柳君が悠然と壁に寄り掛かってた。
「ふっ……悪く思うなよ積木」
「峰子さんに頼まれたんでしょ? だったら気にしてないよ」
「ふっ……俺が女だったらキュンとしてたな」
「そ、そう? ところで盟約ってなんだったの?」
「ふっ……今回のジムトレーニングの撮影許可だな。解散後に残り、じっくりと撮るつもりだ」
「成程、絵の練習に使うんだね」
「ふっ……想像に任せる」
中身は帰り際にでも、峰子さん達にチェックされるだろうから、とやかく言う必要はない。
これでサウナ詰みも一件落着だ。
青柳君と時間を潰し、昼食の時間にジム4階の飲食エリアに向かった。
どうやら僕らが最後で、美鼓さん達はダラダラと突っ伏してくつろいでた。
「洋、大海君。こっちに座ってくれ」
手招く峰子さんから、サウナ詰みの件を微塵も感じない。
過ぎた事は蒸し返さず、水に流した方がお互いの為だ。
タンクトップ姿の義刃三姉妹の向かい側に座り、これで全員が集合した。
「洋達が来た事だ。昼食にしよう」
「オーダー式とバイキング式がありますので、お好みの方でお召し上がり下さい」
「食の乱れは身体の乱れに繋がりますので、くれぐれも食べ過ぎないようにお願いします」
しゅーちゃんの釘刺し言葉に、皆の食欲増々のお腹は弁えたように見えた。
各々離席し、一際お腹を鳴らす鈴木さんが1番に席に戻っていた。
ホテルのビュッフェ級の料理をモリモリに盛った、見栄えは二の次の盛り付けだ。
「鈴木さんならペロリと完食しそうだけど、食べ過ぎじゃないかな……」
「ここがただの食事処だと思われていませんか積木様」
「あ、蘭華さん。もう平気なんですか?」
「姉様達の女神介抱ですよ? 滾りに滾ってますよ、えぇ」
恍惚の微笑みに手を添え、女神介抱の余韻に浸る蘭華さん。
「話を戻しますが、ここプラチナジムでは低脂質高タンパク、野菜を中心とした食事が提供されてます。薄い味付けも香辛料や一工夫を加えれば、普段の食事と遜色ないクオリティに仕上がるのです」
「徹底してますね」
「えぇ。ご自宅でも見様見真似でもいいので習慣づけて頂きたい所ですが、現実的にはそう簡単に行きません」
自立して食に自由の利く人ならまだしも、僕らは学生だ。
ストイックでない限り、スタートを切るのも難しい所だ。
「ので球技大会の期間中、デリバリーサービスを北高生限定で無償にさせて頂きます。期間後は半額での提供にはなりますがね」
「す、凄いサービスですね」
「皆様の為が、姉様の為になるのならば、安いものですよ」
根幹がブレない蘭華さんの強い精神には、感服の一言に尽きる。
ビュッフェ式に混ざり数分、バリエーション豊かな盛り付けになった。
自分の匙加減で好きな物を選べるから、ついつい色んなものを試したくなる。
「お、洋のは見栄えもバランスが良いな」
「そうですか? やっぱり性格が出ますね」
「ふふ、その中から気に入ったのを、おかわりする感じだな?」
「大当たりです」
峰子さんは肉メインのガッツリ系で、おまけ程度にサラダとシンプルだった。
お肉ばかりの盛り付けに、若干照れ臭そうだった。
「そ、それにしてもホテルの食事みたいですよね」
「あ、あぁ。実際、食事メインで足を運ぶ人がいる程、とても好評だ」
「家族連れとかもいますもんね」
カップルにサラリーマン、お爺さんお婆さんもチラホラ見かけ、幅広い客層だ。
ジム通いの人達が大半を占めてるも、入り難い空気感はなく、気軽に来やすい雰囲気だ。
「ちなみに全レシピの考案者は秋子だ。どれも満足のいく絶品だ」
「へ? しゅーちゃんが?」
「えぇ。一口食べただけで胃袋を鷲掴みされる事、間違い無しです」
ヌッと現れた蘭華さんは、峰子さんと瓜二つなラインナップだった。
2人と一緒にテーブルに戻ると、しゅーちゃんがソワソワと落ち着きなく座ってた。
盛り付けは大豆料理と豆乳、盛り盛りなサラダと控えめな肉料理だった。
「峰子さんから聞いたけど、しゅーちゃんがレシピを考えたんだね」
「う、うん。きょ、今日は特別に料理もしたんだ……よ、洋さんの口に合うと良いんだけど……」
「え! 大変だったんじゃない?」
「よ、洋さんの為なら全然平気! そ、それより早く食べて欲しいかな……」
忙しない指先モジモジと、期待と不安が混ざった顔をしてる。
ご期待に沿える感想は言えないかもだけど、有難く頂こう。
「じゃあ、いただきます」
「ど、どうぞ!」
「……ん! 味も食感も見栄えも、全部最高! 流石しゅーちゃんだね!」
お世辞抜きに次々と口に運びたくなる美味しさだ。
これが食を楽しむ料理なんだと、誰かに伝えたいぐらい、口の中が幸せ一杯になる。
「え、えへへへ~」
しゅーちゃんの自己暴力型抑制を、がっしりホールドした峰子さんと蘭華さん。
手慣れた連係プレーは、双子が成せる賜物だ。
「手慣れてますね」
「「姉妹だからな(ですから)」」
食も進み、話も弾む賑やかな昼食は続き、最終的には全員食べ過ぎていた。
翌日も筋肉痛と一緒に、ジムへと足を運ぶ事になった。




