表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
積木君は詰んでいる2  作者: とある農村の村人
16章 クラスメイトとジム
100/131

☆100話 専用ストレッチ動画、生殺しな同盟、独り占めの恋人繋ぎ

※2023/10/18文末に鈴木爽のイラストを追加しました!

※イラストが苦手な方はスルーで!

 30分の有酸素運動を終え、手招く峰子さんの下へ向かい、人目のない場所に移動した。

 気のせいか、峰子さんの身形が数十分前よりも洗練されてる気がする。


「さて、練習として一度通して撮ろうか」

「了解で……」


 胸元とパンツのジッパーを下ろし、インストラクターコーデが数秒でビキニ姿に様変わりした。


「な、何してるんですか」

「あぁ、実は母の頼みでスポーツウェア関連の試作品を、度々試着してるんだ」


 峰子さんのお母さんって、スポーツ用品店の社長さんだった筈。

 スポーツウェアとビキニの組み合わせは画期的な仕様だ。

 ただ何も知らない人からすれば、度肝を抜く仕様だ。


「折角なんでな、動画に残すなら試着と動作確認をと思ったんだ。ダメ……だろうか?」


 軽く前のめって目線を合わせ、顔の距離が拳一つ分しかない。

 通常時も魅力と破壊力が抜群なのに、ビキニ姿ともなれば、人によっては失神ものだ。


 ただし、あくまでも峰子さんのお母さんの為だ。

 照れ臭いだなんて言ってられない。


「わ、分かりました! 撮りましょう!」

「ありがとう、洋」


 微笑みの感謝をする峰子さんに従い、撮影は向かい合わせでスタンバイ。

 いざ始まったストレッチの撮影は、ビキニ姿も相まって過激なものだった。


 しっかりとした呼吸のリズムは、何故か色気ある吐息に変わり、大人な空気がムンムン。

 真剣な眼差しも撮影が始まった途端、一つの事に夢中な熱い眼差しとなり、レンズ越しに僕を見つめて来てる。

 動作の一つ一つも身体の魅力をアピールしてるようで、ストレッチどころの話じゃなくなってる。


 どこを切り取っても魅力しかない撮影に、集中が途切れそうな中、5分程でストレッチが終わった。

 動画確認の為、ぴったりと触れ合う距離で、一緒に動画確認し始めた。

 ストレッチで軽く火照った峰子さん身体に、むにゅんと優しく包み込まれ、意識はもう動画どころじゃない。


「……よし、いい感じに撮れたな」

「ほ、ほっ……あ、動画送るんでしたよね」

「ん? 次の本番ので構わないぞ」

「え、で、でも……し、試着と動作確認は……」

「あ、あぁ……い、今の動画は……洋専用の動画にして欲しいんだ」

「へぇ?」


 唯一無二の動画を僕専用にして欲しいだなんて、当の本人が言うなんてあり得るのか。

 盛大な聞き間違いかもしれない。

 恥を忍んで再確認しようとした僕は、峰子さんの身体がどんどん熱くなるのを感じ、色々と悟った。


「そ、そのな……ど、動画ならいつでも私を見てくれると思って……い、嫌だったら消してくれ!」


 決意表明後だから尚更、峰子さんの行動一つ一つが本気なんだ。

 一歩踏み出した行動を本気を受け止め、向き合うのが僕が出来る事だ。


「い、嫌じゃないですし、消しません」

「そ、そうか……良かった……」

「ま、まぁ、いつもと違う一面を見られたのは良かったです。でも、いつもの峰子さんには敵わないですね」

「む、むぅ……か、かなり恥ずかしかったんだぞ?」

「で、ですよね」


 綺麗な赤髪に負けない、顔を赤らめていた峰子さんだった。


 ♢♢♢♢


 その後、本番のストレッチ撮影はスポーツウェア姿で、真面目に撮り終わった。


「よし、大丈夫そうだな」

「立派なお手本です」

「峰子―ちょっと来てくれー」

「ん? 秋子の声だな」

「動画はやっておくんで、行ってあげて下さい」

「む。もう少し居たかったが、独占できたから良しとするか」


 去り際も名残惜しそうにチラチラ振り返る峰子さん。

 軽く手を振ると、嬉しそうに頬を綻ばせ振り返してくれた。

 忘れない内に1-BのクラスSNSに、ストレッチ動画を上げないと。


「お、撮り終わった?」

「ひょ!? み、美鼓さん?!」

「なははーびっくりした?」


 上機嫌に肩をツンツンする美鼓さんは、薄手のスポーツパーカーからタンクトップウェアになり、しっとりと汗を掻いてた。


「で、動画どんな感じ?」

「あ、これです」


 グッと触れ合う距離で、ザッと動画を確認した美鼓さんは納得してた。


「うんうん、良さげ」

「なら良かったです。クラスSNSに上げればいいんですか?」

「とりま、冒頭の数十秒だけ切り取って」


 簡易動画編集アプリで冒頭数十秒を切り取った。

 ストレッチの導入部分でしかない動画が、一体何になるんだろう。


「これでいいですか?」

「オケーほんで、その動画を蜂園さんに送って」

「蜂園さんって……1-Cの蜂園伊豆流さん?」

「そ」


 急に出てきた蜂園さんの名前と、峰子さんの切り抜きストレッチ動画に、ようやく美鼓さんの真意が見えた。


 蜂園さんに動画と一言を添えて送った。


「これで、よし……どうして僕が蜂園さんと知り合いだと?」

「積木くんリーダーさ、夏休み前に歩達と勉強会してたでしょ」

「しました」

「で、そん時に蜂園さんとも連絡先交換してたって、歩から聞いた感じ」

「なるほど」


 勉強会合コンで生天目さんと蜂園さんは、確かに同じ場にいた。

 生天目さん情報とは言え、美鼓さんはその事を覚えていて、有益になる今作戦を閃いたんだ。


 そうこうしてる内に蜂園さんから返事が来た。


《つ、続きはないのですか?! 生殺しもいいところです!》

「食い付いた。読み通りじゃん」

「じゃあ、動画を条件に交渉でいいんですよね?」

「ん。とりま1-C及び、北高支部義刃峰子ファンクラブ会員は1-Bと同盟を組む、かな」


 蜂園さんの特殊人脈が成せる、別角度からの情報や、深堀り情報は期待できる。

 交渉条件を送ると、秒で返信が来た。


《同盟でも何でもするので、早く動画を!》

「なははー血眼になってそう」

「で、ですね」


 想定外の同盟を結び、動画は送らせて貰った。

 事後報告にはなるけど、大米さんにも報告しないと。


「大米さんに連絡するんで、先に戻ってていいですよ」

「ほいーあ」

「? どうしました?」

「なんかさ、さっきチラッと峰っ子さんのビキニ動画もなかった?」

「き、気のせいですよ? ほ、ほら、そんな動画なんて無いでしょ?」

「ありゃ、気のせいか」


 万が一に備えて、ビキニ動画を真っ先に非表示切り替えにして正解だった。


 もしビキニ動画を蜂園さん達に送ってたら、それこそ死人が出てもおかしくない。

 峰子さんには申し訳ないけど、今後の為にもビキニ動画は封印だ。


 ♢♢♢♢


《義刃さんファンクラブまでも懐柔するなんて、凄いね》

「提案者の美鼓さんのお陰ですけどね」

《だね。でも、リーダー無しじゃ実現できなかったんだから、もっと自分を誇って良いんだよ》


 事後報告でも文句の一つも言わず、むしろ褒めてくれた大米さん。

 リーダーシップの素質は圧倒的に大米さんが勝ってるも、僕にしかないリーダーシップもあるんだ。

 いつまでも自分を下げず、時には自分を誇っても罰は当たらない筈だ。


「あ、ありがとうございます。と、ところで、そっちの状況はどうですか?」

《順調だよ。サッカーは愛実さんが牽引してくれて、ちょくちょく赤鳥君と喧嘩騒ぎが起きてるけどね》

「まぁ、2人は犬猿の仲ですからね」


 他にも何でもそつなくこなす瑠衣さん、運動大好きっ子なありすさんもいるんだ。

 ライバルになり得る相手でない限りは、難なく突破出来る布陣だ。


「野球の方は?」

《防御面は緑岡君と夕季さんのバッテリーが要だね。攻撃面は百発百中の長平さんと、予測不可能な照さんで点取りする感じかな》


「攻守ともに大丈夫そうですね」

《うん。ジムは……はーい! 今行くよ! 愛実ちゃんに呼ばれたから、またね》

「あ、はい。またです」


 ジム終わりの落ち着いた時にでも、また連絡しよう。


 トレーニングに本腰入れ、皆の下へと戻ろうとしたら、しゅーちゃんが丁度向かって来てた。


「あ、洋さん。もう大丈夫なのか?」

「うん。呼びに来てくれたの?」

「まぁ、建前はな。2人っきりになれる機会なんて、またとない機会だし」

「そうだね、いつも誰かしらいるもんね」

「だから……今だけは独り占め」


 キュッと恋人握りをするしゅーちゃんの、頬染める嬉しそうな顔が、なんだか可愛らしかった。


 戻り道のほんの僅かな時間、しゅーちゃんから幸せオーラが溢れ出す中、皆の姿が見えた途端、ゆっくりと解けるように手が離れた。


「独り占めはここまで……ここからはインストラクターとして頑張るから」

「うん、ありがとう」


 気持ちを切り替えたしゅーちゃんは、胸元に掛けてた眼鏡を装着し、空気を一変。

 しゅーちゃんの眼鏡姿と言えば、勉強会合コンで赤鳥君が味わった、鬼教師化姿だ。

 一切妥協を許さない鬼教師化のしゅーちゃんに、緊張の汗が背中を伝っていた。

挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ